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カレーライス

雨が降らないときに
雨乞いの踊りをするように

人生に失望し 笑いを失った 恋人のために
踊りを踊った

僕は上半身裸で、カラダに 
赤や黄や青で ペインティングして
恋人の回りを 踊りながら ぐるぐる回った

恋人の左の足首と 僕の左の足首に
細い絹の糸を結わえて
恋人の足首に 絹の糸が食い込まないように
でも、絹の糸がたわまないように ピンと張って
距離を保ちながら踊った

実は 僕は踊りが下手だ
だから 恋人が僕を好きになるような
華麗な踊りはできない

ただ、恋人が失った笑いを取り戻せるように
首に大きな太鼓をぶら下げて 

右足を上げたら 右手を振り上げ 左手で太鼓を叩き
左足を上げたら 左手を振り上げ 右手で太鼓を叩き
天に乞うように 恋人の回りを ぐるぐる回った

日が昇る前から踊り 日が沈むまで踊り続けた

しかし 恋人はにこりともしなかった

疲れ切った僕は 恋人のそばにより
おなかすいたねと言った

何が食べたい? 恋人は ぼそりと呟いた
僕は少し考えて カレーライスと答えた

恋人は、あなたは甘口しか食べられないのよねと
にっこりほほ笑んだ
作ってあげると

僕はうれしくなって 恋人と手をつないで
夕暮れの方へ向かって 歩いていった

恋人の左の足首と 僕の左の足首に結わえられた絹の糸は
もう必要なくなっていたが
ずるずると地面を引きづられながら
二人のあとをついてきていた

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