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20230330(中)

↑からの続きです。

 バスを降りて、朝食がまだだった事を思い出して、駅構内にあるうどん屋さん。
 どうやら高松駅にあった「連絡船うどん」のグループらしい、に入って注文するのは勿論「じゃこ天うどん」いなり寿司と共に。入ったじゃこ天が、うどんの出汁で温まって美味。うどんに入ったじゃこ天とは別に、じゃこ天をもう一枚追加して、じゃこ天を堪能。
 食べ終えて、時間は余裕だらけなので、同じ構内にあるパン屋さんに併設された喫茶コーナーでコーヒーを頂いた。
 書き物でも済ませておこうと、メモを取り出して、つらつらとシャープペンシルを走らせていると、少し歳を重ねた様に見受けられる、3名のお客さんが入って来た。セルフ式で注文を済ませてお盆にコーヒーを持ちながら座る席を探していて、辺りを見てみると、自分が移動すれば3名のお客さんの座る席の収まりが良さそうだったので、声を掛けてみた。すると、遠慮されたので、愛媛の人は奥ゆかしいのだと印象を持ったけれど、それはこちらが旅行者であると見えたからかも知れない。
 暫く経って、3名のお客さんは一息付くとお店を出て、出る時にも挨拶をされて、そんなに大した事をしたつもりも無いのになと思いながら、自分もそろそろ動こうかと腰を上げた。

 JRでどこかへ向かおうかと思って、改札口まで。駅の行き先案内を見てみると、列車のやって来る時間が随分と先で、ならば伊予鉄に乗ってウロウロしてみようと、市内電車のホームに向かってみた。

JR予讃線、松山駅の改札。

 伊予鉄、市内電車。何やら松山市駅行きと道後温泉行きと、それから市内をぐるっと一周する様な電車があるらしく、どんな風に運行されているのかが今一つ理解出来ておらず、やって来た電車に乗る事にしてみた。
 待っていると、やって来たのは新しい形の路面電車で、道後温泉行き。これなら伊予鉄の郊外電車の乗れる松山市駅まで向かうだろうと思い乗ってみた。

LRT。

 一番前の席に座って、揺られる。大手町駅前を通る時に、郊外電車とのダイヤモンドクロッシングがあって、昔々の阪急電車、西宮北口駅を思い出したり、お城が見えて来て、お城の周りを往く路面電車の味わいを堪能したり。している間に乗った電車は松山市駅に向かわない事を知った。
 仕方ないので、数十年前に来た時、大街道辺りから松山市駅まで歩いた事があった事を思い出して、大街道駅まで乗る事にした。

松山城。

 路面電車が松山城を見上げる様に進んで、大街道駅。大街道の読み方が「だいかいどう」と思っていたら「おおかいどう」だった。自分の勘違いにも気がついて、路面電車を降りた。

 土曜日のお昼前、大街道商店街は、どんどん人が増え始めてという様相。俄かに建てられた建物の中に、何層にも重なるお店が並ぶショッピングモールとは違う趣があって、こちらの方が歩いていても断然楽しい。時折、インターネットなどの情報で、耳に入って来る松山のあのお店はどの辺りにあるのだろうか、とか、チェーンの焼鳥屋さんは等々、地図アプリも立上げながら、伊予鉄の松山市駅まで向かった。
 大街道商店街を南に、突き当たった所を西に。暫く歩くと地下へと続く階段があって、そこを降りて伊予鉄松山市駅。
 今から考えてみると、地下に降りる必要は無かったのだけれど。
 駅の上に百貨店があって、HISの「日本の人」の「町外れ 夕暮れ 丘の上 デパートのネオンが瞬く」という歌が頭の中に流れた。

 はてさて、どこへ向かおうか。脳内会議。伊予鉄郊外電車。高浜線は以前に乗った事があるし、横河原線も楽しそうだけれど、ここは港と名前のある所に向かってみようかと、選んだのは郡中港線。
 郡中港までの切符を買って、ホームに向かってやって来る電車を待った。
 いよてつ、松山市駅。比べる必要など全く無いのに、どうしてか香川県は琴電の瓦町駅を思い出して、何となく似る雰囲気に、勝手に四国を感じる、のんびりとした時間が流れる土曜日のお昼前、贅沢に時間を堪能。

どこかで見た事のある・・・。

 蜜柑色の電車がやって来て、一番前の車両に、座れるとも思って無かった一番前の座席に腰を掛けて、往く先を眺める事にする。
 蜜柑色の電車は松山市駅を出発すると、単線の線路は左に弧を描いて、住宅街の中を走り抜ける。
 単線に片側一面のホームが暫く続いて、真っ直ぐの線路のずっと向こうに跨線橋があって、それの光景が、今は無くなってしまった貨物線、大阪港線の踏切から見た、なみはや大橋の光景に似ていて、気持ちは少し大阪に戻った。

遠くに見える跨線橋。

 途中の駅で上りの電車とすれ違って、重信川を渡る時、松山中央公園野球場(坊ちゃんスタジアム)が見えて、際を走っているJR予讃線との位置関係が理解できた。
 ぼんやりと電車は進んで、どうしてこの駅でお客さんの乗り降りが沢山あるのだろうと思って辺りを見回してみると、大きなショッピングモールがあったりして、大街道という立派な商店街もあるのにな、等々、色々思いながら。
 そうして、オンボロ列車に乗って田舎道を進んで、電車は終点のお昼も少し過ぎた郡中港駅。
 降りて、さて。どうしようかと。取り敢えず改札を出て、それから考える事にした。

 改札を出て、目に飛び込んだのは、JR予讃線の伊予市駅。ここからJRで松山駅まで戻ろうかと、次に来る列車の時間を駅の時刻表で調べてみると、次にやって来る列車まで随分と時間があって、伊予鉄の郊外線で松山市駅まで戻っても良かったのだけれど、やって来た道をそのまま戻るのも面白く無いと思い、列車を待つ事にした。

予讃線、伊予市駅。夢の跡。

 RCサクセション、アルバム「BABY A GOGO」に収録された、チャボさんが歌う「うぐいす」の歌詞に出て来きそうな待合室を抜けて、誰も居なくなった改札を通って、跨線橋を渡って、駅のホーム。
 ホームの真ん中に背面で繋がったベンチがあって、書き物をしようかと腰を掛けると、その背面から話し声が聞こえた。
 何やら親子らしい二人組。聞き耳を立てた訳でも無いけれど、会話が耳に入って来て、そこで昨日の野球の試合の結果を知る事となって、昨日の晩の事も思い出した。
 ある球団が試合に負けてしまったので、六甲おろしを演奏したらしい、お父さんの方。そんな親子が背面のベンチに腰を掛けて列車を待っていた。
 それから、さっき駅の待合室で時刻表を見ていた時に、列車はまだまだ来ないねと、声を掛けてくれたお婆さんの姿が。
 お婆さん、てっきり伊予鉄で移動をするのかなと思っていたら、バリアフリーが整わない駅の向こう側からこちら側に、両手で杖をついて、階段を昇って降りて、いつの間にか改札から跨線橋を渡ってこちら側のホームに。
 気が付いていたら、おぶってでも案内出来たのになと自分の鈍感さを思い知る。
 改札口から跨線橋を渡ってこちら側のホームに来たおばあさんの姿を見て、もう少しどうにかならないものかと思うも、この辺りの鉄道の利用状況を考えると、そうも行かないのだろうけれど、やはりこの手のインフラは民営になるとサービスが低下してしまうのでは無いかと、過ぎた時間と今はどんな時代なのかを考える。

 考えていると、おばあさんが書き物をしている自分の隣に腰を掛けて、話掛けて来てくれたので伺う事にした。

 伊予市の事から始まる話。隣の街との合併が上手く行かずに、人口が3万7千人で、このままでは「市」としてやって行けなくなる事から、新しく就任した、市長さんは若くて良くやってくれて、何やら商業施設を招いて、市民にそこでの雇用を作ったとか、松山市の隣の伊予市の行政について教えてもらった。所が変われば色々あるものだと、普通に列車を待っているだけでは出来ない貴重な体験を得る事が出来た様に思えて嬉しくなった。

 そんな風に話をしていると、背面の後ろのベンチから、親子の息子の方がやってきて、こちらに話し掛けてきてくれた。
 何やら列車を待っているとの事。駅にいるので当然の事だとも思いながら、話を聞いてみると、松山に向かうのでは無くて、松山から、南の大洲だったか八幡浜へと帰る途中、乗って来た電車が伊予市駅止まりの各駅停車だったらしく、次の列車を待っているらしい。
 それで、下り列車の時刻表を見てみると、南に向かう列車の到着時刻まで2、3時間あって、よくよく考えてみると、鉄道の本数がこれだけ少ないのは、この辺りが自動車中心の社会だからかと。   
 そんな風に思える中で、列車がやってくるまで2、3時間待つなんて、贅沢な時間の使い方だなと、思ったのと同時に、ひょっとすると、他に理由があるのかも知れないし、その理由は考えないでおく事にした。
 ただ、次にやって来る列車を2、3時間待てる余裕が生活の中にあるという事が羨ましいとも思った。何か話が出来れば良かったのだけれど、松山に向かう列車の時間が近付いていて、あまり会話は出来なかったけれど。

伊予市駅。

 松山方面から特急列車がやって来て、向かい側のホームに停まった。
 そして南から上りの各駅停車がやって来て、少し前からわらわらと集まり出していた、近所の人だろうか、お客さんを乗せる。
 さっきの背面のベンチの親子に「お気を付けて」と挨拶をして列車に乗り込んだ。
 一緒に乗ったお婆さんは、横に長いシートの隣に案内してくれたけれど、会話の音がディーゼルエンジンの音で消されるだろうと思って、少し離れた場所に腰を掛けた。
 各駅停車は走り出した。ディーゼルの音と変速機が変速段から直結段に変わる時に少し衝撃があって、気動車に乗っている気持ちになる。
 一緒に乗った、お婆さんは、途中の駅で降りて、迎えに来て居た人と共に、用意されていた車椅子に乗って、お連れさんと共に。先行きが一人で無くて良かったと思った。

 乗った列車は松山駅。

 お昼も少し過ぎて、次にする事も特に見当たらなかったので、愛媛教育会館に寺尾紗穂さんのライブ「愛よ、届け」の会場だけでも行っておく事にする。
 映画「i ai」を拝見して、それで、何故だか寺尾さんのライブも拝見したくなった。
 考えてみると、愛媛でライブを拝見するのも初めてでは無いかと。
 さっきの伊予市駅での出来事が何となく心に引っ掛かったまま、松山駅前から伊予鉄市内線に乗った。
 警察署前という名前の駅が最寄りの電停らしい。(果たして伊予鉄市内線でも「電停」と言うのでしょうか)。
 道後温泉行きの市内電車に乗って、午前中に通った場所、再び。
 大街道は更に人が増えて、賑やかさが増して、そんな光景を横目に。走る自動車も増えて、路面電車は少し窮屈そうにも見えて。そんな風に思っていると、程なくして警察署前駅に到着した。電停という佇まいが何とも。降りて道路を横断して、地図アプリに案内されながら、教育会館を目指した。

松山駅前、伊予鉄市内線の電停。

20230330(下)に続きます。

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