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続・箕輪氏ハック思考を考える。なぜ人々はSNSでマウンティングを取るのか

先日のnoteで書いた件、そういえばめちゃめちゃ枝葉の話だったことに、一日経って気がつきました。

こういったSNSを主軸とした昨今のマーケティング手法は、ある程度の大人は言わずもがな把握している部分です。

それにもかかわらず、Twitterではこの悪徳商法め!と書かれ、NewsPicksではなるほど素晴らしい戦略ですね!と、悪or正義の話にしかならないのは悲しい現実といえます。

元の記事を書かれた久保内さんが、より数字やビジネスのロジック、他業者での事例について書かれたフォローアップ記事をアップされていたので、その辺り気になる場合はぜひご覧ください。

出版サイドが著者に対して、告知ツイートやRTを依頼するくだりは想像で書いていましたが、だいたいあっていたようで笑いました。

ハックが行き着く先はどこか

さて本題に入っていきたいと思いますが、元々僕が今回の一件に興味を持ったのは、文春砲が発射される前に箕輪さんと唐木さんという方のやり取りを見たからでした。

長いやり取りになりますが、大元はココでしょう。

端的にまとめると、元幻冬舎の編集者でその後にコミックナタリーなどを立ち上げた、現ベース奏者の唐木元さんが「若い人は、箕輪氏が担当したことのある著者の本はすべて読まない方が良い(全部読んでいないけど)」とツイートした件です。

そのツイートに対し、箕輪氏をはじめ関係する著者達がさまざまな反応をしていました。

バランスの取れた反論をされていたのは、宇野常弘さんでしょうか。

一連の流れについて、僕の中で整理がついておらず頭の片隅に置いておいたら気がつけば文春砲が発射されており、恥ずかしながら元々の興味を忘れてしまっていました。

それにしても文春砲はバズらせるための発射のタイミングがエグいですね。まさにハック。

ハック思考はエリート主義に陥るのか。

そもそも、唐木さんが件のツイートをされた意図は以下のところにあるようです。

(元ツイートはもっとあるので、正確に把握するにはツイートツリーをすべて辿った方が良いです。)

「箕輪さん界隈の著者は全員悪人だから読まない方が良い。」ではなく、「彼ら(のほとんど)は弱肉強食・優勝劣敗思想が際立っていて、自分はその思想に反する以上、若者にはその手の本を読んで欲しくない。」という旨でした。

個人的におおよそ同意する意見でしたが、宇野さんの「中身を読まずに本の評価を決めるのは良くない。思想が異なる人・グループであれ中身をよく読んでから批判すべきだ。」が原則かと思っています。

改めて、出版業界ハッキングを考えたい

そんな話を踏まえて、改めて出版業界ハッキングや、SNSでのセルフブランディングの流れを考えていきます。

ハックのポイントは、本(や付随する商品)の中身ではなく著者のキャラクターで売る、という点です。

元来から、好きな著者の新刊だからととりあえず買うのは自然な行為でしょう。その行為をハックで加速化させ、さらに本人だけでなく関係するグループ全体にまで波及させているのが、強さと言えます。

「著者が好き→(中身はさておき)著者や周辺人物の商品を買う」って流れですね。カタカナにすれば、ファンビジネスやブランディングでしょうか。

ここで、このハックを肯定するなら逆のルールも肯定されるのでは?なんて気がしてきます。

つまり、「著者が嫌い→(中身はさておき)買わない」というルールです。

人物やその人間関係全体をハックにより1つの記号とし、中身を吟味せず反射で購買することを肯定するなら、逆の行為が肯定されるのも自然ではないでしょうか。

GUCCIの服新作一点一点は吟味していないけど、あのブランド全体の雰囲気や思想が嫌いだから買わないし友達にも勧めない、と聞くとその主張も別に間違っていない気がしてしまいます。

すでにSNS上ではハックにより「NewsPicks」的、「編集者・箕輪」的という記号が完成しています。

その記号を批判するなら本来は正しい行程を踏んでいくべきですが、ファン達が中身を深く追っていないのに、非ファンが中身を深く検証するのは寂しさがあります。

それでもなお知性に重きを置くのであれば、寂しくても手間でも、中身をエグってから批判すべきですが、やっぱり面倒だし雑に「あの界隈は見ない方が良いよ」って言いたくなってしまいます。

ここまで考えても、SNS上であんな商法は悪徳な宗教と一緒だ!と脊髄反射的な叩きをするのは、そこまですら考えておらず、やはり間違っているんですけどね。

ハックは不健全な競争社会を誘発する?

ここでまた1つ戻って改めて考えたいのが、「ハックという思想が、弱肉強食・適者生存な社会を形成・促進させるのか」についてです。

唐木さんのツイートの中では、ハックは他を出し抜く思想に基づくとされています。個人的に補足するとしたら「できるだけ低コスト」でライバル達に勝とうとする行為でしょうか。

低コストでって部分が非常にやっかいで、それは暗に地力では競争に勝てないと無意識化で認めることにも繋がります。

「現状、実力が他のライバル達に劣っていて、追加投入できるリソースを考慮しても勝算が低い。ならばハックでブーストをかけよう。」という思考です。

もちろんそうではなく、元々地力はあり社会に認知されるきっかけとしてハックを活用しよう、と考える方もいると思います。しかしハックがやっかいなのは地力がなかろうがある程度は作用する点です。

中二病っぽく書けば、ハックは強力な武器だが、その力に飲まれてはいけない…!ダークサイトに墜ちるぞ!ですね。

地力が足らずハック主体で作り上げた地位は、ブーストをかけた虚像になりえます。その脆さは、勝った時よりも勝った後に現れるでしょう。

それが「低コストでライバルに勝ったのだから、低コストでライバルにまた抜きさられる」ことへの恐怖です。

そこで自分の地位を虚像であると認め、地力をつけようと考えるのであれば、順番は少し間違えしまったのかもしれないですが、良い流れだと思います。

なぜなら、ゲームで言えば自分のレベルは低いけど武器の性能で勝ったと自覚し、やっぱり自分のレベルも上げないとねと認めているからです。

いま芸能人の進出が目立つYouTubeの世界でも、人気YouTuber達は同様に自身の実力を見直す段階にあるのではないでしょうか。

しかし、虚像を実力だと勘違いしたままでいると、ライバル達にハックだけではない、他の低コストな手段で抜かれない方法はないかと考え始めます。

その1つが競争相手に圧力的に振る舞うこと、すなわちマウンティングです。相手をつぶせば競争する必要はなくなる、実に低コストな方法だと言えます。

最初に貼った箕輪記事フォローアップ「信者ビジネスって自己啓発系にしか通用しないんじゃない?」では、オラオラな兄貴を演出するのは、コミュニティでの求心力を持たせるためとされていましたが、それだけでなく以上の考えもあるのでは?と思っています。

昨今、NewsPicksやTwitter等で実名アカウント達がマウンティングバトルをしているのは、無意識化での自信の無さに由来するものと考えると、匿名の誹謗中傷問題とはまた別のSNS問題です。

健全な競争ならまだしも、競争するグループ全体が実は地力に不安を抱えた上でのマウンティング合戦だとしたら、非常に不健全な競争社会に見えます。

お互いにリスペクトを持って共存共栄していきましょう、みたいな話って、互いが自負を持ってはじめて成立するのだと思うんですよね。

この不健全な競争社会は別にネットだけでなく、実社会でのいわゆる出世競争といった現場でも起きているでしょう。ただSNS上ではハックの副作用により、その悪しき競争社会をさらに加速化させています。

若い人達のアイデンティティや地力が固まる前に、そんなハック思想を与えるのはやっぱり危うい、そんな社会に巻き込んではいけないって気がしてきます。

…などと考えていたら、箕輪さんが編集担当された新著のタイトルが『ハック思考』なのは笑っちゃいました。

ハックは容量用法を守って正しくお使いください。

こちらからは以上です👋👋

私的後日談

最後までご覧いただきありがとうございました🙇🙇