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妄想小説

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【妄想小説】風○嬢の彼女と客引きの僕と太客の下着泥棒

僕は、我が家に今夜侵入した下着泥棒の正体を知っていた。 「どうしてここにいるんだ」 「フミカちゃんのし、下着が欲しくて」 「それで僕の彼女の仕事帰りをストーカーして家を特定したってわけか」 「その通りだ」 「警察に通報する」 「本当に通報していいのか」 「どういう意味だ」 「通報したら、あんたたちの生活が苦しくなるぞ。分かってるのか」 そう、我が家に侵入した泥棒とは、僕の彼女フミカが働いている夜のお店に足しげく通っている、いわば「太客」なのである。僕は、夜の街を歩く男に「

3分探偵あやめちゃん「優等生ゆりちゃん遅刻の謎をパンケーキの前に」(後編)

前編はこちらからご覧ください。 -------------------------------------------------------------------------------------- 「ゆりちゃん、もう一度さっきの話を整理させてね」 「うん、何でも聞いて」 「まず、私たちは11時にこのお店の前で待ち合わせしたよね」 「うん、11時だね」 「だからゆりちゃんは、それに間に合うように10時45分に家を出たんだよね」 「うん、そうだよ。腕時計でちゃんと時間

3分探偵あやめちゃん「優等生ゆりちゃん遅刻の謎をパンケーキの前に」(前編)

 どういうわけか、ゆりちゃんが何分待っても姿を現さない。待ち合わせ時間は11時だったはずだ。ゆりちゃんがSNSで「生クリームがいっぱいのパンケーキを食べに行きたい」と言っていたので、一緒にランチにを食べに行こうと私が誘ったのだ。ポケットから取り出したスマホの画面にはもう「11:11」と表示されている。どこか寄り道しているのだろうか?あるいは事故に巻き込まれているのではないか?ゆりちゃんが遅刻するなんて何が起こっているのだろうか。  ゆりちゃんが学校を遅刻するところなんて見たこ

第8話「新キャラ登場!あやめちゃん」

あやめちゃんは中学2年生。あやめちゃんはいろんなことに興味津々です。帰り道に通り過ぎた電柱の汚れシミをじっと見つめては眼鏡をくいっと上げて、それが世界の国の形に似ていないか確認しないと気が済まない性格です。あやめちゃんはお勉強が大好きです。テストに出ないような細かい知識も覚えているので、よく先生に褒められています。スポーツはどうかというと、これもまた得意です。ダンスの時間では、男子生徒の目をくぎ付けにしていました。文武両道のあやめちゃんは、もちろん女子からも男子からもモテモテ

今日もりりあは元気です。第7話「空想と明晰夢の境界で」

僕は目を閉じて、椅子に体を預け、闇の中であることに思いを馳せた。午前11時13分。昨日見た夢を思い出そうとしたのだ。夢を見ていたことは確かに記憶している。けれども、その夢の内容を思い出すことができない。父親の存在は思い出せるが、彼の背姿しか思い出せないことに似ている。 「墨船、灰海に沈す」とはまさにこのことである。 思い返せば、朝目覚めた時に、ついさっきまで見ていた夢を覚えていたことは今までにほとんどなかったことに気づいた。同時に、人はなぜ夢を覚えておくことができるのか疑問に

今日もりりあは元気です。第6話「アリノス・オン・ザ・ビーチ」

「りりあ、どこ行くの?」 「いいから、ついてきて」 りりあは僕の前方で、ガニ股になって立ち止まっては地面を見つめ、また歩き出すのを繰り返している。鼻息とヒールの音が交互に聞こえてくる。 「りりあ、どこ行くの?」 「いいから、ついてきて」 こんな会話を何度繰り返しただろう。時計の針も「そろそろ休憩したい」と言っている。夕日に照らされたりりあのシルエットは本当の蟹に見えた。僕はあきらめて、りりあのヒールの鳴る方へただ歩を進めることにした。りりあが車にひかれてしまわないように

今日もりりあは元気です。第5話「脚フェチの人は自己肯定感が低い」

脚。太もも。ふくらはぎ。 街中を歩いていると、歩いている女性のその部位ばかり目で追ってしまう。いつから僕は脚フェチになったのだろう。気づいたらそうなっていた。信号待ちをしている女性が、自転車に座ったままバランスを保つために、歩道の縁石に足を伸ばしている姿。僕の前方を歩く女性のふくらはぎが、歩くたびにぷるぷる動く姿。夏はミニスカ、冬タイツ。この現代に男の清少納言がいたならば、筆を執っていたに違いない。実は、りりあには内緒だが、今日のデートの待ち合わせ前に、ヴィレッジヴァンガード

今日もりりあは元気です。第4話「りりあ、インスタ始めるってよ」

「暇だね」 「うん、暇だね」 僕はスマホの画面を親指でなでながら答えた。新しく買ったソファーは座り心地が良い。全体重をあずけても安心感がある。いや、この安心感は隣にりりあがいるからかもしれない。いるからではないかもしれない。 「何やってるの?」 りりあが僕のスマホの画面をのぞき込んでくる。 「インスタ」 「ああ、インスタね」 「りりあ、インスタやってたっけ?」 「やってない。別に私、映える生活送ってないし」 「僕も映えてないけどやってるよ。友達が結婚したとか資格取ったとか、そ

今日もりりあは元気です。第3話「初詣 後編」

前編はこちらから 駅の改札を出ると、参拝客らしき人だかりが南側の出口に流れていたので、僕たちもそれについていくことにした。出口まで来ると、以前検索したときに見た、あの朱い鳥居が見えてきた。 鳥居の前まで来ると、りりあは急に足を止めた。 「鳥居の真ん中は通っちゃダメなんだよ」 「そうたっだ、忘れてたよ」 砂利道に足をとられそうになりながら奥へ奥へと歩いていくと、右側に身を清めるためのお手洗いスペースがあった。それを横目に通り過ぎようとするとりりあが僕の袖を引っ張った。 「神

りりあは今日も元気です。第2話「初詣 前編」

ピンポーン。 僕はベッドから起き上がり、インターフォンのモニターへ急いだ。 「はい」 「僕くん?」 「あけましておめでとう。今年もよろしくお願いしマウス!なんちゃって」 りりあは両手を双眼鏡の形にして、僕の方をのぞき込んでいる。外はきっと寒いに違いない。 「今出るから、待ってて」 「はーい」 電気ストーブと照明を消し、かばんを持って玄関に向かう。玄関に近づくにつれて廊下の床が冷たくなっていくのが、靴下を履いていても分かる。靴を履き、ドアを開けると、りりあは目を赤くして待ってい

小説第1話「6本足のタコさんウインナ―」

りりあと近所の公園で待ち合わせ。天気予報通り、小春日和となった。待ち合わせの時間を過ぎても、りりあはまだ来ない。 「ごめ~ん、おまたせ!」りりあが小走りで駆け寄ってきた。黒いニットにチェックのスカート、ベレー帽。それに歩きづらそうなブーツを履いている。公園デートって伝えるの忘れてたっけ。りりあの息が白く広がっては消えていく。僕は、膝に手を当てて息を整えているりりあに聞いた。 「あれ?今日荷物多くない?公園デートするだけだよね」 「ハァ、今日ね、実はお弁当作ってきたんだ!ハァ