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今、関曠野さんを読んでみる

Amazonで「関曠野」と検索しても出てこないものがあります

彼の代表作に『プラトンと資本主義』を挙げる人は多いです。

関さんの著作は、誰もが常識と疑うことなく受け流してお終いにしていることを、根底からひっくり返し、更には新しい視点からその全てを組み直すという独特でとんでもない論考が展開されています

そんな離れ業を大作で完璧にやってのけたデビュー作に一撃されて、皆関曠野という異才に注目せざるを得なくなったのですから、まぁ納得ですねと言わざるを得ないんですが、そのやり方については「掟破り」と指摘するアライ=ヒロユキさんのような方もおられ、それもまた確かに説得力の高い批判ではあります

しかしながら、アカデミックな世界とは徹底的に距離を置き、生涯自由気ままな貧乏暮らしを選択した信念の人という見方もできるわけで、僕はこちらの立場から「掟破り」でもよいんじゃない?と判定します

参照しながら脚注無しで済ませている、彼の論考に影響を与えた人や著作を明かすのは、己がせずとも全て知っている何方かがやればよいとしてもさほど問題はなかろうとする方ですね


前記事でご紹介した関曠野さんの小論は、古代のギリシア悲劇から20世紀の演劇人たちへと至る、これまたなかなか見かけることのできない演劇論を展開されておられますが…、

しかしながら、関曠野の演劇論と言えば、まず挙げられなければならないのが、デビュー二作目に刊行された『ハムレットの方へ』で決まりです

シェークスピアの『ハムレット』の常識的一般的な理解を完全にひっくり返し、ウジウジ悩める主人公の物語では全然なくて、実は快男児ハムレットが「外れてしまった世の中の関節」を身命を賭して治していく痛快極まりないドラマであると解明していくミステリーのような展開であり、また読む者に元気が沸きたってくるような読後感を与えてくれる著作になっていて、僕はこちらの方が好みです

英国のエリザベス朝時代に盛んに催され、高い大衆的な人気を誇った「イギリス・ルネサンス演劇」についてもきっちり説明した上で、シェークスピアという天才の特異性を浮かび上がらせる

そういうことも併せてやってのけてます

僕には、シェークスピアの『ハムレット』が、同じく個人的に愛して止まない夏目漱石の『坊つちやん』のような話だったとこっそり告げているようにも感じますね

小説としての出来としてどちらがということとは関係なく、同じ漱石の手による『こころ』とは全然違うように

なかなか入手できないものになってしまいましたが、機会があれば是非ともと強くお勧めしたいです

また、関曠野さんに師叔する同士ながらも尊敬すべき先輩格である小谷敏さんも、多くの人にとって知られては都合が悪いような、だからほったらかしにして頰被りして済ませている諸問題をテーマにした著作が目立つという意味では、まさしく関曠野譲りの気概を感じさせてくださいます

最新刊にして、コレですからね…

僕が好むのは、自身が受験生ながら「入学試験は並べてくじ引きにすべし」と説いてゲラゲラ笑って何度も読み返した、森毅さんの『数学受験術指南』と根底で通じるこちらになりますね

かのジョン・メイナード・ケインズにも、経済的な裏付けを伴って同じような人間観を提示したエッセイがあります

『わが孫たちの経済的可能性』がそれなのですが、よい日本語訳が無いのがとても残念に思います

山形浩生さんの翻訳によるものが検索すると簡単に見つかりますが、この方独特の自身の主張を盛り込むやり方での仕上げとなっており、正しくケインズが言わんとしたことを伝えているか?となると、僕には大きな疑問があり到底お勧めしかねます

ケインズ自身による原文をこの記事の最後に置いておきますので、英語に親しんでいる方は是非読んでみてください
彼の英文は難しいとも言われますが、それほどの分量でもありません

小谷敏さんでお勧めしたいものでもう一冊ご紹介いたします

やはり、都合が悪いと思われる方は多いとしてもおかしくなさそうなタイトルが並んでしまいますが…、内容は折り紙付きです


前記事でもご紹介した、アライ=ヒロユキさんにも良作が多くあります

再掲になりますが、米国🇺🇸大統領選挙直前だからこそ、きちんと読んでおきたい内容です



最後に、Yale Department of Economics のサイトに掲載されている、ケインズの『我が孫子たちの経済的可能性』(Economic Possibilities for our Grandchildren 1930)を置いておきます

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