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競技かるたの作戦・遅い展開と速い展開

かるたの試合で負けた後に「展開が悪かった」「自分向きの展開ではなかった」と言い訳をしたくなることがあります。もちろん実力があればどんな展開でも勝てるはずですし、それを目指して練習するのがあるべき姿でしょう。が、試合によって展開の向き不向きがあるのは事実です。ということで、今日は「遅い展開」と「速い展開」の特徴と、それぞれのパターンの対処法について書いてみようと思います。

遅い展開

 試合展開の中で比較的分かりやすいのはスピードが上がりにくい「遅い展開」です。速く取れない札が終盤まで残る展開になります。
決まり字が短くならなかったり、分かれ札が最後まで残ったりすると、この展開になりやすいです。序盤~中盤に読まれる札が単独札中心で決まり字の変化がなかったり、3字以上の分かれ札が終盤まで残ってしまうような展開ですね。
例えば、4枚の「は」札のうち「はるの」「はるす」「はなの」の3枚が場にあったとして、「はなの」が序盤早々に3字札として詠まれ、「はるの」「はるす」の分かれ札は終盤まで詠まれない、という場面をイメージしてもらうと良いと思います。複雑な状況が長く続くことになります。
 
このように決まり字の長い札や分かれ札が終盤まで残ると、札の配置は固定しがちです。なぜなら、決まり字の長い札や分かれ札は送られる可能性が低く、序盤の配置のまま残るからです。
このため一部の単独札(単独1字・2字など)だけが両陣を何度も行き来することになります。そうすると、本来なら狙って速く取りたい単独札の暗記が定着せず、速い取りが出にくい状態になるのです。その結果、遅い膠着した試合展開になってしまいます。
 
上述のとおりこの展開はスピードを上げにくい状況になるので、スピードで勝負する選手に不利です。スピードに自信のある選手は、いつもよりもスピードが上がらないので焦ってしまい、無理してスピードを上げようとしてミスをしてしまうことも多いでしょう。
しかし、この展開で重要なのは、膠着した状況でスピードを上げることではなく、ミスなく札を減らしていくことと、展開が動く最終盤にペースアップする準備をしておくことだと思います。

つまり、長い札が固定した膠着状況では、送り合いが続く少数の短い札での暗記ミスや、無理にスピードを上げようとしての狙いすぎのミスを避けることを重視すべきです。早く反応することよりも手を伸ばして払うことを意識した暗記・狙いをした方が良いと思います。この展開では相手もあまりスピードは上がらないので、多少遅くとも出札に正しく反応できれば札は減っていくと思います。

また、もう一つのポイントですが、この展開では膠着していた札が終盤になって急に動きます。決まり字の長い札が急に単独1字・2字になり、試合の中での位置づけが大きく変わるからです。
このため、終盤は序盤~中盤の延長ではなく、全く異なった局面として対応する必要があります。特に、膠着している札の暗記を強く入れる(例えば、3字札を1字目で囲うイメージを強く入れてしまう)と、終盤にそのイメージが残って足をすくわれる可能性があるので、あまり強い暗記を入れないようにしたり、逆に終盤は全く違うイメージで1から暗記を入れ直すといった対応が効果的です。

速い展開

 遅い展開とは逆に、試合中を通じてスピードを上げやすい短い札が多くあると速い展開の試合になります。中盤までに多くの札の決まり字が変わっていき、スムーズにスピードを上げていく展開になります。
先ほどの「は」札の例で言えば、序盤に空札の「はなさ」が出て「はな」が2字決まりになり、中盤までに「はるの」も出て「はる」「はな」の2字の分かれとなった後に、スムーズに一方が詠まれて「は」の1字決まりが残るような展開です。
 
この展開では、中盤にはスピードの上がりやすい2字の分かれ札が作られ、さらに終盤の「は」決まりはそれまでの暗記の延長で狙うことができるので、暗記を回しやすくスピードが上がりやすくなります。この展開はスピードのある選手に有利で、キャリアのあるベテラン選手が勢いのある若手選手に押し切られる試合はこんな展開が多いと思います。
 
速い展開の試合は、試合が進むに従い局面がシンプルに整理されていくので戦略上考えるべきことは少ないです。特に、スピードに自信のある選手であれば、シンプルに短くなった札を暗記してスピードを上げていくだけで十分でしょう。

ですが、あまりスピードのない選手の場合、速くなっていく展開についていけずに終盤に相手に振り切られてしまう展開になりやすいです。このため、中盤~終盤では意識して複雑な状況を残す選択をしても良いと思います。
例えば、それまで下段に置いていた札が1字になったところで上段に浮かせてみたり、2字の縦分かれが生じたら自陣側を移動して対角分かれにしてスピード勝負になりにくくしたりする、といった対策が考えられると思います。

 
ということで、遅い展開と速い展開の違いについて書いてみました。自分のスタイルに合わない展開の試合はつらいのですが、展開を変えることはできません。自分のスタイルに合わない展開になっていることを早めに認識し、そのような展開に合わせる取り方や作戦に切り替えることで、試合展開を言い訳にしなくてもよいようにすることが大事だと思います。

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