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競技かるたの作戦・詠みに合わせる取り

競技かるたをする選手なら誰でも、少しでも早いタイミングで詠みに反応したいものです。当然、余韻の瞬間には読手の発する1音目や半音目、人によっては4分の1音目を聞き分けようと集中しているのではないでしょうか。
ですが、試合をしていると、どうしても詠みと取りのタイミングが合わなくなることがあります。集中すればするほどタイミングがズレて音が上手に掴めなくなり、全く動けなくなってしまったり、逆に無理矢理動いてみたものの音が分からず手が止まってしまったりした経験のある方は少なくないのではないでしょうか。

詠みに合わなくなる理由

この現象は試合開始から起きることもあれば、試合中に出ることもあります。原因は様々ですが、試合開始からのときは読手との相性(詠みのタイプが合わない)や会場の環境(雑音が多く音が弱い・反響が響きすぎる)が原因であることが多いです。慣れた環境で取る練習では発生せず、大会で急に発生したりするので対処が難しいです。
試合中の場合は、詠唱の不安定(余韻が長くなる・読みが遅くなる)が原因のことも、取る側の技術的な問題(狙いすぎる・構えが崩れる)によって起きることもあります。徐々に詠みとのタイミングがズレてくるのですが、最初は取れているので気づくのが遅れてしまいがちです。

そして、試合開始からの場合にも試合中の場合にも共通することですが、音を待つときの余裕がなくなるほど、詠みとのタイミングのズレが問題になりやすいです。
例えば、いつもは1音目で反応している選手が半音で反応しようとしたり、いつもは2~3枚しか狙い札を作っていない選手が5~6枚を狙おうとしたりすると、詠みとのタイミングを合わなくなって急に動けなくなったりします。暗記していた音のイメージと実際の詠みの違いを調整する余裕がなく、イメージと少しでも異なる音が詠まれると反応できなくなってしまうのだと思います。

よく、試合中に「手が止まってしまった」などと言われることがありますが、まさにこの状態になっていることが多いと思います。暗記が入らなかったりお手つきで動揺したりしたときも「手が止まる」ことがありますが、このような場合はむしろ焦って聞き間違い・出間違いでミスを重ねるパターンになることが多い印象です。

詠みに合わせる方法

詠みに合わず手が止まってしまったときは、敢えて遅く取ることで詠みとのズレを解消できます。

例えば、半音で反応しようとするのをやめて、1字目で動けなくても決まり字のタイミングで動ければいいと割り切ったり、狙い札の枚数を減らして狙いも弱くしたりすると、遅いながらも手を動かすことができて詠みとタイミングが合ってきます。「手が伸びてきた」状態になるのです。
詠みに合わなくなってしまったときは、このようにして少しずつ詠みと合わせて調子を上げていくのが王道だと思います。その試合にあった音の聞き方をつかんだら、再度反応のタイミングを早くしてスピードを上げていけばよいです。

詠みに合わせにいくかどうかの判断

このように、詠みと合わなくなったときは遅く取って詠みに合わせましょう、というのが一般的には正しいです。ですが、特に試合の途中から詠みと合わなくなってしまった場合は、取りかたを変えて詠みに合わせにいくかどうかの判断が難しいことがあります。
というのも、詠みに合わせる取りをすると一時的にはスピードが落ちるからです。例えば、優勢な試合の中盤、詠みとのズレが出始めていることに気が付いたときなどは、一度スピードを落として調子を維持するか、それとも多少は手が止まりかけてもそのまま押し切るか、判断が難しいことが多いのです。

これは試合展開や相手との相性にもよるので絶対的な正解はないのですが、私の判断基準は「全部取られる相手なら調子を戻すことを優先・取らせてくれる相手なら押し切ってしまう」です。
競技かるたでは、場にある札を全部取る選手と、取る札と取らない札が分かれる選手とがいます。例えば、分かれ札を聞き分けや戻り手で両方取ろうとする選手は全部取る選手です。狙い札を絞るタイプの選手はその逆で、相手に取らせて良い札をある程度作りながら試合を組み立てます。
場にある札を全部取る選手を相手にしているときは、手が止まると一気に連取されて逆転されてしまうリスクがあります。このため、詠みと合わなくなったら一旦スピードを落としてでも調子を維持したいです。
その逆で、取らない札を作って試合を組み立てる選手を相手にするときは、多少手が止まりかけていても反応スピードの維持を優先しています。このタイプの選手は終盤の狙い合いの勝負に強いので多少無理をしてでも早めに押し切ってしまった方が良いという判断です。


大会で何が何やら分からないままに負けてしまうことがあります。調子が出なかった、緊張で動きが硬かった、といった言葉で片付けられてしまうことも多いのですが、詠みとのタイミングのズレを修正できなかったような技術的な問題であることも多いのではないかと思います。技術的な問題ならば技術を向上させることで改善できます。詠みに合わせる技術、詠みに合わせにいくタイミングの判断を身につけると、勝率が上がってくるのではないかと思います。

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