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競技かるたの作戦・団体戦の声かけ

ookomimiです。今日は団体戦についての投稿です。団体戦で一番話題になることが多い試合中の声かけ(かけ声・声出し)の話です。

団体戦の声かけについては色々な意見があります。声かけがない団体戦はつまらない、あまりにうるさい声かけはマナー違反だ、声をかけることばかり気にして試合に負けたら本末転倒だ・・などなど。
ただ、純粋に戦略的な観点からの話をすると、声かけをする方が得なことが多いです。

団体戦とは

といっても、この投稿中で「団体戦」というのは、同じチームの選手が横に並ぶ通常の5人団体戦のことを指しています。3人団体や、チームの選手が横に並ばない形式の5人団体では事情が違います。選手間の距離や札合わせが生じる頻度が違うので同列には語れません。詳しくは書きませんが、このような形式の試合では通常の5人団体戦よりも声かけの必要性が低くなりがちです。

声かけのメリット

通常の5人団体戦の話に戻ります。
5人団体戦での声かけのメリットは幾つかあるのですが、最大のメリットは相手の集中力を削ぐことだと思います。

団体戦は個人戦よりも集中しにくい環境になります。周囲の戦況によって取りかたを変えたり、札合わせを意識したりするなど配慮すべき要素が増えるからですが、これに加えて相手の声かけがあると、集中を妨げる要素がさらに増えます。
ですから、団体戦では、声かけで相手の集中力を乱して取りを鈍らせた方が有利です。有力選手が団体戦で意外な相手に負けてしまうことがありますが、多くはこのパターンではないかと思います。
なお、団体戦の大会でどこまでアグレッシブな声かけが許容されるか(例:相手のお手つきで「チャンス!」は良いのか等)は明確な基準がなく、各大会の審判長の判断・説明を確認するほかありませんが、相手を動揺させる・集中を削ぐという観点からは「入った!」「ナイス!」「この調子!」といった無難な声かけでも十分に効果はあります。個人的には「チャンス!」程度は相手を誹謗しているわけでもないので許容して良いのではと思いますが・・・

そのほかのメリットとして、声をかけて仲間を勇気づけることでチームメイトが普段以上の力を出せるようになる、とも言われたりします。ですが、私は否定的です。仲間を集中させる声かけを意識的に実行するのは難しいからです。
仲間への声かけもとどのつまりは試合中のノイズです。ですから、チームメイトにとっては集中を乱す効果の方が大きいと思います。仲間の集中を乱さない上手なタイミングで声をかければ良いのでしょうが、試合中にそこまでタイミングを見計らう余裕はまずありません。声かけで仲間をパワーアップさせることはあまり期待できないと思っています。

むしろ、声かけでチームメイトに与えられるメリットとしては、見えない試合の戦況を把握したり、作戦を共有したりといった戦略面の意思統一の点が大きいと思います。
例えば、団体戦では離れた試合の戦況を把握するのは難しいです。このため、リードしている選手が「取った!」と言ったり、その周囲の選手が「ナイス!」と言ったりすることで、何本取れそうな戦況なのか全員が理解できるようにする声かけは重要です。負けている時は基本的には何も言わなくて良いですが、差を詰めている選手は積極的に声かけをして戦況を共有すべきだと思います。挽回した選手は札合わせに加われるので、そのことを仲間に認識させるべきだからです。
また、作戦を共有する声かけの是非は議論になる(あまり一般的ではないが「札合わせの声かけは助言だから禁止」といった考え方もある)のですが、通常は許容されると思います。これも、声かけがないと札合わせしなければならないことを認識できず負けてしまうので重要です。もちろん「○○を取れ・送れ」等のあからさまな助言は禁止でしょうから、場面ごとの取りかたやサインを事前に決めておく必要はあります。

声かけのデメリット(?)

といったメリットについて書くと、「試合中に色々考えて声かけをしていたら自分が集中できなくなるのではないか」という意見が出ます。これは一面では正しいです。上で書いたとおり、声かけも試合中のノイズなので、自分にとっても仲間にとっても負担がある行動だからです。

ですが、声かけのデメリットを強調する意見の多くは、声かけを難しく考えすぎているか、単に団体戦経験が少ないだけのように思います。

もっとも多い誤解は、チームの力を上げようとするあまり声かけのことを考えすぎてしまうことです。試合中の声かけで仲間の力を引き上げるのはタイミングも言葉のチョイスも難しいです。そのような声かけを試みると、考えすぎて結果的に集中を欠いてしまう場合が多いと思います。
自分が札を取ったら「取った!」、隣が札を取ったら「いいね!」と言うだけの頭を使わないシンプルな声かけで、相手にプレッシャーをかけて集中を乱すことはできます。それだけでも声かけの効果は十分だと思います。

また、団体戦経験が乏しい選手は声かけを会話のように考えてしまいがちです。それだと相手に言われたことを理解してから返事をすることになり負担が大きいです。
ですが、団体戦経験が豊富な選手はあまり考えずに声を交わしていると思います。実際、団体戦でも仲間が「取った!」と言ったら「いいね!」、仲間に「ナイス!」と言われたら「はい!」などと、反射的に返事をしているだけの場面が大半です。

ですから、ある程度慣れてしまえば、団体戦での声かけはさほど頭を使わずできることが大半です。そうなると声かけの負担はかなり小さくなるので、慣れている選手には声かけのデメリットはほとんどないのです。

声かけをしない場面

このように、団体戦での声かけは、熟練した選手にとってはメリットが大きくデメリットは小さいので、戦略的な観点からは声かけをした方が得なことがほとんどです。ですが、声かけをしない選択が正解になる場面もあります。

例えば、序中盤でほとんどの選手が押されているときは声かけをしない方が良いことが多いです。このような時に声かけをすると、自分が不利だと相手にわざわざ教える結果になって相手を勢いづかせてしまうからです。このような時は静かに集中しながら取り進めて、相手のミスや味方の連取で差が縮まったタイミングで声をかける方が相手の集中を乱しやすいと思います。
ただし、リードしている相手が積極的に声かけをしながら試合を進めているなら、負けていても多少は声を出した方が良いです。相手の声かけに圧倒されてチーム全体が負けムードになってしまうことがあるからです。無理をする必要はなくあまり負担のないシンプルな声かけをするだけで十分ですが、声かけで対抗しながら試合を進めた方が大敗は防げます。
また、終盤近くになったら戦況不利でも声をかけた方が良いと思います。終盤になれば戦況の有利不利は明らかなので、相手に戦況を教えるデメリットはほぼなく、逆に仲間の意思統一を図ったり相手の集中を乱すメリットの方が大きくなりやすいからです。

他には、団体戦経験の乏しいチームでは、声かけの負担を避けて、声かけをしない方針で団体戦を戦った方が好結果に結びつくことがあります。ただし、これは練習期間・準備時間が取れないチームの場合に限ります。
もし事前に時間が取れるなら、多少なりとも声かけの練習をしておき、声かけをする団体戦をした方が良いと思います。声かけをしないでいるといつになっても団体戦はうまくなりません。団体戦で戦略的な得をしたいなら声かけの技術は必須だと思います。


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