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競技かるたの作戦・終盤に札を下段に移すか問題

ookomimiです。競技かるたの作戦について書いています。今日は軽めの話です。

はじめに

以前の投稿で、スピードで負けている終盤では札を下段に移動しない方が良いと書きました。今日は、その逆で、どんな場面で札を下段に動かしたいか、について書いてみようと思います。
もちろん、手短に言ってしまえば「札を下段に動かせば相手より早く取れるとき」ということに尽きます。が、これでは身も蓋もないので、もう少し具体的に書いてみます。

相手の手が下段に伸びていないとき

まず考えられるのは、相手が下段を払いにくそうにしているときです。「下段を払いにくそうにしている」かどうかは、相手の構えや払いのフォームから判断できるときもありますし、試合の中で分かってくる場合もあると思います。上段や中段に比べると下段の払いが遅かったり、力強くなかったりするときは、相手が下段の払いに問題を抱えていることが多いです。

このとき、札を下段に動かすと、相手の手が出札まで伸びずに札を容易に守れる可能性が高いです。相手が下段を苦手としているなら下段への移動は序中盤でも有効ですが、中段の札が減って札押しが効きにくい終盤の方が効果的です。自陣の札を定位置から外すことにはデメリットもあるため序中盤だと下段への移動がマイナスになる場面も多いのですが、終盤だと相手を遅くするメリットの方が大きくなりやすいです。

私の例ですが、この作戦を取るときは自陣が10枚を切った時点で主に中段の札を下段に下げて過半数を下段に置くことが多いです。自陣残り7~8枚の時に下段を5~6枚にして残り2~3枚を上段に置くようなイメージです。上段の札を定位置から大きく動かしたくないことと、多少は上段が残っていた方が相手が下段を払いにくいからです。
この作戦は互角~やや勝っている時の方が効果があります。こちらがリードしていると相手が自陣重視になって敵陣下段に手が届きにくくなるためです。逆にリードされているときは相手が敵陣重視の構え・払いにシフトすることが多く、単純に札を下段に移動させるのは逆効果なこともあります。

感じで勝てるが敵陣の払いに自信を持てないとき

札を積極的に下段に移動させた方が良い場面をもう一つ挙げると、感じの早さで勝っているが敵陣深いところの払いに自信が持てないときでしょう。
小柄な選手や筋力の弱い選手に多いのですが、感じは早いのに敵陣を鋭く払えないため終盤に差を詰められてしまう選手がいます。こういった選手は中盤~終盤に自陣の札を下段に集める作戦を取ることが多いです。自陣深くまで相手を引き込むことで敵陣が取りやすくなる効果があります。

古い話ですが高校選手権を連覇していたころの静岡雙葉学園の選手の多くはこのスタイルだったと思います。過去の名人・クイーンレベルの選手でこのスタイルは少ないのですが(タイトルレベルの選手は敵陣の払いは十分に上手だからです)、岸田元名人はこのスタイルに比較的近いと思います。岸田元名人の場合は敵陣深くの払いよりも感じやすさを重視した構え・払いをしていたので、高レベルの相手と終盤に高速の抜き合いになるとやや分が悪く、むしろ自陣の札を下段中心に集めて堅い守りを維持することで相手を引き込みつつ敵陣を取っていた印象です。

この作戦を取るべきかどうかは「あまり守りに入らなくても下段の札をある程度守れる」かにかかっています。感じがあまり早くない選手の場合、下段に札を固めると守り一辺倒になってしまう(そうしないと下段を守れない)ことが多いのですが、それだと逆に敵陣を相手に守られ放題になって逆効果です。そうではなく、自分は自陣敵陣をバランス良く取る中で、相手に自陣下段を攻められていても一定割合は感じの差で守ることができ、逆に敵陣は相手のガードが緩くなって抜けるようになる、という状況を目指したいです。

さいごに

ということで、終盤で自陣下段に札を移動させる典型的な二場面について書きました。これ以外にも下段に札を動かす場面はもちろんありますが、細かくてつまらない話になりそうなので今日のところはここまでにしようと思います。

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