そして消えゆく時を過ごす
息子は無事一歳三ヶ月を迎えようとしている。
保育園には順調に慣れ、6月には流行病による一家全滅の洗礼を浴びながらも、なんとか一学期を乗り越えてきた。
週末やまとまった休みが取れたときには少し遠出もした。
我々親の息抜きに付き合わされるかたちで、息子はいろんな場所を見て、感じて、経験を積ませている…と思いたい。
子どもが遊べる施設にも行って遊んだりもした。
そんな日々のほとんどを、彼は楽しそうにしている。
ありがたいことに好奇心旺盛で、人懐こく、基本的にニコニコしているので、会う人ほとんどに愛想をふりまいている。
ラーメン屋で隣の席になった怖そうなヒゲのおじさんにニコニコ手を振られて、キャッキャと喜んで、さらにおじさんもニコニコ…なんてことも。
巡業で話しかけたお相撲さんにもニコニコ。
遊び場に行けば楽しそうに自由に色々遊んでニコニコ。
かわいいだらけ。
でもなあ、と、ふと思う。
これ、きっとほぼ全部、彼は忘れちゃうんだよなあ、と。
自分だって赤ちゃんのころの記憶はない。
うっすら頑張って思い出せるのは、昔住んでいた家の家具の色とか、
ベビーカーに乗っていた一瞬の時間のことくらいだ。
人に対してどんな振る舞いをして、どんなことをしてもらったかなんて、親の対応すら覚えていない。
こんなに楽しそうにしてるのに、
こんなに色んな経験をしてるのに、
こんなに会う人みんなからかわいいねぇ〜と言われているのに、
みんなから愛を向けられているのに、
大人になったら忘れちゃうんだもんなぁ。
もったいない。
今、彼は「忘れていく時間」を生きている。
覚えていられるのは私たち親だけ。
おそらく人生で一番、無償の愛を受け取れる時間
ボーナスタイムのようなものなのに
覚えていないなんて。
そう思うと寂しい。
将来どうなるかわからないけれど、
今の時点では、
彼が大人になっても、この赤ちゃん時代の話は何度でも語ってあげたいなぁと思ってしまう。
こんなに愛されて育ってるんだもの。
本人は忘れていく時間。
忘れずにいられるのは私たちだけ。
かわいくてかわいくてたまらない赤ちゃんです。
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