表と現アーツプロジェクト2019 リフレクション
今年度も、東京都障害者芸術活動基盤整備事業の補助を受け、東京都内でサポートを行う「支援センター」を受託している愛成会のお手伝いをさせていただくことになりました。これで5年目となります。
特に昨年度の事業ではかなりの情熱を傾けて実施していました。
今年度、コロナ禍においてできることは限られていて、だけど本質を貫き、今東京の福祉の現場において何か必要で何を届けるべきかを設計する前に、昨年度を振り返りたく、去年わたしの書いた記録をまとめてみました。
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表と現は・・・
見方を変えたら『問題行動』ではなく『表現』かもしれない
本人の中から湧き上がる衝動を作品として捉えられたら
普段のコミュニケーションが豊かになるのではないか
既存の社会の中につくられた価値観の枠を超える
そんなことが社会に彼らの表現の中から伝えられるのではないか
支援現場の根源に立ち返り、
目の前にいる人を1人の表現者としてみて
表と現 アーツプロジェクトは
その人から表に現れたコトやモノを
支援者が社会につなぐ活動です。
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〇6月20日 第1回目 実行委員会
2019年度の東京都の事業、表と現アーツプロジェクトは都内で活動する福祉事業所、個人が15人抽選で選ばれ参加しました。
展覧会の開催を協働しながら、様々なことを学ぶプログラムです。
場作りとしてはしっかり設計し、人の関係性を深める仕掛けもしっかり組みました。
皆さんの共通の想いは、障害のある方たちの表現をカタチにし世につなぎたいということ。
学ぼうとする意欲の高い人たちが集まりです。
このことを軸に、展覧会をつくりあげていくプロセスを大事にしています。
photo by Yoshitomo Kumagai
〇8月20日 第二回実行委員会
どんな活動も、つくりあげていくプロセスの中でできていく人との関係性が今につながっていて、離れていても、場を一緒に過ごせていなくても、今の時代を共に生きる仲間、同志という気持ちでいることに意味があります。
特に正解がよくわからない世界で働く現場の人たちにとって、同じ志をもった人たちとの出会いは本当に貴重で、毎日を豊かに過ごす糧となります。
この間、きっと現場でまたいろんなことがあったと思いますが、それも持ち寄って、明日の最後にはまた希望をいっぱい持ち帰ってもらえるように場をつくています。
photo by Yoshitomo Kumagai
〇10月17日 第三回実行委員会
主催の愛成会のスタッフたちと外部の私たちが、丁寧に参加者との関係性をつくりながら、皆さんが現場で大事にしていること、伝えたいことを、一緒に創り上げていくことにエネルギーを注ぎ、ここまできました。
プロジェクトを進めていくときに起こる行き違いや、イレギュラーなハプニングもありつつも、この場に居合わせた人たちの集合体に1つの魂を感じる。
0からどう紡ぎだせるのか、伝えたいことが伝わるのか。今年は本当に手間かかるけれど、本質を外さない進め方で持ち越してきました。
本番前、福祉の現場職員ですべてをキュレーションするイメージは、かなりゴリゴリ推し進めつつも、やっぱりオーケストラの指揮者ではなく、お互いが自律した関係でスキルを持ち寄った人たちが奏でるセッションでありたいと願う。
photo by Yoshitomo Kumagai
photo by Yoshitomo Kumagai
企業研修をしてる仲間と、組織の中で『パターンを崩す』ことが必要なんだと話していたのですが、この話は福祉の現場でもやっぱり相当必要なコトかと思います。自分の常識とか視野と感覚とは違う人たちとのコミュニケーションをどれだけいろんな角度から見て感じていけるかということは、どんな分野にも必要な考えです。
福祉の現場から、今社会に必要と思われる情報を、こうした場からも発信していかなくてはならないと、思いながら、この場を設計していきます。
photo by Yoshitomo Kumagai
〇11月20日 展示準備
今日は品川の会場で、表と現実行委員会の皆さんと楽しく展示の準備。
自分の事業所の作品だけじゃなく、チームでエリアごとに分けて展示の方法を考える1日。
お互いがそれぞれの作品に興味を持ち、その背景を聞きながら、笑いあって、感激しあって、時間が過ぎた。
例えば、普段、何をしても評価されない、何もできないと思われる子が褒められる機会になることがある。
それがお母さんにとっても、この子が褒められる機会を持つ。
何か、そうして作品を介して生まれる前向きなコミュニケーション。
そこに実は大きな意味がある。それがほとんどの作品の背景に潜んでいる。
そんなことが、支援者にとっても自分自身の自己覚知にもなるのだろうと思う。
それがお客さんにも連鎖するといいなと思う。
ここまで来るのに、愛成のスタッフを泣かすいきおいで、中間支援の私たちも本気で本物を作り上げようと、部活のように燃えて盛り上げてきた(笑)
この質感が今日は主催の都の職員さんにも伝わってることがわかってちょっと安心した。
明日は展示を仕上げて、2日目の公開、実行委員会でどんなパフォーマンスをするか練り上げる。
作品の裏側にある現場の本当のコト。みんなに語ってもらい、贅沢に作品を楽しんでもらえるような仕掛けにしようと思う。
実行委員会のこのスキルの高さ、ネットワークの強さ、愛成会のスタッフのプロ意識。
この表と現は3年かけて熟成しつつある。
東京を舞台に、福祉の真の尊さを表現するぞ
〇11月22日 展示準備
人と育ちあう場は、言葉でのやり取りと、実際に同じ目的で何かを協働することがかかせないものと思います。
きのうとおととい、展覧会を開くという目的で東京の福祉に携わる人たちが1つの空間をつくりあげました。
このプロセスの中にあるのは、人と関わりあう方法と心地よさではないかと思います。
それが課題解決する力だったり、何かを生み出すというスキルにつながるのではないかと。
手間がかかる、時間がかかることではあるけれど、ここのところに価値があることを知っているので、関係性の文脈だけは手を抜きたくない。
次世代リーダーの人材育成にも関わってるけれども研修ではなくて、こうしたカタチが意図したら一番のプログラムになるかもしれない。
そして、役割として、ディレクターでもなく、先生でもなく、コーディネーターでもなく、私がファシリテーターであることも実感します。
それからワークショップデザイナーとしては、場づくりもおろそかに絶対にしたくない。
それが展覧会の会場や、イベント会場にも表れていくのだということを感じました。
今回も、キャプションはデザイナーの星野哲也さん、ライターは山本梓さん、さっきまでこのためにやり取りが事務局と続いていたわけだけど、この2人のおかげでちゃんと展覧会にしあがった。
小さな展覧会ではあるけれど、事務局と、実行委員の愛情で、実の詰まった会場ができたのではないかと思う。
今日から3日間は障害のあるメンバーが実演をしたり、会場案内をしたりもする予定。
どんな出会いがあるのか楽しみ。
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肌の色は肌色でなければダメ。
ちゃんと勉強が普通にできないとダメ。
あるようなないような社会のシステムになんとなくハマっていないとならないと、真綿で首を締められ、子どもに手が出たり、不安で孤独で生きづらい大人。
根本的に変革が必要なことにはリーチしづらく、補填される支援。
うちにおいでよ、私も同じだからわかるよ、いいよ、それ、いいね!
そんな場が、小さく身近にあると、こんなに楽になれるんだ
そんな実践をしている場から、作品が届いてる.
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「なんか、福祉とか関係ないと思っていたけど、こんなに笑わせてくれるコトってすごくイケてるよね」
そういう繋ぎ目をつくる可能性があるかも
11月23日~25日 表と現アーツプロジェクト「自由っていいな」展開催
〇11月22日 公開!実行委員会
「障害のある人の表現をどう伝えるか?」という 熱い思いをそのままに、会場で実行委員会を開催 しました。作品の裏側の説明を実行委員から報告してもらいました。
【コミュニケーションの手段】
ご飯を食べない、話をしないメンバーの方と、献立表に好きな食べ物を書き込むコミュニケーションから段々とご飯を食べるようになったり、いろいろなことがスムーズにやり取りできるようになった。
【ほめてもらいたい】
人に見てもらいたい、感想を言ってもらいたい気持ちがあって、たくさんの作品を描く作家さん。インスタグラムを使って発信していたり・・・。
【もっと信じてあげてほしい】
普段は怒られてばかりの子が、はく製の鳥を見て、死んでかわいそう・・・という想いを持って時間をかけて描き続けてできた作品。問題行動といわれるのは、周りに余裕がないから見守れないことで引き起こされてるじゃないかと。
【人とつながる】
いつも自分を過小評価してしまう方が書くエッセイを、社会につなげる何かにしたいとスタッフが考え、質問を投げかけてそれにこたえてもらった言葉を展示した作品。洞察力が鋭く、哲学的。そのすごさをしっかり評価してもらえる形として考えられた作品。
【みつける】
この方の好きなことはなんだろう。片手はマヒがあって使えないので、もう片方でできることはなんだろう。
スタッフがよく見て見つけて、どうやったらカタチになるのかサポートする、繰り返し。
【ありのままを受け入れる】
黒しか使わなかった子が、カラフルな色を使って書き出した。それからどんどん表現が生まれ、止まらない勢いでしかもよく書き込んで作品が生まれる。
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点数や結果のために
ゆがんだ常識と呼ばれることに翻弄されて
表現が小さくなってしまう
可能性を広げる
自分の好きなことを追求する
そんなことができる場づくりが
問題も緩和していく
絵を上手に描くことを教える
のではなくて、本人が表現したいことを表現できるように見守る、場を作ること
それが、本人の生きやすさ、見守る人たちの変化につながるのではないか
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今回の実行委員会と会場のつなぎ目が強固になって、社会を動かすムーブメントになるのではないか。と予感させるほど、展覧会の会場で、実行委員会と参加者の話が付きませんでした。
これから『表と現』から社会に発信することがいろいろできるのではないかと予感しました。
障害のある人のエンパワーメント
またはキャッチする人たちの視野を広げること
今、社会にとっても大事な価値観やあり方を
※集合写真の中央にいる小1の千恵ちゃんが作った小さいマイクスタンドを持つマネをみんなでして撮った写真
photo by Yoshitomo Kumagai
〇11月25日 展覧会最終日
3日間開催した『表と現 自由でいいな展』終了。
支援の延長線上にある表現を愛成会の力によって魅せる場ができました。
わたしはこの展覧会の企画に関わって3回目。
今回は特に思ってもみなかったこと3日間のうちに次々に起りました。
東京を舞台にすると、区や市を越えた関係になるため、横断的に社会課題が見えてくる上に、人脈や見識が増えて、解決の糸口が見えてきます。
場も制度を超える変えるつくる。
境目で苦しむ、本人も親も先生も支援者も、あきらめず越境する力を丁寧につながった関係性から紡ぎだそう。
表と現が1つの社会資源のつなぎ目をつくる。
アートを軸にしたソーシャルワーク。
ここで終わらずここでできたコミュニティを未来につなぐ。
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こんなに情熱をこめてつくりあげた展覧会をつくるプロセスを振り返り、今年は場づくりができないかもしれないということが残念でなりません。
そして、ここでつながった人たちやこれからつながる人たちと、何を伝えたいのか、またさらに掘り下げて、自分たちの役割と手段をデザインする機会が設けられるといいのかなと思えました。
今年は根を張る年。あれから社会が大きく変化し、揺さぶられ、見えてきたことがそれぞれにあるはず。その中でまた問いかけよう、誰のために?何のために?。
私は今年もそこにある確かな何かを顕在化させるために、促進役、ファシリテーターとして根っこにあるコトを引き出しますよ。
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