【ネタバレ無し】「隠蔽捜査」シリーズを読んで 〜原理原則を最も重視する警察官僚の物語〜

今野敏さんの人気シリーズ、隠蔽捜査シリーズを文庫版すべてを読みました。

1.隠蔽捜査シリーズとは

「隠蔽捜査」は警察官僚である竜崎伸也が主人公の警察物小説。多くの警察物作品が刑事にスポットライトが当てられて事件解決を目指していきますが、このシリーズはあくまでもキャリア組の警察官僚がどのように事件と関わっていくのかに焦点が当てられています。

一般企業に例えるなら、中間管理職が現場にいる部下たちの意見と本社にいる更に上の上司たちの思惑に板挟みなる。そんな内容になっています。

そこで悩んで胃を痛くするのではなく、原理原則に則り、自信の信念に基づいて行動、そして組織を動かしていくなんとも言えない気持ちよさがある作品です。

現在、文庫では隠蔽捜査8まで出ており、隠蔽捜査3.5や隠蔽捜査5.5を含めると10冊出版されています。まだ文庫化されていませんが、隠蔽捜査9も出版済みです。これから竜崎伸也がどうなっていくのかがとても楽しみです。

2.隠蔽捜査シリーズを読んだ感想

育児関係の記事を頻繁に書いているので、まずはじめに書きますが、竜崎伸也の育児に対する考え方や家庭のあり方については少々古臭さを感じます。ただ、この内容が書かれたのが2000年代なので少々仕方ないのかなあと思います。

仕事面においては管理職ではありませんが、管理職一歩手前で管理職的なことを任されている私はちょっと共感できることが多かったです。

上司の思惑と、実際に業務に当たっている部下たちの思っていることにずれがある、なんてのは日常的に感じています。

また、本編で書かれていた「現場を知らない上司には情報を与えて、信頼関係を築いていけ」という内容は確かにそうだなと思いました。これは私の中ですぐに採用しました。

シリーズ全体を通して、慣例や前例よりも原理原則を重視しろというメッセージが込められています。最近あまり聞かなくなりましたが、忖度なんてもってのほかです。だからこそ、そもそも自分の役割は何なのか、この組織の役割はなんなのか、外からの目をそんなに意識する必要はあるのか、そういった問いかけは常に持っておき、判断に迷ったときの指標にしたいと思いました。

竜崎伸也は「仕事」という言葉を使わない、と小学生の同級生だった同期に指摘されます。これはちょっと格好いいなと思いました。仕事ではなく、自分の役割とかなすべきこととして、仕事に当たれたら感じること、考えることが変わるだろうなと思ったのです。

つまりこの作品は警察物小説、というよりは一種のお仕事小説なんだと思います。

サラリーマンに是非読んでほしいシリーズでした。

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