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業績が大幅拡大でも株価は下落、TCLの業績は偽物なのか?

2021年8月10日、TCLは業績中間発表を実施し、TCLは2021年上半期、懐一杯に儲け営業収入743.0億元(=約1兆3千億円)を実現し、売上は前年同期比153.3%増加した。純利益は前年同期比461.5%増の67.8億元(≒約1,150億円)。一方で、業績発表後でも資本市場は買いに向かわず、株価の反応は落ち着いている。

業績が大きく伸びているのに、TCLはなぜ株価が振るわないのか。業界の周期的な下降の可能性に直面し、TCLの存続の道は何か。

一、業績が大幅拡大しているのに、なぜ株価が振るわないのか。

一般論として、中間発表の業績は悪くないので、株価は株式市場である程度のパフォーマンスを発揮するはずである。TCLの中間発表の業績がこれだけ明るく、一方で同社の株価がさえないのに、市場は同社の中間発表の業績を好感していないのだろうか。

業績に対する姿勢において、株式市場は自社での造血能力によって業績が伸び、かつ造血を継続できる企業を、比較的認めやすい。

業績拡大の要因を見ると、TCLの今回の業績拡大は二輪駆動といえる:

一つはディスプレイパネル業界の景気上昇、自社自身の生産能力の高速成長、製品構造の改善などの要素からの利益だ。同社のディスプレイパネル事業の売上高は前年同期比93.6%増の408億元を実現した。

もう一つは中環半導体を買収した後、中環半導体(002129)の太陽光発電業界での優秀な業績により、同社の半導体材料と太陽光発電の収入と利益が前年同期比大幅に増加した点だ。半導体材料と太陽光発電事業の営業収入が前年同期比104.1%増の176.4億元を実現した。

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(資料:企業決算)


しかし、業績の持続性を見てみると、TCLの業績はディスプレーパネルの循環的な影響を受けやすい体質である。

現在主流のディスプレイパネルはLCD、OLEDだ。TCLのLCDはすでに成熟しているが、OLED技術ではサムスン電子の後塵を拝している。京東方であろうとTCL華星光電であろうと、現在はLCDの生産能力が主である。2011年から現在までの全世界のTFT-LCD売上高は3つの比較的顕著な周期相場を経験した。2019年は周期的な変化の谷間にあり、各企業の収益は惨憺たるものだった。

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2019年末の新型コロナウイルス禍で世界の需給産業チェーンが破壊され、ドライバーICやガラス基板上流の原材料価格が値上がりし、末端におけるパネルの値上げは連鎖反応だった。同時に、感染拡大により、電子機器の旺盛な需要と韓国メーカーのLCD生産能力撤退の期待が生まれた。

今回のパネルサイクルは、値上げ幅が大きく、継続期間が長いという特徴が表れている。TCLの売上高、純利益が高い伸びを示しているのも無理はない。

TCLの売上高、利益が高い成長を維持し続けるのであれば、引き続きサイクルアップの段階になければならない。しかし、過去事例で見ると、パネルサイクルの上昇期間は最長で18カ月程度を維持、その後は頭打ちとなっていることが見て取れる。2019年12月末から現在まで、パネルのアップサイクルは18カ月を超えている。

この重要な時点で、韓国メーカーのLGディスプレイは最近の電話会議でLCD事業を継続することを発表し、すでにテレビパネルの生産ラインの一部をIT機器のLCD生産ラインに転換した。さらに液晶テレビパネルの生産量を半分に減らし、より利益の高い商用と大型製品に集中することを発表した。

一方、8月9日にOmdiaは、2021年第2四半期の大型液晶パネルの暫定的な出荷台数を追跡した結果、前年同期比では増加を続けていたが、前月比では鈍化したとの報告書を発表した。第2四半期は、9インチ以上のタブレット向けディスプレーパネルの出荷台数、出荷面積ともに16%減少した。その他のアプリケーションは出荷増を維持した。

このことから、パネル業界は下半期に需給が均衡した状態になるとみられ、パネル業界は循環的な高値になる可能性があり、TCLの業績高成長は維持が困難になる恐れがあることも、中間発表以降でTCLの株価が低調な理由となっている。

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二、周期性が弱まって、TCLが求める生存の道

業界サイクルの本質は需給関係の変化だ。

近年、LCDディスプレイパネルの需要は比較的安定しているが、そもそもLCDディスプレイパネル業界の周期性は主に生産能力供給の変化によるものである。パネル業界は資本集約型の業界で、生産能力の投資額が大きく、建設期間が長いため、生産能力が一部の年に集中的に放出され、市場の供給が需要を上回ることになる。こうした周期性が、世界のパネルメーカーの競争激化と低利益を招いている。

1、TCLの今後の業績拡大の主な推進力は何か。

2、TCLは中環株の約30.24%を直接・間接的に保有しているが、今後どのような影響を受けるのか。

3、LCDの生産能力が中国大陸のメーカーに徐々に集まってきており、TCLにどのような機会をもたらしているのか?

以上の問題の答えは、別の機会に語りたいと思う。


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