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新「ポーの一族」と人間の愛その3

(注意:現在連載中の「ポーの一族 青のパンドラ」のネタバレがあります)

前回、新「ポーの一族」における重要なポイントとして

・過去に人間を殺したという罪悪感
・「ピュア」「無垢」への憧れ
・「子ども」を産むこと

の三点を挙げました

今日、月刊「flowers」9月号が発売され、「青のパンドラ」の続きが掲載されました。この号が出たら何か書こうと待っていたのですが、この三点に関しても「人間の愛」に関しても、とくに新しい展開はありませんでした

しいて挙げるなら、吸血鬼は相手の記憶を操作できるという新しい設定が付け加わったくらいですかね
ひょっとして、アランもだけどエドガーの記憶も消えてしまうのでしょうか?それくらい強力な何かがないと、「殺人の記憶」の処置に困ってしまうということなのかな?アランとエドガーがお互いのことを忘れてしまうという展開はいろんな面倒ごとを避けられるため、いかにもありそうです

しかし、「空間移動」もそうですが、そんなことできるんだったら旧ポーで使えばよかったのにという「新設定」が多すぎでは?
メリーベルの最期を読み返すたびに「ああああ!テレポートすれば助かったのに!」って思わせられるのって、物語としていかがなものかと思うのですが……

「青のパンドラ」の続きは二か月後の「flowers」11月号に載る予定ですが、その前の「flowers」10月号で萩尾さんと田村由美さんの対談が、田村由美デビュー40周年ということで行われるようです。次号予告に

ついに実現! 田村由美×萩尾望都 プレミアムトーク 大人気作家2人が対談! まんが家生活の秘訣や作品秘話も!?

月刊「flowers」2023年9月号

と書いてあります。この「ついに実現!」の「ついに」という言葉を深読みしたくなるのですが、実は私、萩尾さんは田村由美さんのことがあまりお好きでないのかと思ってました。更紗という主人公が田村由美さんの「BASARA」に出てくるのですが、これを萩尾さんが知らなかったようですし、萩尾さんの「私の少女マンガ講義」(新潮社)でも田村由美さんは取り上げられてません。ただし、文庫本化された時点で【追記】として名前だけは挙げています。竹宮さんや三原順さんの名前も同様に、文庫本で名前だけ追記されてます。山田ミネコさんの名前も追記で書かれていますが、佐藤史生さんの名前はなぜか追記ですら載っていませんでした

一応2014年のフラワーコミックス40周年の萩尾さんのトークショーでは、田村由美さんが赤い花束を萩尾さんに渡していたそうなので、交流が全くないわけではないと思いますが……

「プチフラワー」創刊号には萩尾さんの「訪問者」が100ページで掲載され、以後、この雑誌の看板はずっと萩尾さんだったというのは、誰もが認めることだと思うのですが、「プチフラワー」は「残酷な神が支配する」連載が終わった翌年の2002年3月に終わり、翌月から「flowers」にリニューアルされます。当時のことに詳しくないのですが、まるで「残酷な神が支配する」が終わるのを待って、「プチフラワー」が廃刊され、「flowers」が創刊されたという印象を受けてしまいます

しかし、その「flowers」創刊号には萩尾さんの作品はありません。表紙を検索して調べたのですが、「残酷な神が支配する」の図書カードが全員サービスでもらえたようで萩尾さんの名前は載っていました。それと竹宮さんも何か描いていたようで、意外でした。
「別冊少女コミック」で既に「7SEEDS」を連載していた田村由美さんは、創刊号から「flowers」へ移籍して「7SEEDS」を描いてます。現在も「ミステリと言う勿れ」が2023年1月時点で累計発行部数1800万部だそうで。
そういうわけで、「flowers」は田村由美さんが看板の雑誌と言えるのではないでしょうか。もちろん、他の有名な漫画家さんたちもいるのですが、誰か一人選ぶとしたら、創刊号から一貫して「flowers」を支えてきた(コミックスの売上的にも)田村由美さんということになると思います。吉田秋生さんもその点で重要人物ですが、あの人は4ヶ月に一回ほどしか描かないので……

そして、萩尾さんが「flowers」に関わり始めるのは、2002年9月号の「バルバラ異界」連載からということになります

ということで、萩尾さんは田村由美さんに看板の地位を奪われて面白くなかったんじゃないか?と勝手に想像してました

対談にあたって、萩尾さんはいつものように田村由美作品を何冊か読み込んでくるんでしょうかね?萩尾さんが何を語るのかちょっと楽しみです
田村由美さんのほうは、コミックスのあとがきなど読むと、ちょっとやりすぎでは?と思えるほど謙虚な姿勢の人なので、おそらく大して面白いことは言わないでしょう。でもこの人は実に興味深い人なんですよ。私は失礼だけど「化けもの」という表現がぴったりだと思ってます

5chの噂ですが、あれだけ連載を同時に持っていたのに、なんとアシスタントがいないらしいですよ?それを聞いてから、田村由美さんのカラー表紙絵など見ていると、なんだか疲れを感じるようになりました
「7SEEDS」を読んでも「ミステリと言う勿れ」を読んでも、田村由美さんがとても賢い人だというのはうかがえるのですが、田村由美さんの底知れぬ不気味なほどの才能は「イロメン」を読んだ時に強く感じましたね。なんであんなテーマで描こうと思ったのか?まずそこが常人とは思えないし、あんなテーマで描こうと思っても、あんなテーマで何作も続けて描けるものだろうか?などなど。これも読んでいて情報量が多すぎて少々疲れるマンガでした。知人に常になにか軽い情報に触れていないと、思考しすぎてしまうため、スマホが欠かせないという人がいるのですが、田村由美さんにも似たような資質を感じてしまい、勝手にこの人は大丈夫なんだろうか?と心配してます

とりあえず来月号の対談を読んだら感想を書く予定です

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