(「花に染む」のネタバレ全開です)
「花に染む」は一言でいうと「異常なマンガ」です。
というのも、これは「読解パズル」とでも言うべき構造になってるんです
どういうことかというと、まず、マンガ内に散らばっているいろんな描写から、一定の法則を導き出し、そして次にはその法則を曖昧な部分に当てはめて、登場人物の心情を読みとるんです。そうやって初めて、登場人物が何を考えてなぜそのような行動をしたのか理解できるというマンガとなっているのです
これ、多分、小説などの文字だけの媒体では無理なんじゃないかな?
マンガだからこそ成し得たのでしょうが、まあ、だからってこんな酔狂なこと考える人はくらもちさんくらいしかいないんじゃないでしょうか
けれど、「花に染む」には、「この作品は読解パズルですから、皆さん頑張って解いてくださいね」なんてどこにも書かれてないんですよ。普通の読者が手に取って読んだ時、「ふむふむ、なるほど、これは謎解きなのね」なんて思いつくわけないんですよ。そんなことは私にだって無理です
私が「花に染む」を読み解く(この言葉好きじゃないんですが)ことができたのは、ひとえに、連載を追っていたことと、5ちゃんねるのくらもちスレに常駐していたことに尽きます(まあ、くらもちスレでは頭のおかしい人扱いされましたが)。
それと、もう一つ理由があって、「花に染む」の前身である「駅から5分」、これがあるカラクリの含まれた作品だった、というか本来、そうなるはずだった作品なんですよ。くらもちさんは途中でやめちゃったみたいですが。
その流れもあって、当然のように私は「花に染む」も謎解きする気満々で読んでいたわけです(笑)
これが、仮に「花に染む」のことを全然知らなくて、いきなり単行本を全巻渡されて、はい、これがくらもちさんの新作!って言われて一気にまとめて読んだとしたら、「なにこれ?どうしちゃったのくらもちさん。雰囲気はいいけど、こんなスカスカで意味不明の作品を描く人じゃなかったのに……」くらいのことは思ってたでしょうね
というわけで、「花に染む」を一から解説しようかとも思ったのですが、やっぱり昔のテンションの高かった頃の自分が書いたものが一番優れていると思うので、私の書いたAmazonレビューを貼り付けることにしました
まずは最終巻の8巻のレビューから
ふぅ~、コピペは楽でいいですね
「花に染む」はその後、手塚治虫文化賞の第21回マンガ大賞を受賞することになるのですが、審査員の方々は、おそらく「花に染む」が読解パズルだということをわかって、大賞に決めたと思うんですよ。そうでなければ、あの作品を大賞にしようとは考えないでしょうから
ただ、くらもちさんは「花に染む」が読解パズルだとはあまりアピールしたくなかったようです。それは5ちゃんねるで、花乃派と楼良派の対立があまりに酷かったからでしょう(まあ楼良派はほとんど私一人のようなものでしたけど)。読解パズルなんて主張してたのは私だけなので、自動的に陽大の恋の相手は楼良ということになってしまいますから。
私はべつに陽大が誰と恋しようがどうでも良かったし、パズルを解いた結果が楼良ってだけのことだし、むしろ、陽大と恋人同士になるなんて罰ゲームでしかないとすら思っていたのですが、花乃派の一部の勢いはすさまじかったですね。
そういった心情がほとんど理解できない私は、知人に「マクロスF」の対立の話を聞いて、へえ、そういうものなのかーと驚いたことを覚えてます
でも、「花に染む」の真価が多くの人に伝わらないのはとても残念なことなので、こんな風にnoteにも書いちゃってるわけですが、私は「花に染む」をくらもちさんのマンガで「おすすめ」には挙げません。だって、あまりに規格外ですから(笑)