地に足をつける

以前読んだ、湊かなえさんの『夜行観覧車』に出てくる「坂道病」。
他人事ではないと、とても心に突き刺さったものの、読んだ後モヤモヤが残ったので、なんでモヤモヤするのか、その理由を探りたいと思います。

■坂道病とは

まず、「坂道病」というのは、『夜行観覧車』に出てくる、以下のような症状の架空の病気です。

「普通の感覚を持った人がおかしなところで無理して過ごしていると、だんだん足元が傾いてるように思えてくるんだよ。
精一杯踏んばらなきゃ、転がり落ちてしまう。でもそうやって意識すればするほど、坂の傾斜はどんどんひどくなっていて・・・」

そういえば、自分自身が過去に心が折れた時も同じような感覚だったかも、と思い出しました。
当時の状況についてはDATA Saberへの道のり#22~心が折れる瞬間~に書きましたが、あの頃は、「とにかくガムシャラに無理して頑張って、それでもうまくいかないから、もっと無理して頑張って・・・」のループの繰り返し。結局ポキッと折れて、ダウンしてしまいました。

おそらく、無理に頑張りすぎて、気持ち的な踏んばりがきかなくなったのだろう、と今なら分かります。

■グラウンディング

「地に足をつける」ってどういうことだろう?

一度ダウンして以来、「地に足をつける」ということは、自分自身の長年の課題でした。そんなあるとき、知り合いから、「グラウンディング」という考え方を教わります。

グラウンディングとは、ざっくり言うと、心身ともに地に足がつけられている状態のこと。グラウンディングができていれば、どんな時でも目の前のことに集中し、しっかり踏んばることができるそうです。

■まとめ

『夜行観覧車』の最後に、「物語の一周まわって降りた時には、同じ景色が少し変わってみえるんじゃないかしら」というセリフがあります。

人生はらせん階段に例えられる通り、同じ場所をグルグル回っているように思えても、実は、少しづつ上に進んでいるはず。

どんな状況においても、自分を卑下しすぎず、背伸びしすぎず、肩の力を抜いて、目の前のことに取り組み、足の裏で地面を踏んでいる感覚を失わなければ、少なくとも、心が折れるリスクは減るのではないかなと、経験上思います。

大人になると、物理的な身長は伸びないけれど、地に足をつけて目の前のことに取り組んでいれば、精神的に成長していくことはできます。

とにかく、今できなくても焦らないこと。
焦ると、一気に坂道から転がり落ちてしまいます。

・今はできないけれど、自分が成長すれば、そのうちできるかもしれない。
・他の人にお願いしたり、助けを求めればうまくできるかもしれない。
・こんなに成果が出ないなら、そもそもやる意味はないかもしれない。

今だけを見ていると辛くなることもあると思いますが、こうやって視点を変えたり、発想を切り替えたりすることで、メンタルをやられずに、大変な局面を乗り越えることができるはずです。

私自身、仕事においても、子育てにおいても、うまくいかないことは多々あります。それでも、こうした工夫をすることで、なんとか踏んばることができています。

今、DATA SaberのApprenticeの師匠として、弟子を育てる中で、Apprentice時代には見えていなかったことが、だいぶ見えるようになってきました。
今育てている弟子がDATA Saberになった時、どんな景色が見えているのか、今からとても楽しみです。