大平天国(おおひらてんごく)

フリーランスのコピーライター。コロナ禍の中、「街」や「人」よりも「森」や「キノコ」のへ…

大平天国(おおひらてんごく)

フリーランスのコピーライター。コロナ禍の中、「街」や「人」よりも「森」や「キノコ」のへの愛着の方が増していることに気づき、東京から富士山の麓に引越してしまった。すぐ近くに迫る富士山の雄姿を仰ぎ見ながら、趣味である「音楽」と「キノコ」にまつわる話を中心に書いてみようかと。

最近の記事

ベルファストでヴァン・モリソンを観た

 自分が好んで聞く音楽の多くは「黒人音楽」である。ソウルの沼にハマって以来、若い頃から聞いてきたロックなどの白人音楽からは耳が遠ざかっていった。そんな中で、今でも好きで聞き続けている白人アーティストの代表は女性であればボニー・レイット、男性であればヴァン・モリソンだ。  ヴァンに関して言えば、そのもっさい風体やもっさい声質からか、世界におけるメジャー度と比すれば日本ではあまり人気があるとは思えない。来日していない最後の大物アーティストのような言い方をされることもあるが、 俺様

    • 匂いと音と光と

       今年の5月に、東京から山梨県の富士吉田に移ってきた。マンション暮らしではあるが、ベランダの正面には巨大な富士の山がそびえ、逆方向の窓を開けると裏山が迫っている。  ここのところ戻り梅雨のような雨がつづいていたが、東京にいる頃は、雨が降ったあとには街中に生魚のような臭いが充満することがよくあった。海に近い街ならばまだ理解ができるのであるが、山の手の住宅地でもなぜか生ぐささを感じたものだ。あれは、はたしてどこからやってくる臭気だったのだろうか。  今の住居では雨が止んだあとに窓

      • 沖縄の音

         自分にとって初めての「沖縄体験」は、今から五十年以上前、六歳の頃にまで遡る。東京の杉並に生まれ育った自分が、小学校に入学して最初に仲よくなったクラスの友だちが我喜屋君という沖縄ルーツの子だった。まだその頃の沖縄はアメリカの統治下にあり、我喜屋君の家に遊びに行くと、那覇に住むお婆ちゃんから送られてきたという「琉球切手」を見せてくれた。  そんな琉球/沖縄への親近感があったからだろうか、NHKの「新日本紀行」で沖縄が取り上げられた際に流れてきた音が、十歳になるかどうかの自分の耳

        • ハナビラタケが開くシーズンの扉

           記録的な短さで梅雨が終わってしまった今年。少し早いかとは思ったが、七月の第一週目に森の中を覗きに行ってみた。狙いはハナビラタケである。  シラビソとカラマツが混生する森の中に入り、台風が呼び込んだ雨で湿った地面に目を配りながら、一人気ままに歩いてゆく。木々の狭間を抜けて注ぐ陽の熱が、水蒸気とともに土や落ち葉の匂いを誘い出し針葉樹林内の空間を満たしている。  カラマツの根元を見ると、縮緬のようにクシュクシュとした小さな「花びら」の固まりが地上に姿を表していた。出始めのハナビラ

        ベルファストでヴァン・モリソンを観た