外山滋比古『異本論』の感想
外山さんの本は何冊か読んでいるのですが、文章は平易で読みやすく、内容も凝縮されているので書き手として本当に素晴らしいなと思っています。
しかも文庫はとても安い!(580+税)
さて内容は、仮にも大学の文学部で研究をしていた私にとっては耳が痛いというか、よくぞ言ってくれたというものでした。
ごく軽い気持ちで読んだ本が思いがけなくおもしろい。こんなにおもしろいのなら、すこし本格的に調べてみようか、論文でも書いてみるか、と考える。ところが、そういうふうに構えると、とたんに、それまで感じられたおもしろさがどこかへ消えうせてしまう。(『異本論』筑摩書房、2010。7頁)
「わかるー!」と心の中で叫びました。私は哲学が好きで大学に入ったはずなのに、レポートのために読む本はちっとも面白くないのです。でもレポート期間がおわって好きな哲学書を読み始めるとやはり面白い。なぜなのだろうというモヤモヤが晴れた気になりました。
本書を通じて語られるのは「異本」という現象です。本は読んだ人が各々勝手に解釈して、作者の意図とは違う「異本」になってしまいます。それを嫌い、作者の方へ遡って解釈しようというのが大学等でおこなわれる研究です。しかし外山さんは、「異本」こそが文学の命なのだと語るのです。
私はこの本を読んで、もっと気楽に本を読み、語り合ってもいいんだと勇気づけられました。
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