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不審者対応訓練4/9-茫然自失-

セキュリティ会社の二人が出ていった後も私たち三人は茫然自失のような状態で押し黙っていた。
三人ともが“何もできなかった”という現実にしばらく打ちのめされていたが最初に口を開いたのは佐藤だった。

佐藤:「いやぁ…怖かったね。」

高橋:「わかる!すげぇこわかった!何なのあいつブツブツ言いながらためらいなく刺してきたぞ!」

佐藤:「不審者って大声で暴れてるイメージだったから最初マジで意味わからんかったわぁ。」

私:「お前らいきなり刺されてたなwww佐藤なんかついでみたいに刺されてたしよぉwww」

高橋・佐藤:「wwwwwwww」

私:「俺はまぁまぁ善戦したけどね刺されてなかったし」

高橋:「いや俺が見た感じ二回は確実に刺されてたぞwあと『ぐぇーやられた』って言ってたぞお前www何だよ『ぐぇーやられた』ってよぉwww」

私:「やめろやwww」

佐藤:「でもああいう時ってまじでどうしたらよかったんかなぁ~難かしいわぁ~」

三人は佐藤の「怖かったね」をかわきりに堰をきったように三者三様に感想を言い合った。どこか遠くから聞こえてくる「不審者だーっ」「さすまたーっ」という声を聞きながら明るく楽しく笑いながらほんの数分前の惨状を振り返った。

何もできなかった自分達の言い訳をするように、不甲斐なさを隠すように。

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