天災が生じた場合の労務管理について2

昨日書きました災害時の労務管理についての続きです。

災害時の対応として仮に自宅待機させるとして、では、それはどのように対応するべきなのか?が問題になるかと思います。いつ自宅待機を決定し、どのように通知するのか?についてですね。
今回の台風被害のように、前日からJRの計画運休が決まっている場合は、前日中に決定して前日の退社時間前に通知するのがベターだと思います。公共交通機関が動かないことが確定している状況で、無理に出社させるのは適切な対応とは言い難いと思います。前日のうちに交通状況が判明しない場合であっても、一番会社から遠い場所に住んでいる従業員が出勤のために家を出る時間までには決定をして通知をする必要があります。まだ状況が確定しない状態であっても、午前中には台風が到来するのであれば出勤させない方が望ましいでしょう。
前日から会社の近くのホテル等に宿泊させるのも、当たらせる業務がどこまで緊急性と重要性があるかによって適切かどうかが決まるかと思います。簡単に言えば、災害時の実際に生じた被害への対応に当たらせる場合のみが、その業務に該当すると考えるべきではないかと思います。それ以外の通常業務は一旦中止するべきでしょう。被災しているのはお客様も同様です。また非常事態であることは報道その他で容易にわかることですから、無理に通常と同じ行動を取ろうとはしないことが重要だと思います。
その場合の宿泊費や通常の出勤ルートとは違う方法で出社したための費用は当然に会社が負担するべきものです。もちろん、その方法がベストだったのかどうかの検証は必要かもしれませんが、災害時に出勤・対応してくれる従業員に負担を強いることがあってはなりません。

朝から台風が到来することが明らかな場合は出社させない対応が可能ですが、すでに出勤する時刻を過ぎてから到来する場合については、退社させるかどうかの判断が必要となります。むしろ、こちらの方が難しい判断になるのではないかと思います。というのは、無理に退社させることによって却って被害が生じる可能性もあるからです。
もし余裕を持って退社させることが可能であれば、できるだけ早い時刻に決定をして退社させることが望ましいと思います。その場合には、翌日の出勤についても決定をし通知しておく方がより良いでしょう。しかし、無理に退社させると却って危険な状況である場合は、会社内で待機させる必要があるかもしれません。この場合には従業員が家族に連絡が取れるように配慮することはもちろん必要ですが、待機中の食事や寝具等の提供についても対応が必要となります。また、翌日以降、従業員の家庭の被災状況によっては自宅へ帰す必要がありますので、その対応についても検討する必要があります。
なお、会社にいるからといって定時以降に仕事をさせた場合は当然に時間外労働となりますので、割増賃金の支払いが必要となることを忘れてはなりません。

災害時の対応については、その時になって決めるのではなく日頃からどのように行動するべきなのかを決めて従業員に徹底しておいた方が望ましいです。どういう場合に出社をしないこととするのかの一定の基準を定めて、その基準によって従業員が個々に判断できるようにしておくと、災害時でそれでなくても大変な時の手間暇が少しでも軽減できることになります。
日頃から災害対策をキチンと立てて周知徹底することが重要です。防災訓練の一部として考えるべきことでしょう。

自宅待機させる場合の業務について、リモートワーク(在宅勤務)を考えておく必要があるかもしれません。その場合、会社のパソコン等の持ち出しをどのようにするのかや業務の指揮命令をどのように維持するのかなど、具体的な決定事項が生じてくると思います。普段から社外で業務を行うことが一般化している企業の場合は対応しやすいかもしれませんが、従業員の自宅のネット環境なども含め会社が負担する範囲についても検討する必要が出て来ると思います。
ただ、災害時は従業員本人も被災している可能性があります。自宅にいるからといって業務が行えるとは限りませんので、その場合の対応についても決めておく必要があると思います。会社側の都合だけで全てを押し進めないように注意する必要があります。

日頃から災害時の対応についてキチンとマニュアル化しておくことが望ましいと思います。災害が生じる前に検討しておかれることをお勧めいたします。

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