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食洗器は神ってワケ

引っ越して二か月あまり経った。

いまだに「ここが自分の家だ」という感慨は一切なく、毎日よその土地にお邪魔しているようなよそよそしさを覚えてはいるものの、住み心地に関しては現時点ではすべてにおいて旧居1Kマンションを上回っている。
RTAと揶揄されはしたものの、これでもそれなりに『買ったあと後悔したらどうしよう』『もし後悔しても一生付き合うことになるんだよな』などという不安はあった。
しかしながら、現在のところそれは全て杞憂となっている。もちろん多少の不便さや不満はあれど、目をつむることができる程度に総合評価は大満足だ。

というわけで、引っ越してよかったことと悪かったことを改めて振り返ってみようと思う。


【引っ越してよかったこと】

・広い
まずこれだ。広い。やはり居住空間は広ければ広いほど良いのである。
もちろん快適に感じる広さにも限度はあるが、同じように狭さにも限度というものがある。その点、都会のワンルームというものは人間が快適に生活できる最低限度の狭さを大幅に下回っているのではないかと思えてならない、いや、これは私が地方出身者だから抱く感覚なのかもしれないが。
旧居はおよそ25平米、風呂トイレ別、洋室9帖の1Kだった。これまでの経験上いちばん広い物件だし平均的に見ても都会中心地の賃貸1Kの中ではまあまあ広い方ではある…と思う。ちなみに都会に住んでいたのは職場が近かったから(通勤電車に絶対に乗りたくなかったから)である。都会に引っ越しておよそ10年、ようやく通勤電車にも乗れるようになった。大器晩成もいいところである。まあでも毎日の電車が無理すぎて高校生時代に留年しかけ、担任に「僕が毎朝迎えに行く」とまで言わせてしまったのを思えば、せめて自分くらいは大した進歩であると褒めてやってもいいだろう。えらいっ!
さておき、都会のワンルームが特に狭いと感じるのは占有スペースだけではない。シンクも狭いし押し入れも狭い、とにかく何もかもが狭いのだ。炊飯器を置けば電子レンジが置けず、電子レンジを置けば炊飯器が置けない。常に引き算でものを考え続けなければならず、いつしかそれが無意識にまで浸透しきっていた。よって『買いたいものが買えない』ストレスすら自覚できなくなっていた——と、引っ越した今になって当時を振り返った時に思うのだ。
いや、もちろんね? 20平米の部屋でも快適に暮らす人はきっといるだろうし、私がオタクで地方出身者でなおかつペット飼育者だからそう考えるのであって総意を代弁しているつもりはないのだけれどね? でも都会のマンションの狭さはマジでどうかしてると思う。あの間取りを設定した不動産会社は入居者を人間として見てないんじゃなかろうか。動物だって(少なくとも飼養飼育者は)ケージの最低サイズが法律で定められているんだから人間にも設定すべきだろ。とりあえずシンクが狭いのだけは本当にクソすぎるので幅30cmに満たないサイズのシンクは今後危険シンクとして取り締まって欲しい。それくらいとにかくシンクが広くなってうれしいです。心が豊かになる。

・食洗機
新居にはビルトイン型の食洗機が付いていたのだが、これが非常に、非常に良かった。最高である。
私は家事というものがこの世で最も嫌いである。ちなみにこの世で最も嫌いなものはあと百個はあるがそれはさておき、皿洗いという作業もやはり大嫌いだったのだ。しかし旧居のシンクは幅30cm程度と狭かったので、二食分放置するだけで満杯になる。満杯になった食器を、割れないよう汚れないよう気を付けながら洗っていく作業はとにかく苦痛である。
しかしどうだ。食洗機があれば、ゴミをざっと洗い流して庫内にセットするだけで終わるのだ。とりあえず流して配置、流して配置を繰り返し、食器が溜まったら洗剤を投入して電源を押す。それで終わりなのだ。
私の周りでは食洗機を買ったが使わずに終わったという人がやけに多かったが、個人的には一生食洗機のある生活をしたいくらいもはや手放せない神器と化した。
なお、食器は洗いたくないが、食器を洗う食洗機を長く使うために食洗機は定期的に洗っている。きっとこれが嫌な人たちが、食洗機を使わなくなる人たちになるのだろう。

・安心感
『巣』が出来た、という安心感によって、心に余裕ができたように思う。
もちろんローンの支払いは残っているので、この安心感は健康や経済的な不安と常に薄皮一枚隔てて隣り合わせになっている。だがそれでも、自分だけの居場所が出来た『現在に対する』安心感は大きかった。
健康面でも経済面でも大きなトラブルがなければローンはいずれ返済できるものだし、そうなれば売却するまでこの家はずっと自分の物なのだ。何をしても良い、と思える安心感もかなりプラスに働いている。個人的にはマンションよりも一戸建ての方が所有満足度は高いと感じるので、安心感は段違いである。
あと、安心感と心の余裕ができたことが理由なのか、友人を招くことにもかなり積極的になった。もてなしの才能はまったくないが、友人が快適にダラついてくれているととても達成感がある。たくさんダラついてくれよな。

・チンチラが柱をかじっても平気
最高。


【引っ越して悪かったこと】

・外気温の影響をモロに受ける
雨が降れば寒く、日が昇ると(特に2階が)一気に暑くなる。
最近の建築は技術が発達しているので、新築できちんと考えて建てればたぶんかなり改善されていたのだろうが、いかんせん中古物件である。それでも1階は多少断熱性能がついているようでマシなのだが、2階がとにかくモロである。最高気温24度の晴れの日には27度くらいになったし、2日間雨の続いた後の昨晩はアホほど冷えて毛布を引っ張り出す羽目になった。実家も一軒家ではあるがこんなに影響受けた覚えはないので、もしかしたらこの家の2階がよろしくないのかもしれない。

・外の音が聞こえやすい(特に2階)
また2階か。2階である。1階では聞こえないのに2階だと外の声がわりと聞こえるのである。まあでも昔の家だな、というレベルの音漏れなのでそこまで気にしてはいないが、気になる人は気になるかもしれない。とはいえいずれはもう少し防音断熱できるようリフォーム的なアレをしたいな、と思うくらいにはクリアだ。音は下から上に拡散されるのでこちらの物音は外に(あまり)聞こえていないと信じたいがどうだろうね。

・ご近所の噂の的になっている
単身世帯で一軒家に引越したのだからそりゃ当然そうなる。わかってはいたが、本当に噂の的になっているようで近所の人にやたらと話しかけられる。話しかけて来なくとも視線は感じるし、噂している場面も実際に遭遇した(たまたま聞こえた)。人によってはこれはかなり嫌かもしれないな~と思うので、単身世帯で引っ越すなら基本的にはマンションをおすすめする。
私は他人が噂していようが基本的にどうでもいいので、せいぜい無害な隣人をアピールしていくつもりである。

・町内会がある
町内会、やっぱりある。加入は任意だが、印象を悪くして良いことはないので実質義務みたいなものである。
私の地域はそこまでちゃんとした活動はしていないのでまだ良いが、それでもやっぱり面倒ではある。単身世帯ゆえに役員には絶対なれないので、せいぜい適宜金を出したり参加したりしてご機嫌を取るかね。

・なんもねえ
住宅地に越したので当然だが、なーんもねえ。そりゃ都会の中心地と比べるなという話だし、10分歩けば小規模ながらスーパーもコンビニもあるのでそれすらない地域の人に甘えるなとキレられても仕方ないのだが、私とて地方出身者である。徒歩10分は、車で10分より遠いのである。
というわけで車が欲しい。車がなければ地味に不便だが、車さえあればその評価は180度逆転する、そんな立地だ。今は安くて小さめで好みの車がないかな、と物色してはため息をつく日々を送っている。

・病気が怖い
これ。
あまりに怖すぎるので団体信用生命保険の免責期間を終えるタイミングで人間ドックを突っ込んだ。それくらい怖い。自分でも少しびっくりしている、いや、持ち家(ローン)を抱えただけではなくて去年の要検査項目の再検査をすっかり忘れていたのも恐怖心を煽る一因になっているのだが。とにかく平穏無事に暮らしたい吉良吉影と化している。
これに関しては検査結果が出ればひと段落する感情だが、今は怯えて暮らす以外に選択肢がない。早く来月になってくれ。


こうして書き出してみると、メリットは広さ、デメリットは一軒家特有の悩みが多いな。単身世帯で物件購入をお考えの方は特別な理由がない限りマンションの方をおすすめします。でもやっぱり私は上記のデメリットをすべてひっくるめた上で、それでも一軒家で良かったと思っております。一軒家、最高。食洗機も最高。
あとは人間ドック(具体的には胃カメラ)が何事もないと良いのだが。安心、充足感、満足感と恐怖で板挟みになっている今日この頃である。早く楽になりたい。

画像は映える写真を撮ろうとして大失敗したホットドッグです。お前はなぜこの角度での撮影が映えると思ったんだ。いやまあ別の意味では映えてるかもしれねえがよ。
美味しかったです。