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無益さと愛しさ

銘菓かもたまご

人間を含め、あらゆる生物において、自身の内部に発生する情動は嘘偽りのない真実である。
食欲、睡眠欲、性欲といった（有性生殖をおこなう生物における）原始的な欲求はもちろんのこと、命が脅かされた時に生じる恐怖心や敵意や暴力性、もっと文化的なところであれば、喜びや悲しみといった感情だって真実だ。発生した時点で私やあなたの中に”存在する”それは、歪んだ認知であったとしても、間違いなく私やあなたの本質に在る真実だ。

真実なのだが、人間は知性を、知性に伴う理性を獲得するにあたり本能的な察知能力が衰えてしまっている。また、『何に喜ぶのか』は明確でも、『なぜ喜びを覚えるのか』は自覚できないことが多い。なぜ、が判明したところで生命体の生存には何ら関係ないからだろう。
などと胡散臭い言い方をしてしまっているが、要するに、大人になっても自分の知らない自分のことって見つかるよね、という話である。人間は知性と理性を獲得してしまったので単純なことをあれこれゴチャゴチャと考えてしまい本質から遠ざかることがままあるし、そもそも人間以外の生命は『なぜ』などという無駄な思考をしない。たぶん。トライアンドエラーはするだろうけど。
主語をクソデカにせずとも、少なくとも私はとにかく捏ねるタイプである。そして捏ねるくせに頭の出来が特別良いわけでもない。なので未だに、自分の本能的な部分についてをよく知らないままでいる。結局自分の話か。そうです。

今日は古着屋で服を買った。特に理由はないが古着屋はあまり利用したことがなく、かなり久しぶりの買い物である。
だが、今日の買い物で古着屋がかなり気に入った。何より安い。当たり前だが安い。ついつい合計6点ほど買い込んでしまったのに、会計は5千円程度だった。その古着屋の価格帯を考えれば、それでも割高なチョイスをしているくらいである。
それと、面白いのだ。私は面白いものが好きで、これは面白いなと思ったらついつい手を出してしまう。過去にも営業電話をかけてきたカニ漁船のお兄さんの「僕これからお客さんの分のカニ取ってきますんで！」という一言が面白すぎて大量のカニを買ってしまったことがある。これまで、私は古着屋に対し『誰が着るんだよってくらい変な柄の服ばかり売っている』という印象を抱いていたのだが、今回でその印象は『誰が着るんだよってくらい面白い柄の服をたくさん売っている』というものに塗り替えられた。
そう、変なものは面白いのである。面白いものが好きなくせに、そのことに今の今まで気付けなかったおのれをいたく恥じている。インパクトのある派手な柄物シャツを長らく欲していたのだが、古着屋という選択肢を知ったことでかなり解決に近づいた。単色のボトムなどはヨレが目立つこともあるが、派手な柄物は見た目がうるさいおかげで、古着でもボロく見えにくい。尚更好都合なのである。服が好きな友人が古着屋愛を熱弁する時には気付くことができなかったのが悔しいが、やはり実体験でないと学習できないものなのだろう。

面白いものが好きだ。なぜ好きかというと、面白いものを持っていることは無駄だからだ。そしてその無駄さがうれしいからである。
突き詰めて言うなら、私はうれしくなるものが好きらしい。カニの味は好きだがエビの方が味としては好み、でもカニはうれしくなるので総合的にはカニの方が食べたくなる。粒状になったアイスが売りのディッピンドッツも大好きだが、正直味は大したことないし高いしで何なら他のどんなアイスよりも劣るとさえ思っているが、それでも他のどんなアイスよりもディッピンドッツが大好きで見かけるたびに大喜びで買ってしまう。なぜならあの粒状になったアイスがうれしいからだ。うれしさは味を凌駕する。動物園や水族館にあるキッズ向けメニューも最高だ。わりとでかい買い物だったとしてもうれしいかどうかで決めてしまう傾向があって、たとえば今は車を物色しているのだが理性では中古車を格安で買って乗りつぶした方が良いとわかっていても気が付けばFIAT500を眺めていてあれの何が良いって四ツ目なところなのだ。ライトが四つだぞ。そんなにいらん。デザインだけの産物である。だがそれが良

いや、待てよ。
普通に考えて、誰だって好きなものはうれしいものではないか？
なら私の『うれしいものが好き』というのは当たり前のことで、何なら前後関係を間違えてさえいるのではなかろうか。『好きだからうれしい』と表現すべきではないか。そしてそうなると、無駄が好きというのは間違っていないとしても、うれしくなるものが好きという、私の好きの根源は根底から覆ることに……。
あと、うれしいもの・無駄なものが好きだというなら、私のもっとも苦手なものの一つであるイルミネーションだって大好きにならなければ論理的におかしいわけで……。
…………。

画像はうれしいものが詰まった無駄アイスです。
私は無駄なものが好きです。ただイルミネーションは嫌いです。
もうそれでいいです。