Hikaru Ooba

産婦人科専門医。機械学習や因果推論を産婦人科領域に応用する研究を行っています。 発言は…

Hikaru Ooba

産婦人科専門医。機械学習や因果推論を産婦人科領域に応用する研究を行っています。 発言は個人の意見であり組織を代表しません。 My areas of expertise are OB/GYN, artificial intelligence, and data science.

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  • 『医学のための因果推論』のための統計学入門

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はじめまして。 大学病院で臨床医と大学プロジェクトのコーディネーターをしながら、機械学習、因果推論、ベイズ統計などを医療データに応用する研究をしています。 自分が勉強していく中でへーと思ったことや、雑記などをのこし、誰かの役に立てばいいなと思ってこのnoteを始めました。 プロフィールはうちの猫です。どん兵衛って言います。 個別の医学相談などは受けていません。あしからず。 略歴名古屋市立大学医学部卒業後、福山医療センターでの初期研修を修了し、中国中央病院、岩国医療センターを

    • 『医学のための因果推論』のための統計学入門:10.正規線型モデル

      『医学のための因果推論Ⅰ 一般化線形モデル』を勉強した時のまとめです。 結構難しい本でしたので自分なりの解釈を入れながらまとめました。 ここではベースライン値があるランダム化臨床試験におけるコントロール群の必要性や、共変量調整の意義について説明します。 また残差プロットが非線型によるモデルの誤特定を防ぐために有用であることを示します 正規線型モデルの構造アウトカム変数 $${Y_i \ (i=1, \ldots, N)}$$ が、それぞれ異なる平均を持つ独立な正規分布に従

      • 『医学のための因果推論』のための統計学入門:9.一般化線形モデル

        『医学のための因果推論Ⅰ 一般化線形モデル』を勉強した時のまとめです。 結構難しい本でしたので自分なりの解釈を入れながらまとめました。 一般化線型モデル(GLM)は、分散分析やポアソン回帰などの回帰モデル全般をまとめたものです。 この章では一般化線型モデルを統一的な形式で説明します。 このモデルはパラメトリック分布の一種であるため、大量のデータがあるときには最尤法(最もデータに合ったパラメータを探す方法)を用いることができます。 一般化線型モデルのパラメータは、スコア方程式

        • AI全盛の時代に人間が医療をするということ

          雑記です。 一部でOpenAIのCFOの発言が話題になっていました。 いわく、汎用人工知能(AGI)はそう遠くないとのこと。 以前サム・アルトマンのエッセイも話題になりました。 AIの進化は止まらず、2030年ごろにはAGIが現実になるといわれています。 ChatGPTをはじめとするAI技術が本格的に世の中に実装されてまだ2年ちょっと。 その間にこの世の中は目まぐるしく変わったかというと、市民レベルでは案外何事もなかったかのように回っています。 しかし確実に、AIのなか

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          『医学のための因果推論』のための統計学入門:8.分散分析と回帰分析

          『医学のための因果推論Ⅰ 一般化線形モデル』を勉強した時のまとめです。 結構難しい本でしたので自分なりの解釈を入れながらまとめました。 統計学の基礎である線形回帰と分散分析(ANOVA)は、データ間の関係性を理解し、仮説を検証するための強力なツールです。 しかし、その背後にある数学的な概念やデザイン行列の直交性といった特性は難解です。 本記事は最小二乗法の原理から始め、直交性が統計モデルに与える影響、正規性、一次従属と多重共線性についてまとめます。 線形回帰と分散分析分

          『医学のための因果推論』のための統計学入門:8.分散分析と回帰分析

          『医学のための因果推論』のための統計学入門:7.デザイン行列とコーディング

          『医学のための因果推論Ⅰ 一般化線形モデル』を勉強した時のまとめです。 結構難しい本でしたので自分なりの解釈を入れながらまとめました。 統計モデルは、データの中からパターンを見つけ出し、要因間の関係を理解するための重要なツールです。 気象予報や医学研究など、日常生活の多くの場面で統計モデルが活用されています。 特に一般化線型モデル(Generalized Linear Model; GLM)は多様なデータタイプや状況に適用できる柔軟なモデルとして広く利用されています。 G

          『医学のための因果推論』のための統計学入門:7.デザイン行列とコーディング

          HELLP症候群:臨床的問題と管理【総説】

          少し前にHELLP症候群について調べる必要があった時に訳したものです。 The HELLP syndrome: Clinical issues and management. A Review - BMC Pregnancy and Childbirth アブストラクト背景 HELLP症候群は、溶血、肝酵素上昇、血小板数減少を特徴とする妊娠中の重篤な合併症であり、全妊娠の0.5~0.9%、重症子癇前症症例の10~20%に発症する。 本総説では、発生、診断、合併症、サーベ

          HELLP症候群:臨床的問題と管理【総説】

          『医学のための因果推論』のための統計学入門:6.小標本のための統計手法

          『医学のための因果推論Ⅰ 一般化線形モデル』を勉強した時のまとめです。 結構難しい本でしたので自分なりの解釈を入れながらまとめました。 我々は常に大規模なデータを入手できるわけではありません。 医学の、とくに希少疾患の研究では、対象となる患者数が限られていることがよくあります。 このような状況で、どのように信頼性の高い結論を導き出すことができるでしょうか。 本記事では、小標本(サンプルサイズが小さい場合)のための統計手法についてまとめます。 小標本統計の必要性大標本近似

          『医学のための因果推論』のための統計学入門:6.小標本のための統計手法

          『医学のための因果推論』のための統計学入門:5.仮説検定 ~尤度比検定、 Wald検定、 スコア検定を中心に~

          『医学のための因果推論Ⅰ 一般化線形モデル』を勉強した時のまとめです。 結構難しい本でしたので自分なりの解釈を入れながらまとめました。 私たちは日々様々な意思決定を行っています。 新しい治療法は本当に効果があるのか?広告キャンペーンは売上を増加させたのか?といった問いに答えるためにデータを収集し、分析します。 しかしデータには常にばらつきがあり、完璧な答えを得ることは困難です。 ここで統計的推論、特に仮説検定と信頼区間が重要になります。 コイン投げを10回行い、7回表が出

          『医学のための因果推論』のための統計学入門:5.仮説検定 ~尤度比検定、 Wald検定、 スコア検定を中心に~

          TOLACを試みる妊婦さんの分娩所要時間は、TOLACではない妊婦さんのそれより延長するのか?【論文解説】

          先日、BMC pregnancy & childbirth誌という雑誌に投稿した論文がAcceptされました。 これは産婦人科の臨床系雑誌で、産婦人科ジャンルでは上位25%以内に入る雑誌です。 論文自体はオープンアクセスでどなたでもご覧いただけます。 Ooba H, Maki J, Masuyama H. Evaluating the impact of a trial of labor after cesarean section on labor duration: a

          TOLACを試みる妊婦さんの分娩所要時間は、TOLACではない妊婦さんのそれより延長するのか?【論文解説】

          『医学のための因果推論』のための統計学入門:4.最尤推定

          『医学のための因果推論Ⅰ 一般化線形モデル』を勉強した時のまとめです。 結構難しい本でしたので自分なりの解釈を入れながらまとめました。 最尤推定はデータから母集団のパラメータを推定する強力な手法です。 例えばコインを投げて表が出る確率を推定したいとしたとき、コインを10回投げて7回表が出たとしたら、表が出る確率は7/10=0.7だと推測するでしょう。 これが最尤推定の基本的な考え方です。 しかし現実の問題は多くのパラメータを同時に推定する必要があったり、データの分布が複雑

          『医学のための因果推論』のための統計学入門:4.最尤推定

          『医学のための因果推論』のための統計学入門:3.推定量の評価基準

          『医学のための因果推論Ⅰ 一般化線形モデル』を勉強した時のまとめです。 結構難しい本でしたので自分なりの解釈を入れながらまとめました。 私たちは、日常生活においてつねに推定をしています。 例えば空模様から明日の天気を予想したり、味見をして料理全体の味を想像したりする時、私たちは無意識のうちに推定を行っています。 統計学はこの「推定」をより数学的に扱います。 統計学における推定の重要性は、データから未知の真の値(パラメータ)を導くことにあります。 例えばある国の平均身長を知

          『医学のための因果推論』のための統計学入門:3.推定量の評価基準

          『医学のための因果推論』のための統計学入門:2.最尤推定量と信頼区間

          『医学のための因果推論Ⅰ 一般化線形モデル』を勉強した時のまとめです。 結構難しい本でしたので自分なりの解釈を入れながらまとめました。 統計学の世界において最尤法(さいゆうほう、Maximum Likelihood Estimation, MLE)は、データから母集団のパラメータを推定するための最も重要な手法の一つであり、20世紀初頭にR.A. Fisherによって提唱されたこの方法は現代統計学の礎石となっています。 最尤法の基本的な考え方は「観測されたデータが最も起こりや

          『医学のための因果推論』のための統計学入門:2.最尤推定量と信頼区間

          IPS推定量は何故バイアスを減らすのか

          Inverse Propensity Score (IPS)推定量は因果推論の文脈でよく見ていましたが、傾向スコアの逆数で重みづけを行うことが何故バイアスを減らすことになるのか、ふわっとした理解できちんと理解していませんでした。 『機械学習と因果推論の融合 技術の理論と実践』(齋藤 優太 著)にわかりやすい理由が載っていて目からうろこでしたので、備忘録として記載しておきます。 主な概念平均介入効果 (ATE) 平均介入効果(Average Treatment Effect

          IPS推定量は何故バイアスを減らすのか

          『医学のための因果推論』のための統計学入門:1.確率論と確率分布

          『医学のための因果推論Ⅰ 一般化線形モデル』を勉強した時のまとめです。 結構難しい本でしたので自分なりの解釈を入れながらまとめました。 noteの数式を含む記載の練習も兼ねています 確率変数とデータの表現統計学では、データのばらつきを表現するために「確率変数」という概念を使います。 確率変数はまだ値が決まっていない変数のことで、ある範囲(標本空間)内の値をとり、それぞれの値に対応する確率が決まっています。 表記法 確率変数:大文字(例:$${Y}$$) 実際に観測され

          『医学のための因果推論』のための統計学入門:1.確率論と確率分布