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日常のきらめきを忘れないで

 1週間頑張ったな〜と自分を褒めて心を落ち着ける金曜日の夜。まさに今日が夏至という日でも、もうとっくに陽は落ちていて、それなのに街の光は昼間より眩しいし、暖簾の奥ではたくさんの人がはしゃいでいて、ずっと元気だ。夜は眠るためにやってきているということを忘れそうな、人間という生き物のことを想う。
 繰り返す毎日は螺旋階段のようで、確かに登っているはずなのに、景色が大きく変わらないから、ずっと同じところをぐるぐるしているような気がしてしまう。そんなことを考えて、胸のモヤモヤと焦りに襲われる夜は、本を読む。本は、私がどんなにささくれた気持ちでぶつかっていこうとも、いつも同じ顔で迎え入れてくれる。そして、ここではないどこかに連れて行ってくれる。ひとと違って、私が私のことだけを考えていても、許してくれる。
 目に入ってきた文章をよく噛みながら、味わう。しばらくして、ふと遠くから聴こえてくる音に気づけるようになると、自分の心の波がどれだけおだやかに揺れているかがよく分かる。この瞬間が好きだ。頭の中の邪魔なものが消えて、ほとんど空洞になっていて、ひとつひとつの音や言葉がよく反響する。静かな、私だけの時間。
 色んな音楽、ひととの会話、おいしいごはん、エキサイティング!なアクティビティ…そういうものをとにかくたくさん浴びることで得られる楽しさも魅力的だけど、ひとつのコトからたくさんの感動を見つけられるような、変わらないように見える日々にわくわくを感じられるような、そういう自分でいたいな、と思う。

 おだやかな幸福は明日への希望だ。きらきらした気持ちは、誰かにもらうものではなくて、きっと自分で見つけるもの。日常のきらめきを忘れないでね、わたし。

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