銭湯建築 今井健太郎氏編

銭湯建築から、銭湯に関心をもつ方もいるだろう。
今回は番外編として、人気の新設施設、リニューアル施設を手掛ける今井健太郎氏の仕事と、私の訪問記をもとにリニューアル銭湯について紹介したい。今井氏編と書きつつ、他の方を知らないのだけれど・・
※下記はリニューアルされた新しい順です。


★中野区 えごた湯
2021年8月に「GEO銭湯」をテーマにリニューアル。地球内部に現れたオアシス、あるいは洞窟にある神聖な泉を表現したのだそう。リニューアル前・後ともに訪れたが、同じ地下の施設であることには変わらないものの、照明やレイアウトが一変し、サウナの新規導入により、客層も大きく変化したと思われる。

訪問記録:


★江戸川区 吉野湯
2020年9月にリニューアル。経営されているご家族の雰囲気もよくて、好感の持てるお店。坪庭と縁側があり、そこで駄菓子やクラフトビールをどうぞ、っていうハードとソフト、それを提供するお店の空気感が揃っており、すてき空間をさらにアップさせている。江戸川スタンプラリーでハシゴのタイミングだったけれど、ここはゆっくり再訪したい。

訪問記録:


★八王子市 松の湯
2019年9月に「時をつなげる銭湯」というコンセプトでリニューアル。駅からやや距離があるにもかかわらず、とても利用者が多いのは、リニューアル効果だけではないだろう。経営者のご家族の雰囲気がよくって、コンセプトとピッタリなのだ。炭酸泉も、露天風呂も、そしてサウナも本当に素晴らしくって、ここも間違いなく再訪したい施設の一つだ。

訪問記録:


★渋谷区 改良湯
2018年12月に「渋谷CROSSING」をコンセプトにリニューアル。チャレンジングな取り組みを楽しみにしている店舗だ。オリジナルグッズの販売や、レディースデー実施など、ソフトがすばらしいのはもちろんだが、外観、内観ともに、ここよりも新しいサウナ施設よりも、おそらく新しさを感じられるのではないだろうか。もちろん、軟水のお湯と炭酸泉もいいんだけれどね。

訪問記録:


★大田区 はすぬま温泉
2017年12月に「旅情銭湯」をテーマにリニューアル。昭和じゃなくて、大正でもなくて、いうなれば明治のレトロさを感じられる。当初からある絵付けタイルの保存や、外観のステンドグラスがそれを感じさせるのだろう。なお、訪問時にはまだ大田区は走っていくことのできるエリア、と認知していなかったので、無論電車で訪れました!

訪問記録:


★板橋区 クアパレス藤
2017年12月のリニューアル時のテーマは「テラリウム銭湯」で、入口の大水槽は圧巻で、水、空、木、緑、空気、土といった地球を感じる素材感が表現されているそうだ。男性サイドとの仕切りにのグリーンもいい。先代が亡くなった際、元々お知り合いだった二組のご夫婦で再建し、経営を引き継いだというムネアツな銭湯だ。

訪問記録:


★新宿区 栄湯
2017年10月のリニューアルのテーマは近隣の「哲学堂公園」の四聖=釈迦/孔子/カント/ソクラテスなのだそうで、サ室が特徴的かもしれない。フロント脇には早稲田のサウナ研究会の機関誌もあって、ついつい読んでしまう。その中で、三軒茶屋探訪の出来がよいのだが、個人的には千代の湯を恣意的に外したことに悪意を感じざるを得なかった。

訪問記録:


★町田市 大蔵湯
2016年末のリニューアル時のコンセプトは「共同温泉の外湯」で、スーパー銭湯との差別化が課題で競合店とは逆の方向、シンプルで静かな温浴空間への指向にしたそうだ。光と無音と素材が作り出す静けさ。タイル絵も連子格子(れんじこうし)も、仰ぎ見て心落ちつく内装が素晴らしい。サウナは貸切で、ここでも自分と向き合うことができた。軟水も気持ちよい。

訪問記録:


★新宿区 万年湯
2016年8月に「都会の隠れ湯」のコンセプトでリニューアルオープン。ここは新大久保からほど近くだが、本当に隠れている。山種美術館の陶板の加山又造『千羽鶴』の今にも飛び立ちそうな鶴のモザイク画が美しい。私の母と同年齢の常連さんとの出会いもいい思い出で、私を一目見た時、自分の若い時にそっくりだと思ったのだそうだ。またゆっくり伺いたい。

訪問記録:


★江戸川区 イーストランド
2015年11月に「エキゾチックジャパネスク」をテーマにリニューアル。円柱のモザイクタイル絵や木桶、プラスチック桶の用意なども雰囲気があるし、全てのお湯が軟水で気持ちもよかった。奥の炭酸泉が開けたてのペットボトルの強炭酸水のようで、かなり強くて効き目を感じる。同様に、常連さんもかなり濃く、かなり強いので、訪問時間にご留意を!

訪問記録:


★墨田区 御谷湯
2015年5月に「現代の江戸前銭湯」をテーマにリニューアル。生地の木使いと江戸をイメージするカラーリングが活かされた高層階の銭湯は、坪庭あり、石畳あり、黒湯温泉あり、そして最大の魅力は露天風呂からのスカイツリーの眺め!壁面にはMOA美術館所蔵、尾形光琳作《紅白梅図屏風》がタイル絵で描かれており、圧巻。ここもゆったり再訪したい。

訪問記録:


★目黒区 光明泉
2014年3月に「未来派銭湯」をテーマにリニューアル。とっても人気の混雑銭湯なのだけれど、雰囲気はかつての下町の銭湯のようにも感じられるところが堪らない。次回来るなら露天風呂側の日がいいなあ。サウナもとてもよくってすぐさま汗だくになり、ここの炭酸泉が堪らなくずっと入っていられる。ついつい長居してしまうことうけあいのお風呂だった。

訪問記録:


★板橋区 第一金乗湯
2013年2月に「現代の町家銭湯」をテーマにリニューアル。廃業となった港区「万歳湯」の廃材を脱衣所のロッカーなどに再利用した木造銭湯、浴室背景のペンキ絵は丸山清人氏と中島盛夫氏のダブル絵師による作品など特徴が多い。常連さんで一服中のおじちゃんが昔はサウナがあったと教えてくれたが、現在もにぎにぎしくお客さんに愛されている銭湯でした。

訪問記録:


★文京区 ふくの湯
2011年12月に「ご利益気分な銭湯」をテーマにリニューアル。入れ替え制の「大黒天の湯」「弁財天の湯」をふすま絵や欄間彫刻などの装飾が空間を埋め尽くし、風水を参考にしたカラーリングで彩色されており、ペンキ絵も正面には赤富士、鷹のペンキ絵がややtoo muchのきらいもあるが、おめでたさが勝っているか。半個室のような一人用掛け流し湯船も気持ちがいい。

訪問記録:


★目黒区 文化浴泉
2011年3月に既設部分を再利用しリニューアルオープン。国内唯一だそうなのだが、丸い額縁に縁取られた円形ペンキ絵が面白い。白いナノバブルのお湯や15度の冷感水風呂がとっても気持ちいい。地元のお客さんも多そうだが、都心なので一見の人も多いのだろう、サ室内は特に前者のお客さんのマナーが極めて低いのだが、お近くに寄られたら行ってみてもいいのでは?

訪問記録:


★目黒区 千代の湯
2010年1月にリニューアルした、軟水や炭酸泉が推しの銭湯。浴場正面の丸山清人さんの富士山の青々としたペンキ絵がすばらしい。なお男湯サイドは、中島盛夫さんのペンキ絵で、お二人のコラボレーションなのだそう。炭酸泉は壁に包まれお籠り感があり、いつまでも入っていられそうな炭酸泉と水風呂との温冷交互浴がおすすめだ。

訪問記録:


★品川区 戸越銀座温泉
2007年4月に「新古」をテーマにリニューアル。古典的銭湯に見られるペンキ絵の作風や配置位置、内装のタイルやガラスといった素材ミックスも面白い。日替わりで2種類の浴室を楽しめ、「月の湯」の天然黒湯温泉、露天の薬湯風呂、水風呂、コンフォートサウナ、「陽の湯」の軟水炭酸泉、露天の黒湯風呂、遠赤外線サウナと両方経験してみたい。 

訪問記録:


★足立区 大平湯
2001年8月に「常識を打ち破る銭湯」をテーマに、今井氏が最初に手がけた「デザイナーズ銭湯」のパイオニアだ。「銭湯業界はあらゆる意味でマンネリ化している。他の店には無い発想の銭湯を設計してほしい」という依頼だったそうだ。奥の歩行浴、さらに奥のジェットが32度で心地よかった。常連さんを集めた新年会の実施など、ハードだけでなくソフトも充実している。

訪問記録:


今日現在、今井さんのお風呂17軒のようで、「吉野湯」「八王子松の湯」「改良湯」「大蔵湯」「万年湯」「イーストランド」「光明泉」(露天サイドが女湯の日に)「第一金乗湯」「戸越銀座温泉」「大平湯」は再訪したい銭湯たち。
今井さん建築が徐々に増えていくと、さらに銭湯ファンが増えるかもしれないですね!ぜひ気になる建築の銭湯、行ってみてください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?