見出し画像

農機具列伝:耕す

どんなに農業が大型化、機械化されても農家には必ず鍬(クワ)が置いてあります。機械では耕し切れない細かな修正や圃場周辺の水路や畔の修繕にも鍬は大活躍します。我が家にも10本以上ありました。それらは微妙に異なった形状でした。
 鍬の進化は地域毎に偶発的&同時多発的、ときに先祖帰りを重ねて今に至ることをご存知でしょうか。昔は村毎に鍛冶屋がいて、少しずつ異なる鍬がありました。それらが離合集散しています。
 先端が平たい鍬でも、土の柔らかい土地では、やや幅広なもの。逆に乾くとゴリゴリの粘土質地域では、幅は狭く歯圧で重みのあるものが利用されてきました。さらに、歯が細く重く厚くなるとタケノコ専用の鍬に。多湿で水田のような土の塊ができやすい圃場では、櫛のような細い歯が3~4本ついた鍬(備中鍬)を用います。そしてトラクターで耕運する際に回転する「ロータリー」。回転しているたくさんの歯は鍬の形状を模しています。鍬というシンプルな道具は、千変万化で農業発展の中心に存在し続けます。  

●杉山貴文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?