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現前にある身体性の強さー「源氏物語 よみがえった女房装束の美」

丸紅本社に併設する丸紅ギャラリーで、今日まで展示されていた「源氏物語 よみがえった女房装束の美」最終日にすべりこんできた。繊維問屋からはじまった歴史もあり、着物や衣装中心の展示が特徴的だ。(和装で来館の場合は無料観覧できる)

はっとさせられる、「若菜」での色鮮やかな装束の数々。日頃、鬱々としたニュースでなんとなく周りの色が灰色に近いモノトーンに見えていたことに気づかされた。唐衣から袴まで、重ねて着ている様子が忠実に再現されていた。今はMS officeなどで多様な色・名称があることがわかるが、草木からこのようにいろいろな濃淡ができることに改めて驚嘆した。鮮やかであるけれども、目に優しい。TPOはもちろん、自分に合った組み合わせをわいわいと女房達と相談して選んでいたのだろう。

情報収集でSNSを見ることが多くなっていたが、知らず知らずのうちに周りの風景も色あせ、暗くなっていく気がしたこの1年だった。メールも電話もSNSももちろんなかった千年前、草木から色を染め出し、文様を考案し反物として現前に広がる光景は忘れられなかったに違いない。しなやかで力強い、永遠かのような生命力を感じ取った。強さはマウント取ることでも、筋肉量を誇ることでも、財力や武力ではなく、根を張り他者や神羅万象とのつながりをもって次へいのちを紡いでいくことなのではないだろうか。殺し合いが起こっている今だからこそ、静かにながら力強さを発することの確かさを、私たちは学ぶべきだ。

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