e-温泉マイスター 安楽温泉
e-温泉マイスター 飯野香穂
安楽温泉は、海から山間部へ広がる鹿児島県霧島温泉郷の中ほどに位置する。
天降川沿いの渓谷が美しい場所にあるこの安楽温泉は、一説では霧島温泉郷の中でも最も歴史の古い温泉と言われる湯治場で、現在は4つの宿がある。
ここでは、その中でも私の好きな「鶴之湯」について記したい。
一番下流にあるこちらの施設。玄関を入り、浴場へは階段を下りていく。
川沿いの源泉に近いところに湯船を配されている。
注がれているお湯は少しだけ茶緑褐色に濁っており、湯の淵は、赤茶けた錆色で元の色がわからないほどに染まっている。さらに湯口は、ハリネズミのように石灰華を蓄え、なんともいえない造形を呈す。
泉質は「ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉」。
重曹の成分を多く含みながらも、カルシウムなどのイオンも多く含まれているため、このような色や造形が生み出されているのだろう。鉄イオンも含まれているからか、やや錆のような香りがある。
つるりともしない、かといってきしむ感じもない、なんとも言えない「ちょうど良い」浴感。
さっぱりとした湯上りで清涼感があるので、夏にもお勧めしたい温泉だ。
温泉に浸かりながら天降川の美しい景色を拝み、霧島裂罅水(キリシマレッカスイ:冷たく美しい地下水)の水風呂に入り、そしてまた温泉・・・。そうしていつも、ついついゆっくりした入浴時間を楽しんでしまうのだ。
こちらの施設、飲泉もある。泉温が高いのに、何故か「しゅわ」っとした飲み心地がある。二酸化炭素が400mg/kg程度。これがその理由なのかどうかは判らないが、重曹の甘み、ほんのり錆の金属味、何とも言えない味の温泉。
こちらの温泉を汲み帰り、これで炊飯をすると、黄色っぽいご飯が炊きあがる。これが実に美味!安楽温泉の4つのお宿のそれぞれで炊いたご飯で握ったおにぎりをいただいたことがあるのだが、どれも違っていて、それぞれに美味でそれぞれにお薦め。
こうして記していると、今にも行きたく入りたくなってしまう、
私にとっては思い出の温泉地であり、とても好きな温泉である。
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