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地球のはなし 大分の住吉川

 15年以上も昔のことになったが、昭和62年発行『大分市史自然編』の「ふるさとの水と温泉」の執筆を担当した。今から振り返れば、バブル経済のピークにさしかかろうとする時期で、それ以前から続いてきた高度経済成長の負の面、特に自然環境の劣化が顕在化し、環境の保全や改善への認識がようやく高まりつつあったころと思う。

 大分市内を貫く2つの一級河川、大野川と大分川の水質は、昭和40年代末頃には、有機汚濁指標であるBODの分類ではB類型であったものが、50年代にはA類型へと改善されていた。しかし、市街地を流れ、したがって市民の日常生活により深く関わりあっている二級河川の水質は、生活排水の流入のため、あまりよい状態ではなかったのである。

 そのことを、大分市民にはなじみの深い住吉川を例にとって述べた。水質は最も悪いE類型の基準値をかなり超えていたし、川の中にはあちこちにごみが捨てられていた。そんなわけで住吉川のことは気になっていたのだが、その後は見に行く機会もほとんどないままに、年月が過ぎてしまった。

 この間、本紙「ひと」の欄に住吉川浄化対策協議会の活動が紹介されていて、この川の状態が改善に向かっていることを知った。かつての情けない状態を書いた者としては、大分市民ではないけれども、大いに嬉しい。
                            (2003.7.19)

別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。

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