見出し画像

地球のはなし 忘煙

 公共の場での全面禁煙が進んでいる中、7月1日からは、たばこ税の増税を機に、小売価格も値上げされるとのこと。喫煙者のつらさはますます大きくなるようだ。などと書くと、数ヶ月前までの私を知っている人の中には、なにを他人ごとみたいなことを、と思われる向きがあるかもしれない。というのは、私は半世紀近くタバコを吸い続けてきた、いわゆる愛煙家だからだ。近年の銘柄は、ニコチンもタールも多いハイライト一辺倒。以前より量は減っていたものの、ヘビースモーカーの類であった。

日本専売公社 ハイライト

 量が減っていた、あるいは、減らさざるを得なかったのは、喫煙に対する世間の風当たりが強くなったからである。具体的には、肩身が狭いという心理的要因も無いではなかったが、喫煙場所が少なくなったという現実が大きかった。

 そんな風だったところに、年末から孫たちと一緒に生活する機会が断続的にあって、子供がいるところでの喫煙を控えた。あわただしい日々が過ぎて春になり、別府に帰ってきたら、タバコを吸う気がなくなっていたのである。今も、時たま夕食後などに吸いたくなることがあるが、それほど強い欲求ではないので、吸わないでいる。愛煙家を返上しなくてはならない状態だが、もともとタバコを好む体質ではなかった可能性もある。

 この状態は、意思によって吸わない「禁煙」からは遠いようで、「忘煙」とでもいうのがふさわしい。いつまで続くか、わが身を面白がっているようでもある。
                           (2006.6.7)

別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。--

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?