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手打術新書[うどん打ちの全て]一巻-理論編-手合わせの章

はじめに

うどん作りとは、理論を用い、経験値で直感し、頭で組み立て、技術を駆使し全身をコントロールすることで、一つの作品を生み出す、知力・体力・技術が求められる料理界の「総合格闘技」である。

本記事では、あらゆるうどんを打ちこなすために必要な理論と技術の習得方法をまとめていく。讃岐手打ちを軸にし、職人でありうどん塾主宰を務める小野ウどんが実践を元に独自解釈を加え解説していく。

そもそも既存のうどん打ちの本は簡単な説明にとどまり、丁寧に技術を言語化したり習得方法までをまとめたものがなく、うどんを打ちをやってみるだけでなく、他より一歩抜きん出たいと思った者が参考にするものが少ないのは遺憾であった。

コロナ禍~人生100年時代のこの令和において、暇を持て余し、時間をかけてでも手打ちうどん掌握力を極めたい者のための教本にしていく(予定である)。 

本書では理論編と技術編にわけて麺づくりに特化してうどん打ちを紹介していく。
理論編では章をわけながら主に練り~踏み、技術編では延し~盛りというふうに、作る工程順に解説していく。

随時マガジンにて更新していきます↓

麺法六節
つべこべ言わずまずは体を動かす

うどん製麺は6つの工程で構成される。練り、踏み、延し、切り、茹で、盛りである。これを麺法六節と呼ぶ。この理論編では踏みまでを解説する。

中でも延し切りは技術が多くを占め難易度が高いのに対し、練り踏みは難易度が高くはないものの理論を理解した上で行わないと失敗する。厳密には自分が目指す位置にたどり着けずに麺が完成してしまう。難易度に差はあるものの、それぞれが重要だということだ。

この書を手に取った方はうどんを作る心の準備はできているであろう。まだ一度も作ったことがない人はここで技術や理論を無視してまずは一度粉を触りうどんを作ってみてほしい。約1.5時間で粉から食べるところまで可能な最も容易な方法を説明する。

これで満足してしまった方は残念ながらここまでである。高みにいくために必要なのは好奇心である。気になる方はその先へ進んでみてほしい。

準備

・小麦粉(中力粉が良い)400g→大きめボウルに入れておく
・水180g+塩 20g→小さめボウルに一緒に入れてよく混ぜておく
・麺棒(お菓子用のものやラップの芯でも代用可能)
・包丁(家庭用のものでOK)、まな板
・打ち粉(片栗粉やコーンスターチなど)適量
・茹でる鍋(大き目だと良い)、混ぜる箸、上げるザル
・食べる箸と皿、麺つゆや出汁醤油

混合/捏練

0.大ボウルに小ボウルの塩水を投入する。

1.指を入れる前に大ボウルを振ることで指付着を軽減する。

2.次に指を立てた状態で手全体を道具のようにして数十秒混ぜる。

3.ボウルの側面と底面、指に付着する生地を早めにこそぎ取ることで水分バランスの乱れを防ぐ。

4.2を繰り返す。両手を使い底面の粉っぽい所もかき混ぜる。

5.とにかく一つに固まらないように攪拌をこれでもかと続ける。

6.全体がしっとりして、おから状になってきたらようやく固める。

この時は押して圧力をかければあっという間に一つになる。(粉が少ない為)

水和※させつつ一つにすることが練りの目的なので、割れ目などを無くすために捏ねまくる必要はない。踏みに入れば直る。

※水和については別項目にて説明する

踏み鍛錬

1.厚手のゴミ袋に固めた生地を入れ、踏む。

2.左上の角から雑巾掛けのように右、下、左、下、右と、かかとで足幅より狭いくらい小刻みに踏んで行く。

3.端までいったら別の角から同じように繰り返す。
4.1周したら生地を丸めてまた踏む。

5.次は左右往復を繰り返すように踏んでいく。

6.5往復したら生地を三つ折りにしてなるべく正方形に近づけた形にしてから踏む。

7.2の要領で1週したら終了。

※通常この後に熟成だが、延しの準備が終わり次第延しに入っていく。

延し

1.打ち粉を振る

2.手で生地を押して平らにする

3.角取り:棒を生地の真ん中から手前の角に向かって押し転がし、生地の角を強調させる。それを四つの角で均等な大きさになるように行う。

4.角から角に棒を生地に巻き付ける

5.棒を押し転がす
両手を合わせて押し、押す度に真ん中から外側に両手をやり、押す。親指と人差し指以外が生地に触れないくらい外側にいったら生地を手前に引いて、押し転がす。繰り返す。

角出し:上記の動きで四つの角それぞれを延ばす

6.側面取り:四つの辺を同じように延ばす。この時角出しの半分くらいの力と回数に抑える。

7.30×40cmくらいの大きさになったら終了。

切り

打ち粉を生地両面に振り生地を棒に巻きつける

屏風折り:まな板の上に生地が段々になるように折り畳む

切り:3-5mm幅になるように均一に切る

捌き:麺をバラバラに解く

茹で

麺100gに対して1Lの湯を沸かし、沸騰した湯に麺を投入する。15-20分茹でたら氷水にあげて締める。目安「15分↓厚さ3×3mm↑20分」

盛り

盛り付けて、麺つゆや市販のうどんソースなどで食べる。

ここまでが麺法六節である。これで一通りうどん作りの流れは理解していただけただろう。しかしここまではどこにでもあるようなうどんの作り方と説明に過ぎない。

ここから先の章では、何故その工程があるのか、それを行うと何がどう変わるのか、そもそも美味いうどんはどうすれば作れるのか、何がコシに起因しているのかなど、うどん製麺において必要な知識と理論、他から一歩抜きん出た説明をしていく。


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