第22話　中目黒の高田

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早速、川野さんから連絡あり、紹介してくれたのが、中水さんです。川野さんの、JAICでの同僚で、30代半ばで早くも投資部長をつとめておられていました。飄々としていて、小柄。つるっとした感じの、川野さんとは対照的なタイプです。

中水さんを紹介しつつ、結局しゃべるのは、やはり塾長。JAICというVCが、漢の中の漢たちがしのぎを削る世界に思えてきます。

川野さんは持論を、ご自身の評価の尺度に沿って、ガンガン展開されていきます。

社長、楽天とお会いされては、いかがでしょう。

三木谷さんは、どうやらしっかりした経営者らしいこと、この中水からよく聞かされております。

ヒカリモノとは無縁で、特別、変な噂も聞いておりません。

多少は銀座で遊んでおられるようですが、それもまたよし。

らくてん…か。

正直僕の中では、地味。いや、もっと勇気を出していうと、センスを感じられない、体育会気質の田舎っぽい会社だと思っていましたので、瞬発的なハートの震えはありませんでした。

しかし、確かに考えてみると、そこは中小企業の店舗さんがたくさん集まる、ショッピングモール。僕らプロトレードにご登録いただいた、士業やフリーランスの方々が、営業したくなる先でもあるから、シナジーは、あるな。と思ったのです。

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中水さんと向かう先は、中目黒の楽天オフィス。訪問先は、社長室。

中水さんは、打ち合わせ前に簡単にブリーフィングしてくださいました。

今からお会いする方は、大和証券の公開引受部門で、大活躍されていた方です。

この世界は伝統的に、野村が強かったのですが、ネット系ベンチャーは、彼が根こそぎ主幹事を獲得したおかげで、大和が大躍進を果たしたという、経緯があります。

楽天を店頭公開に導いた人なのですが、野心家なんでしょうね。三木谷さんに引き抜かれて、つい最近、楽天に転職されたのです。

楽天の中目黒のオフィスは、駅から目黒川沿いに、けっこう歩いた先の、銀光りした５階建てビルでした。贅沢に一棟丸借りで、さすが！と思ったものでした。（この三年後には、六本木ヒルズに移転）

僕らをウェルカムしてくれたのは、ソフトジャケットの下に、ゴルフウェアっぽいポロシャツでキメておられた、社長室の澁谷さんでした。靴はイタリア風の茶色のモカシンです。

第一印象は、見た目も喋り方も、高田純次。話に変なオチというか、軽薄男っぽい装いを、わざと残す癖があって、説明する時に、「ま、三木谷がそう言ってるだけなんで、僕は責任もたないですけど。」なんていいながら笑っています。

今にでも、「パリは寒い時に行くとイイよ。行ったことないけど」とか、名言が飛び出しそうな雰囲気でした。

そんな澁谷さん。元証券マンらしく、風呂敷はどこまでも広く、話の端々に数字と株価が出てきます。

３−5年後は、時価総額５兆円。流通総額も、5兆円のマーケットを作りたい。（これはかなり無理筋でした。時価総額は19年後の今、1.4兆円）

中小の店舗さんを束ねていくには、与信のインフラを作ることが重要。
クレジットカードと、佐川・日通からの特別レートをとって、囲い込む。
（これはやりましたね）

５兆円やるには、多国籍展開も必要。（これもやりました）

そして、

これからバーティカル展開をしていく中で、B2Bもターゲットに入れていたところなんだよ。君たちの事業は在庫とかないから、重くなくていいねぇ！

と、脈がありそうなお話をいただいたのです。

ここで、中水さんが、おもむろに、澁谷さんにぶっ込み始めました。淡々と。

じつは、小野社長のところは、買収先を探されてまして。まだできたばかりの企業で、BS軽くていらっしゃいますので、話は早いと思いますよ。

心の中では、おいおい、もう少し、もったいぶっても良くないか。と思いましたが、ニコリと微笑みながら僕はおとなしく座っていました。

え、そうなの。君たち、売られちゃうの？俺は女の子しか興味ないんだけどさ。笑　でも、三木谷は興味持つかもしれないねぇ。

この目の前の、適当男風な澁谷さんが、本当に多忙な三木谷さんにつないでくれるのは、いつになることかと、心で案じながらも、少しの希望を抱えて、中目黒のオフィスを後にしたのです。

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