焼きそばの果てしなき旅【その30・たらこ問題1】

焼きそばの記事を書き始めて30回目。もう何かまとめ的なものに行き当たってもおかしくはないと思っていたのだが、全くゴールは見えない。それどころかこの期に及んでそんなところに引っ掛かっているのかと云うところに引っ掛かってしまった。タイトルにある通り、たらこ、だ。世の中にはたらこ味が蔓延っている。あちこちにたらこ味や明太子味がのさばっている。これらを看過するわけにはいかない。盛大に引っ掛かってやろうと思う。

僕が子供の頃はたらこの生食などはまだなかったと思う。焼くか、煮るか、だったと記憶している。焼くのは普通に魚を焼く網で焼いてご飯のおかずになった。煮るのはシラタキと一緒に甘辛く煮たのが食卓に常備菜的に出ていた。たらこを生で食べても良いのだと云う認識になったのは随分と後のことだ。明太子を初めて食べたのは大学生の頃。バイト先の近くにあったお弁当屋さんでのり弁当の海苔の下にびっしりと明太子が敷き詰めてある明太子のり弁のことを良く覚えている。スタンダードのり弁当に50円だかプラスでこの贅沢を味わえたので頻繁に利用していた。

その後に働いたバイト先がスパゲティやピザが売りの喫茶店で、いきなり厨房に配置され様々な料理と調理法を覚えた。その中にたらこスパゲティがあった。生のたらこをバターと一緒に練り混ぜておいて、茹で上げのスパゲティにそれを絡めて、たらこスパゲティの出来上がり。炒め系のスパゲティにたらこが入っていたのは知っていたけれど（と云うことはそっちのたらこスパゲティは高校生くらいには体験しているのか・自分の記憶の順番が曖昧です）この半生くらいのたらことバターの妙味には驚いたと云うか感心したと云うか、とにかく自分にとって大きな出逢いであったと思う。このたらこスパゲティは自分で作ると際限なく食べられると云う超常現象を引き起こすので、僕にとってはあまり作ってはいけない禁断の食べ物である。

そして現在では身の回りにたらこ味や明太子味のお菓子が溢れている。これらも同様に超常現象や心霊現象を呼び起こすので注意したい。食べ始めたと思ったらもうなくなっていたりする慄然たる恐怖に度々見舞われるからだ。往年の焼たらこのちょっとパサついた塩っ辛さと、現在のエッセンスだけ抽出されたたらこ味との狭間で、僕は引っ掛かっている。盛大に引っ掛かっている。

カップ焼きそばの世界はたらこ味や明太子味に満ちあふれている。こちらは明星一平ちゃん夜店の焼そば・旨辛明太子味。焼かないのに焼きそばと銘打っている問題はあまりにも深遠すぎるのでちょっとスルーする。

総動員で明太子味だ。受けて立つ。

これをこれから混ぜて食べるのだが、混ぜた後の写真はあまり美しくないので割愛する。ウマウマウー。ウマイが何だかとってもヤバイモノを食べていると云う認識もある。この複雑な心境をどう言葉にしたものか。ふと今の日本の状況に似てはいまいかと考えた。考えたが良いオチが見当たらないのでやめた。

こちらは北海道限定（都内アンテナショップ等で入手可能）マルちゃんやきそば弁当たらこ味バター風味。そのたらこ味とバター風味と分けているのはどう云う意図があるのだろうか。たらこバター味とかたらこバター風味ではいけないのか。そんな事を考えているうちに夜が更ける。

これも総動員。更に麺のもどし湯でスープを作って飲むと云う習わしも踏襲すべきだと思う。

やきそばにスープが付くとやきそば弁当になると云う論法だろうか。至る所に疑問が野晒しになっている。誰も気に留めないのだろうか。荒野に只一人、佇む。

このお店に行ってモーレツな紅茶を飲むというミッションもまだ達成されていない。長年の据え置き。今年は是非行ってみよう。

ウマウマウー。味と風味の使い分けについては全く判断が付かないが、とにかく北海道には行きたくなった。夏前には是非行ってみよう。

そして日清焼きそばU.F.O.濃い濃いたらこ。サブタイトルに「濃いたらこ！＆バター風味」とある。たらこは味でも風味でもなくそのままたらこ。バターは風味なのだ。この辺りの表記に解決への糸口はないだろうか。どうなんだ。

こちらは総動員ではないけれど覚悟のようなものを感じることが出来る。夏目漱石が鎌倉の円覚寺で老師との面談で「もう少し本当のところを見つけて来なさい」と云われたエピソードが頭を過ぎったのだが、どこがどう繋がるのか自分でも判らなくなった。U.F.O.だったのかも知れない。

ふりかけが満遍なく行き渡らないのは自分の修行が足りないせいだと思う。いつかちゃんと混ぜられる人間へと成長したい。

ウマウマウー。個人的にはこのU.F.O.のバランス感が一番しっくり来た。ふとたらこ焼きそばに正解とまでは行かずとも何かしらの解があるのではないかと思い、ネットで検索したらたらこ焼きそばをメニューに入れているお店はヒットしなかった。そうなのか。たらこスパは無数にあるがたらこ焼きそばはない。もし今何か新しいことをウリにお店を出そうとしているならたらこ焼きそばはどうですか。業界トップになれますよ。たらこ焼きそばの業界。どうですか。でもきっとたらこトッピングをしている焼きそばのお店はあるだろうし（僕が思い付いたのだから誰でも思い付く）、たらこの原価は高そうだし、ダメかなー。まあいいか。こうしてたらこのことを考えているとキューピーのコマーシャルが頭の中に連続再生される。もしかしたらこの世界を支配しているのはたらこなのではないかとも考えた。そんなこたぁないか。すみません。

たらこ問題も焼きそばの果てしなき旅はまだまだ続きます。

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