見出し画像

大動脈解離術後のリハビリテーション

大動脈解離と聞くと、非常にリスクが高くリハビリテーションを行う際に、高度なリスク管理が伴う印象が強いかと思います。
実際に厳格なリスク管理の元、リハビリテーションは行われますが、どのように進めていけば良いでしょうか。今回は、安全にリハビリテーションを行うための注意点等勉強しましたので以下にまとめていきます。

大動脈解離

動脈壁が動脈硬化により弱化し、内膜に裂ができ、中膜が2層に解離し、その間に偽腔(解離陸)を形成する。

偽腔に血流があるものを偽腔開存型、偽腔が血栓で完全に閉塞していて血流がないものを偽腔(血栓)閉塞型という。

偽腔開存型はリスクが高く、偽腔(血栓)閉塞型は合併症も少なく予後も良好である。
大動脈解離の分類にはDeBakey分類とStanford分類がある。

https://www.asakura.co.jp/lp/naikagaku12ed/digitalappendix/src/e
コラム9-2-4_大動脈瘤と大動脈解離.html

リハビリの注意点

・病態と、どのような治療がされているかしっかりと把握する。
・残存解離や他の動脈の状態についても確認する。
・患者さんの血圧管理における指示範囲を確認する。
・運動前後の血圧をしっかりと確認し、変動が激しいようなら医師に相談する。
・リハビリ以外の時間の過ごし方が大切。安静臥床時間の短縮を!
・やっぱり血圧管理が最重要。内服や塩分管理も確認すること。
・前日からの体調の変化を確認せずに実施しないこと。
・血圧の評価をせずにADLの拡大をしない。


何を行ったらいいの?

・待機的に人工血管置換術を行った症例では、医師の指示に基づきガイドラインに沿ったリハビリを行う。
・急性大動脈解離に対して同様の手術を行った場合は、残存解離の有無を確認し、医師の指示に基づいて実施する。特に残存解離がある場合は安静時血圧は収縮期で120以下、リハビリ時で140以下に管理する。

離床よりも治療を優先すべき時もある!
①生命維持のための機械〔人工呼吸器、IABP(大動脈バルーンパンピング)、PCPS(経皮的心肺補助)など〕が装着されている。
②強心昇圧薬(カテコラミン製剤)大量投与中、または24時間以内に増量された状態。
 ・大量に強心薬を使用しないと血圧や心拍出量が維持できない状態である
 ・強心薬を増量しないと血圧や心拍出量が維持できない状態である
③低心拍出量症候群(LOS:low cardiac output syndrome)の状態。
 ・血圧低下
 ・乏尿(0.5~1.0ml/kg/時以下)、または無尿
 ・代謝性アシドーシス、末梢循環不全手足の温度の低下、チアノーゼ
 ・中枢神経症状(不穏,鈍麻)

実際にリハビリを行う時どうするの?
①血圧の管理ができ、離床許可が出たら徐々に負荷を上げていきます。
②呼吸練習、activeでの座位練習、立位練習までは心臓外科手術後の離床開始基準に従って行う。

 離床開始を控えるべき状況

※血圧管理は厳重に!特に基準値より高い場合は、その状況を確認し医師に報告する。
③歩行負荷
 歩行負荷では術中の出血による貧血やボリューム不足により、低血圧になりやすいので、急な運動や激しい運動は避ける。段階的に負荷を上げていく。
 歩行の前には、前日からの体調や自覚症状を確認し変化がないかを把握する。
 歩行中は心電図や自覚症状の確認を行いながら行う。
④原則としてリハビリテーション進行の中止基準はガイドラインに従う。
⑤運動負荷後は、端座位にてバイタルサイン(血圧、心拍数、呼吸数など)を測定する。
 バイタルサイン測定中は会話は行わない。
⑥運動後はカルテにしっかりと記録、医師にも報告を!


ここで大動脈解離を含む心疾患患者のリハビリの中止基準等を記すます。

心大血管リハビリテーションにおけるレジスタンス運動とは最大筋力の50%以上を指します。
筋力強化=レジスタンス運動ではないということですね。
よく、筋力強化全般は導入時期じゃないのでNGと考えるセラピストもいますが、そもそも歩いたりするのには、それなりに筋肉への負荷がかかります。つまり歩行がOKなのに低負荷の筋力強化がNGなはずはないんですよね。個人差はありますが自重負荷程度であれば問題ないケースもあります。
各患者の評価をしっかり行うことが大切ですね。
また、術式にもよりますが、胸骨正中切開をした患者さんは縦隔炎を防ぐためにも上肢の運動をある程度制限されます。これも胸骨に負荷がかかることがNGですので、極端に言えば手指の運動は問題ありません。
禁忌とされていることは、なぜ禁忌なのかを理解すると正しく治療を行うことができます。
心疾患患者のリハビリは怖いという意見をよく聞きますが、漠然と怖がるのではなく、リスクを予見し何が起こりうるのかを理解した上で怖がることが大切だと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?