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インターネットとハラカ(『傷口から人生』こぼれ原稿その2)


「みゆきちゃん、インターネット世界を生きるには、『ハラ力』が必要だよ!」

そう、整体師の奥谷まゆみさんに言われたのは、きんきんと冷たい風が脳に突き刺さるような、1月の暮れのことだった。

奥谷まゆみさんは、私の整体の師匠だ。

 

 昔、私が仕事と恋愛の両方に疲れて心身ともにボロボロで、人間らしい生活すらもままならなかった時、どうにかして身体だけでも立て直したいと、奥谷さんの整体サロン「きらくかん」を訪れたのが始まりだった。

 奥谷さんの整体は、一般的なイメージ通りの「人をばきばきやって、治す」整体ではない。身体を触ってその人の不調の原因を探り当て、その人が日常の動作の中でそれを改善してゆけるよう、ストレッチやボディワークの方法を指導する。その人が自力で不調を治せるように指導する整体だ。奥谷さんの整体には、依存がない。使うのはすべて、その人自身の持てる力なのだ。私は奥谷さんの元に通うようになって、自分の不調を自分で治す、ということを、少しずつ、学んで行った。

 身体と精神は、驚くほど一枚岩だ。身体の状態が変われば、思考も変わるし、感情も変わる。そのことを、私は奥谷さんから学習して、痛いほど、わかっていた。

 

「ハラ力?」

「そう、丹田に力を込めるための、筋力。インターネットの世界って、いろんなことを言う人がいるでしょう。あらゆる情報が氾濫して、洪水みたいだよね。悪口だったり、ネガティブな情報についつい、振り回されちゃう。でも、いろんな情報に苛まれても、フラフラせずに『いろんなことを言う人がいるけど、私は私だもんね』とどっしり構えられる人は、重心がセンターにある人なんだよ。「ハラが決まる」って言うでしょ?その言葉どおり、自分の中心がハラにあって、下半身に、どっしり体重が載っている状態の人」

 

 その時の私は、twitterで、私のことをよく知りもしない人に「やりまん」だのなんだの書かれて、心底怒り狂っていた。

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