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手放してゆく言葉:『傷口から人生』こぼれ原稿集
このnoteは、昨年2月に出版した『傷口から人生 メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』のために書き下ろし、編集の過程で収録されなかった4つのエッセイの再録です。
『傷口から人生』は、最初の打ち合わせの時、担当の編集者さんから与えられた「若い時に生きづらかった小野さんが、25歳までの人生の中で、価値観をゆさぶられたことば、背中を押された言葉をテーマに、25個の章で構成する」とい
ガンジス川と世界の距離(『傷口から人生』こぼれ原稿)
「ちょっとぉぉ!私が行きたかったのは、街の中心の宿なの!こんなへんぴな所に連れて来てなんて言ってない!引き返してよ!」
私は絶叫していた。
インドはバラナシ、観光客など誰もいない煤けた町の外れの、見た事もないほどボロい宿の前で。
世界一周の旅に出発した21歳の私が最初に降り立った土地・バラナシは、はじめからどこもかしこもが爆発していた。
膿にたかる蠅のように、人が、牛が、車が、街に
インターネットとハラカ(『傷口から人生』こぼれ原稿その2)
「みゆきちゃん、インターネット世界を生きるには、『ハラ力』が必要だよ!」
そう、整体師の奥谷まゆみさんに言われたのは、きんきんと冷たい風が脳に突き刺さるような、1月の暮れのことだった。
奥谷まゆみさんは、私の整体の師匠だ。
昔、私が仕事と恋愛の両方に疲れて心身ともにボロボロで、人間らしい生活すらもままならなかった時、どうにかして身体だけでも立て直したいと、奥谷さんの整体サロン「きらく
見る事は生きる事(『傷口から人生』こぼれ原稿その3)
『あなた、まともな目の使い方をしてない。それじゃ、世界のことなんて、な〜んにも見えないよ』
そう私に言ったのは、千葉県の佐倉にある、「眼鏡のとよふく」の店主、豊福啓示さんだ。
「眼鏡のとよふく」は老舗の眼鏡屋だ。昭和天皇も眼鏡を作った事があるというその眼鏡屋は、千葉の鈍行駅の目の前に、ひっそりと佇んでいる。
眼鏡のとよふくのことを教えてくれたのは、整体師の奥谷まゆみさんだった。
「成田空