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2016年5月の記事一覧
螺旋の匣(貝の棲み家 #2)
幾度かの長雨を繰り返して、東京は夏入りをした。
久々にからりと晴れた或る7月の日、果帆が買い物を済ませて帰宅すると、家の前に見慣れぬ女が横たわっていた。
女は長い髪が敷石に触れるのにも構わず、からだじゅうの腱が切れたようにだらりと門扉に向けてくずおれている。黒い髪は土埃を吸って白っぽく、唇はかさかさと干からびている。薄肌色の、ぴったりとしたワンピースを着ているためか、遠目に見ると裸のようで、果
幾度かの長雨を繰り返して、東京は夏入りをした。
久々にからりと晴れた或る7月の日、果帆が買い物を済ませて帰宅すると、家の前に見慣れぬ女が横たわっていた。
女は長い髪が敷石に触れるのにも構わず、からだじゅうの腱が切れたようにだらりと門扉に向けてくずおれている。黒い髪は土埃を吸って白っぽく、唇はかさかさと干からびている。薄肌色の、ぴったりとしたワンピースを着ているためか、遠目に見ると裸のようで、果