ライヴ覚え書き(2024/7)

 もともと字数制限のないFacebookで、見たライヴの感想を書くのが習慣なんですが、Facebookをやっていない人にはなかなか読んでもらえない、という現実もあり、もっと広くいろんな人に読んでもらうために、また記録用という意味合いもこめ、noteに随時転載していきます。X(Twitter)で書くものはここに書いてあるものの抜粋版であることが多いです。Xのポストの完全版がこれ、という言い方もできるでしょう。1ヶ月ごとに区切ってまとめて記事にしていきます。2024年7月分から開始しますが、それ以前のものも随時転載していきます。記事としてまとまったライヴ評ではないですが、ライヴが終わってすぐ(時には帰りの電車の中で)書いていることが多いので、生々しい感想にはなっているかもしれません。 ライヴごとの字数がかなり違いますが、書いた時の状況が大きく、ライヴの出来不出来や、こちらが受けた感銘の強さとは関係ありません。また、見たライヴをすべて書いているわけでもありません。マガジン登録もどうぞ。


2024/7/30

 昨日は青山BAROOMでYoshimiOとキム・ゴードンのセッション。サポートに山本精一というラインナップ。

  写真のような作りの小ホールというかバーというか。フロアで演奏するアーティストを240度ぐらいの感じで観客が包囲する。限定100枚のチケットをなんとか入手。開演前に偶然ヨシミちゃんに会って久しぶり〜と挨拶。

 山本精一は前半はラップトップからさまざまなノイズを出しながら、ギターの音を重ねていく。アンビエント……というよりはプログレ、クラウトロックに近い感じ。心地よいのと違和感、異物感が同居するような山本精一の世界。後半は一転してラウドでノイジーでヘヴィなエレキを狂ったように弾きまくる、これまた山本精一の世界。最近山本さんソロライヴを見てないので、今回のライヴがどういう位置づけになるのかわからないが、大変面白かった。

 そしてヨシミちゃんとキム・ゴードンは、エフェクターをずらりと並べ、エレキを抱えたキムと、ドラムやパーカション、キーボードなど楽器類をずらりと並べたヨシミが対峙して、さまざまな音を繰り出す。私の見た位置からはヨシミちゃんの顔はもろ正面に見え、キムは背中しか見えない。完全即興の演奏はまったく予測がつかず、時折繰り出されるヨシミちゃんのヴォーカル、というかヴォイスも、言葉にならない叫びや祈りに近い。前衛的で実験的な、コマーシャルなポップさなどカケラもないアートな演奏だが、同時に太古の昔に遡るようなプリミティヴなエネルギーに満ちている。良い意味でキムさんは昔から変わってないと思ったが、ヨシミちゃんはアーティストとして一回りも二回りもスケールが大きくなり懐が深くなり包容力を増して、キムの尖ったギター・ノイズを柔らかく受け止めているように思えた。PAエンジニアはzAK。さすがの音響でした。

10000円の入場料は全然高くない。日常を脱した非日常空間を存分に楽しみました。

2024/7/26

The Good Kids a.k.a @ 新宿Marz

 原広明(vo,g)を中心として茂木欣一・大森はじめ・tatsu、WAY WAVEによるバンドだが、この日はDJとフロントの3人(原、WAY WAVE)のみの打ち込みヴァージョン。持ち時間も30分ほどと簡潔なライヴだったが、きっちりメッセージもこめて、むしろフルバンド・ヴァージョンよりも原個人の音楽的指向性みたいなものが浮き彫りになっていたような。8月にアルバムを出すことが決まっていて、それは原による打ち込みが中心となった音だから、むしろこの日のライヴに近いかも。イベントのライヴでフロアは閑散としていたが、ちゃんとThe Good Kidsの世界に巻き込んでいたのはさすがベテラン。
The Good Kids終了後、挨拶もそこそこに新宿ロフトへ移動

新宿ロフト歌舞伎町移転25周年記念
Wrench、Ken Ishii、The Telephones 

 急遽決まったライヴらしく、入り口で渡されたスケジュール表にも記載されていない。ちょうどテレフォンズが終わったタイミングで会場に着いたが、フロアはMarz以上に閑散としていて大丈夫かと心配してる間にケンイシイ登場。KORG MONOTRONを手にしての耳障りなノイズを導入部に、怒濤のハード・テクノ攻撃。イシイ君も百戦錬磨のベテランだから、あらゆる現場に対応していろんな引き出しを持ってるはずだが、イベントの性質や対バン、客層を考慮してかいつになくアグレッシヴでハードでラウドな、ちょっと90年代ハードコアミニマルっぽい感じもありつつのプレイに一気にぶち上がった。しかも出音がめちゃくちゃよくてローの押し出しと安定感がヤバイ。プレイが始まるとポツポツと人が集まってきたが、その全員が狂ったように踊りまくっていて壮観だった。最後にジェフ・ミルズをかけて、MONOTRONでまたノイズ出して50分のショートセットはおしまい。短かったが中身は濃かった。あとで聞いたらイシイ君はロフトに出るのも初めて、こういロック系イベントに出るのも久々だそうで、そのわりに馴染んでましたね。ロック系ライヴハウスとクラブの違いとか話を聞けて興味深かった。

 転換があってレンチ登場。レンチは比較的よくライヴを見ている方だと思っているが、この日はここ数年でベストなんじゃないかと思うほどテンションの高いパフォーマンスでマジ最高だった。PAがめちゃくちゃよくてツイン・ドラムのエネルギーがぐいぐい伝わってくるし、ギターの音も鋭く、ベースの音もクリアで、楽器数、音数の多いライヴだが音が混濁しないのに一体化して。ヴォーカルのシゲはフロアに飛び降りて駆け回りながら歌って、いや叫んでいたが、むしろ客が極端に少ないことで燃えた部分もあったのではと推測。終演後にメンバーと話したが、「まさかこのライヴで小野島さんにそんなに絶賛されるとは思わなかった」とのこと。レンチはワンマンだけでなくこの日のように誰かの企画で呼ばれてやるライヴも多く、この日もそんな数あるライヴのひとつだったはずだが、そんなライヴがこんな凄いことになるんだから面白いもんです。頭がこんがらがりそうなややこしい複雑な曲を超パワフルでエネルギッシュでダンサブルなラウド・ロックに昇華する。結成以来32年。ほとんどメンバーチェンジもなく、こういう風に尖ったライヴをやり続けているレンチは、、もっと注目されていいはず。ツインドラムになってからの今のレンチは、過去最高の充実期かもしれない。ちなみにロフトはPA卓が新しくなったばかりらしく、音が良かったのはそれも大きな理由だろう。

 そんなわけで楽屋でメンバーと盛り上がっていたら打ち上げに誘われて、そのまま参加。コロナ以降こういう場に参加することが全くなかったので、楽しかった。お酒は飲まないので乾杯も形だけですが・・イシイ君ともレンチのメンバーともじっくり話せたし、久々にお会いしたテレフォンズの石毛君ともお話できた。いい一日でした。

2024/7/16

昨日はpolly @ 新宿Zirco Tokyo

前にFEVERで見た時より好印象だったのは、ハードで激しいサウンドが聴けたからか。FEVERは繊細で優しいライブだったけど、それだけじゃなく力強さも欲しいから。もう少しラウドなギターが全面に出たアレンジにしてもいいと思う。初めて見たハコだったが、音も良く、それも演奏の好印象につながってたかな。

ただしサポートのバンドの演奏が長くて、肝心のpollyの演奏が短めに終わってしまったのは残念。普通の対バンライブならまだしもpollyのレコ発なんだから、対バンの演奏を長く取るためにpollyの演奏が短くなるなんて本末転倒じゃないか。詳しい事情は知らないけど。またサポートのバンドの音楽性もpollyと全く重なるところがなく、お互いのファンにとっても得るところがなかったような。pollyのファンにとってはそういう意味で物足りないライブだったと思う。


2024/7/14

千川新 @ 北越谷SOUND STUDIO GREGORI

ちょっと前にインタビューしたcomputer fightのギタリスト、千川新のライヴ。ドラム、サックスと3人体制の即興ライブで、ノイズっぽくもある。どうやら最近のある出来事で昔いじめられた記憶だか因縁だかが蘇ったとかで、いろいろルサンチマンが溜まっていたらしく、ギターをぐちゃぐちゃにかき鳴らしメガネを投げ捨て身をよじり絶叫する様子が生々しくインパクトがあった。インタビューでは物静かに語る知的な青年だが、なるほどソロライヴだとこんな激情を迸らせるのかと思った。computer fightでもここまで爆発しないからね。大変楽しかったです。

2024/7/9

 このクソ暑い中、ライヴ3連チャンが終了。コーネリアス、君島大空と来て今日はデフへヴン@クアトロ。

 米西海岸のシューゲーザー〜ブラック・メタル・バンド。ハードコア・メタルのバンドがシューゲイザー風サウンドでやってるという感じに近い。もともとコンヴァージのレーベルからデビューしたので、そんな感じもある。向こうでは「ブラックゲイズ(ブラック・メタル+シューゲイズ)とか言われてますね。9年前のアルバム「絶海」の日本盤ライナーを書いたが、おそらくその時がデス・ヴォイスのメタル+シューゲイザーのラウド・ヘヴィ・ロック・サウンドのピークで、一部のスキもない壮絶な作品だった。直後に来たフジロックのライヴも見た。最新作ではクリーンボイスによる曲もやってて新境地をみせていて、ライヴではどうなるかと思ったら、メインはゴリゴリのデス・メタルだが時折クリーン・ヴォイスのメロディアスで叙情的な面もひょっこり顔を出す感じ。もともとメロディアスで叙情的な側面はあったが、クリーン・ヴォイスでやるとなんとなくポスト・ロックっぽい感じになるのが興味深い。デス・ボイスのグロウルと、クリーンボイスで朗々と歌うパートが交互に登場するあたりは、DIR EN GREYみたいなヴィジュアル系バンドにちょっと共通するなあ、とか思ったり。

 ヴォーカルは曲調からちょっと内向的な感じもあるかと思ったら、よく動くし、ガンガン客を煽るし、それに応えて客もテンション高くて、モッシュ起きまくりの大盛り上がり大会で大変楽しかった。前に見たフジロックではこんな盛り上がる感じではなかった気がするが、日本の客がこのノリに慣れたということだろう。

 ただ気になった……というか残念だったのは音が妙に小さかったこと。いや、普通のバンドなら十分大きいかもしれないが、デフへヴンみたいなバンドは3日間耳鳴りが止まないみたいな激爆音を期待するわけですよ。向こうからPAオペレイターは連れてきてるだろうから、あの音の小ささは意図的なものだろう。音量を抑えめにして、クリアで分離のいい、聞きやすい音にするというやり方は当然あるけど、その割に出音そのものはダンゴ状態でぐちゃっと各楽器が固まって分離が悪くモコモコしている。もちろんラウドなロックはそういう音の方が良い場合もあるが、ならもっと大きな音でないと効果半減というもの。昨日の君島大空が腰を抜かすほど音がいい、分離も切れ味もいいクリアな超絶良い音響で、しかも出音がでかいというのといろんな意味で対照的だった。まあ好みによると思いますし、もしかしたらなんか事情があってデカイ音が出せなかったのかも知れないが、違う会場で聞いてみたい、とは思った。

2024/7/8

君島大空合奏形態@神田スクエアホール

 圧倒的な演奏技術、飛び抜けて鋭いセンス、溢れ出る情感、美しい楽曲、そして腰を抜かすほどキレのいい音響、と何拍子も揃った最新型ロック。ロックという形態でここまで新鮮な音像を作れるのが驚異だし、技術の高さが音楽性の新しさに直結してるのが新世代。

2024/7/7

コーネリアス@ガーデンシアター

 30周年スペシャルプログラムだそうで、これまでの歩みを総括したようなメニュー。演出も映像も照明も音響も、もちろん演奏も完璧で素晴らしいの一言だったけど、それ以上に幸福感がハンパないというか、こういうこと書くのは気恥ずかしくて本当はイヤなんだけど、なんか自分の人生を肯定したくなるライヴというかね。今までいろいろあったし失敗も後悔も山ほどあるけど、まあ今はそれなりに幸せだし悪くない人生だよな、と、コーネリアスの演奏聴きながら思えたのだった。昔が懐かしい、とかじゃなくて、今がいいんだ、と。特に「ブラン・ニュー・シーズン」の多幸感はヤバかった。

 各曲の映像は半分ぐらいリニューアルされてて、特に「アナザービューポイント」で、過去のコーネリアスの映像、テレビ出演とかライブとか楽屋裏とかPVとかをグチャグチャにカットアップコラージュした映像は、昔のコーネリアスの映像っぽいジャンクでスカムで手作りなローファイ感覚が全面的に展開されてて実に楽しかった。最近のコーネリアスの映像はちょっとこぎれいすぎて少し物足りなかったんですよね。ヨーコオノとかベックとかジャクソンブラウンとかショーンレノンとかタモリとか森口博子とかYMOとか、あとたぶんスレイヤーのケリーキング?とかいろんな有名人が登場してて、いちいち権利処理とかしてるんなら大変な手間と予算がかかってそうだが、さて?

 本編最後に「太陽は僕の敵」のイントロが流れた瞬間が一番客席が盛り上がった。それからの初期曲のメドレーは楽しかったし曲の良さも再認識したけど、でも今のコーネリアスにとってはノスタルジーに過ぎないし(というか今のコーネリアス・グループには合わない)、30周年のサービスに過ぎないんだろうな、というのもはっきりわかった。実は今日一番嬉しかったのはそこ。コーネリアスは1番新しい曲が1番いい、紛れもない現役第一線のバンドなのだ。だから本当に良かったのは昔の曲じゃなく最近の曲。最後の「あなたがいるなら」は実に良かった。小山田と同時代にいられてこうしてリアルタイムでその音楽を享受できるのは、やはりラッキーなことだ。

 感想を述べるとキリがない。本当は打ち上げに出て本人にも挨拶するつもりだったが、ぼんやり歩いてたらいつのまにか外に出てしまい、そのまま帰宅。でも余韻を味わうなら、もしかしたらアーティスト本人にも会わない方がいいかも、とは少し思った。だって打ち上げ出ちゃうと「関係者」になっちゃうから。この日は「いち観客」でいたかったのだ。

2024/7/5

AA= @ クアトロ

 もう何も言うことはない、最高のライヴ。かっこいいロックに必要なものはすべて揃っている、という感じ。

よろしければサポートをしていただければ、今後の励みになります。よろしくお願いします。