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大阪十三シアターセブン上映終了

朝、目覚めると昨晩が信じられないほどの快晴。
前日から続くと思っていただけに嬉しい誤算。
宿を出てコインロッカーに荷物を預けて神戸まで足を伸ばす。
移動中の電車で名古屋大阪の感想をもう一度読む。

逢いたかった人に逢えた。
身近に時間だったけれど話が出来て有意義だった。
今、僕が目指すべきことがより明確になったと思う。
SNSにあがったたくさんの感想が僕の背中を押す。
わずかな期間なのにリピートしてくださるお客様までいるのだから。

軽めのランチを神戸で。
昔からある純喫茶でアイスコーヒーを飲んで十三に戻る。
梅田や大阪見物もいいけれど十三を歩く。
大きな駅の土産物屋とは違うそこにある和菓子屋で家族への土産を買った。
大した金額じゃないけれどこの街で買い物をしたかった。

上映よりだいぶ前に映画館に到着。
スタッフと談笑する。
ひとつ前の上映作品も舞台挨拶があるというので控室に挨拶に。
その上映が終わってからチラシ配りをすることにした。
前の作品の舞台挨拶が終わるのを待っていると急に雨が窓を叩く。
音がするほどの大粒の雨。さっきまで快晴だったのに。

出てきたお客様にチラシを渡す。
「今日が最終日です。これからです。急な雨なので観ていきませんか?」と声をかけ続ける。
なんと、じゃあ観ていくよとその場でチケットを購入してくださったお客様が数人いらっしゃった!感謝!
映画『演者』の最終上映が始まると、ロビーで挨拶をしていた前の作品の監督さんと挨拶。
打ち上げに誘っていただいたので、最初は断ったのだけれど、ソフトドリンクで乾杯だけお付き合いさせていただく。
映画について話す豊かな時間。乾杯をして30分ほどで控室に戻った。

夜行バスをチェックするとお高めだけど予約ができそうだった。
もう一泊することも検討していたけど、その場で予約する。
行きたいところは全て行っているはずだから。
っていうかそんなギリギリまで帰りのことは後回しにしていた。

上映終了後の舞台挨拶。
明らかに前日よりもお客様が増えていた。
受付で声をかけさせていただいた方々も残ってくださった。
また一人、そしてまた一人、出会っていく。
分断が続く世の中だけれど反比例するようにこの映画は出会い続ける。

ロビーでのお見送り。
大阪二日間来てくださった方もいらっしゃる。
その日に来てくださった方もいらっしゃる。
なんと、劇団時代の仲間のお兄さんまで来てくださっていた。
あんまりそっくりなので驚いた。
僕の頭の中で赤い糸が転がった。

前の作品が終わって声をかけてみてくださった若いお兄さん。
「正直、ちょっとあれ?って思ったんですけど、舞台挨拶なんかも聞いているうちにもう一度観たいと思いました。また大阪に来てください」
そんな言葉をもらって、痺れながら握手した。
震えているような気がしたのは僕の手かお兄さんの手だったのかわからない。

シアターセブンのスタッフさんに感謝の意を伝える。
さっき声をかけた方が観てくださっただけじゃなくてパンフレットも買っていってくださいましたよ!とすごく驚いていて褒められた。
なんだかこそばゆさを感じながら映画館を後にした。

バス乗車までの短い時間に十三のホルモン屋さんで一人打ち上げ。
酒は軽く、肉は多めに。
幸い高速バスは少しお高めだったこともあってか行きの100倍以上快適なバスだった。席は広いし一番前だから足も伸ばせるし、リクライニングも枕も最高の席だった。しかも隣が空席で広々と。ギリギリだったのに持ってる!

そんなわけでぐっすりと眠りについて気付けば快晴の東京の空の下。

この小さな旅の期間にまた色々なことが世の中では起きた。
センシティブな動画配信が拡散してしまったり、再びのテロであったり、自衛隊のヘリの遺体が見つかったり。
こっちは上映期間なのに何回、緊急ニュースでスマホが震えるっていうんだ、まったく。
そしてその全ての情報に、当たり前のように「ほんとう」か「うそ」かの論争がSNSに湧き出していた。

それが陰謀なのか陰謀論なのかどうかよりも。
どのニュースも作り物かもしれないと疑ってしまう時代の空気のようなものこそ重要だと僕は思う。これまでも同じようなことは繰り返されてきたけれど、明らかに「でっちあげ」かもしれないぜと疑っている人が増えている。実際、関西で出会った人の中にも、あれどうなんだろう?なんていう人が数人いらっしゃった。
今、現実に生きているこの世界がどこかフィクションに思えている。そういう状況がコロナ禍以降続いているのだと僕は感じている。
実際、どのニュースもまるで映画や漫画の中のような考えられないような出来事が現実化しているようにさえ思える。いや、むしろフィクションに呑み込まれてしまっている人が事件を起こしているようにも見える。

映画『演者』は、そのことをテーマにしたわけで。
時代の病理そのものを描いていると僕は感じている。
僕たちは嘘の中で生きているのか。ほんとうとはなんなのか。
名古屋、大阪でこの映画に出会った皆様は何を思っただろう。何を感じただろう。
どのように伝わったかは自由だ。何もわからなかったとしても、それはそれでいい。
『演者』というタイトルの真意にいつかどこかで気付くのかもしれない。

現時点で上映が決まっているのは名古屋の残り2回のみ。
こちらは舞台挨拶にも行けない。
平日の朝10時。
それでも皆様の感想はきっと届いていると僕は感じている。
なんとなく気になっている方がいるはずだと信じている。

この映画はそうやって進んでいく映画だ。

映画『演者』

企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル

「ほんとう」はどちらなんですか?

【限定3回上映】
2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)
各回10時から上映
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)

◆終映◆
2023年3月25日(土)~31日(金)
K'sシネマ (東京・新宿)

2023年4月15日(土)18:30、16日(日)19:00
シアターセブン(大阪・十三)

出演
藤井菜魚子/河原幸子/広田あきほ
中野圭/織田稚成/金子透
安藤聖/樋口真衣
大多和麦/西本早輝/小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟 録音 高島良太
題字 豊田利晃 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希 制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

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小野寺隆一
投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。