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逆立ちしたら勝てるわけないだろ

ユーロスペースでの上映前。
ミラクルが起きれば延長上映が出来るんじゃないかと考えた。
2スクリーンだったということもある。
とは言えその後の上映予定作品なども見ていたから翌週は厳しいだろうなぁというのはわかっていた。
その翌週、翌々週、どこかでなら可能かもしれない。
そこまでは考えていた。

そのために必要なものは2つ。
友達や知り合いの声とは別の映画好きな皆様の評価。
そして、最低限の動員数も僕なりに設定していた。
もう一つあれば更にというものがあるとすれば興味を持った関係者が記事にしたりとか、なんらかの動きがあれば。
当然、それだけが各ミニシアターの延長の理由ではないだろうと思う。
様々な要因が考えられるから。
ただ僕なりに想定していた動員数に届かなかった。
多くの評価もいただいたし、新しくリピートしてくださった方もいた。
それでも設定していた数字がうまくいかなかった。
なんと難しいのだろう。仕方がないのだけれど。

それでも一週、枠があるけど上映する?
なんて連絡が来たりしてなんて思ってしまう。
手応えという熱が僕にそんな妄想を見せる。
元々ミラクルで自分に課した目標にも届かなかったのに。
渋谷という場所での復活再上映。
過去の経験で考えてしまうのかもしれない。
あれはびっくりしたもんなぁ。まぁあれはミラクル。
その復活上映で出会ったお客様は今も観に来てくださっている。

今さ、北野武監督の「首」が上映されているけれど、豊臣秀吉でしょ。
その上、日曜劇場なんかも下剋上なんてタイトルに入っている。
現代は身分差別なんかないように見える。
けれどやっぱり格差はあるし、なんとなく庶民だとかさ、そういう言葉も残っていて差別の言葉なんかはかなりヘイトだ!っていって言葉狩りされてなくなってはきているのだけれど、そんなのは結局は表面的な問題であって、大事なことは心の中の差別が問題なわけで。社会的待遇などはもちろん是正されてしかるべきだけれど、じゃあ心の中はどうするんだよ?っていうのは大問題のまんま残されちゃっている。
そういう中で下剋上的なキーワードが浮上してきていることがなんとなく多くの人が無意識に感じている格差への不満のようなものへの反応なんじゃないかなんて思えてさ。
そういう意味ではアングルとして映画『演者』は面白いと思っている。

ずっと舞台とかさ、稽古とかさ、何十年もしてきてさ。
色々な技術的な実力もあるし、存在感のような貫禄まで出てきている。
ただ社会的には無名というような連中がさ。
オーディション受けたって日本の商業映画やドラマではどんなに実力があってもよほど運が良くなければほとんどが端っこに映るぐらいの役しかもらえないような格差も生まれていてさ。
なんかペコペコ業界の人に頭さげちゃうような役者もいる中でさ。
自分たちで堂々と芝居で勝負するような作品を創って勝負するって、思い切り下剋上なアングルだよなぁって思うの。
若さの勢いで挑むとかじゃないんだから。
ダメだし上等、誹謗中傷上等、酷評上等で、そのものずばり「演者」ってタイトルでさ。
逆立ちしても勝てないなんて言うけれど、逆立ちなんかしたらむしろ勝てるわけがないんだから、堂々と正面突破しかないわけで。

でもその下剋上的な闘いっていうのはさ。
きっとこれまでもずーーーっと続いているんだと思う。
そして、その闘いに勝利する可能性というのはとても低いのだろう。
たまぁにそういうことが起きる、ってことなのだろう。
だからこそ、僕は勝てる見込みのある闘いではなくて、ミラクルを起こすような闘い方をしているのだもの。
勝たなくちゃいけないんだよな。
ああ、悔しいったら。

でも半分だけ、ざまあみろとは思ってるよ。
この手応えにさ。
感想の一つ一つにさ。
凄い役者たちがいた!っていう言葉にさ。
やっぱり思った通り、こいつらすげかったんだってさ。
ああ、それが世間まで届けばどんなに痛快だったことだろう!!

まぁ大人なので。
負けは負けとして認めようじゃないか。
試合に負けて勝負に勝ったみたいに言えば言えるし思ってるけど。
信じるものはいつかどこかで救われたらいいのだけれど。

さてここからどこに行こう。
さてここからどこに向かおう。

いいことがあるといいなぁ。


映画『演者』
企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル
題字 豊田利晃

「嘘ばかりの世界」だ
  「ほんとう」はどこにある

【次回上映館】
未定

出演
藤井菜魚子 河原幸子 広田あきほ
中野圭 織田稚成 金子透
安藤聖 樋口真衣
大多和麦 西本早輝 小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟
録音 高島良太 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希
制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

◆終映◆
・2023年11月18日(土)~24日(金)
ユーロスペース(東京・渋谷)

◆終映(特別限定先行上映)◆
・2023年4月15日(土)16日(日)※限定2日間
シアターセブン(大阪・十三)
・2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)※限定3日間
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
・2023年3月25日(土)~31日(金) ※限定1週間
K'sシネマ (東京・新宿)

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。