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不登校は選択肢の問題なのか?

福井スコーレを始めた当初から、私は不登校は選択肢の問題ではなく、公教育の包摂性の問題だと思ってきた。

不登校からでも行きやすい・通いやすい進路の情報を集めて情報共有をしたり、本人の気持ちを支えながらどうしたら学校やその後の進路に進みやすくなるのかを考えてきた。

私も不登校を経験していて、不登校になる前にも、なった後にも辛い経験をたくさんした。孤独で、とにかく絶望していた。学校にも、大人にも、自分自身にも。

不登校の子どもたちはほとんど皆、辛い経験をたくさんしている。特性や環境など弱い立場に置かれがちな背景があることも多い。

子どもには学ぶ権利があるし、社会には全ての子どもが学べる教育を作る責任がある。その教育から振り落とされる子どもたちがたくさんいる。

この状況は、「学校」だけに負わせるべき責任ではない。私達の社会は学校に何を求めてきたのか?学校の先生をどのように扱ってきたのか?大人社会はどれだけ包摂的なのか?

公教育と社会の包摂性を上げていきたい。そのための議論がしたい。そういう思いから、「インクルーシブ教育」についてのイベントをします。

私には不登校とインクルーシブ教育というテーマがとても近い話題に思えます。

イベント:インクルーシブ教育ってなんだろう?

インクルーシブ教育とは、一般的には障害のある人とない人が共に学ぶ教育のことをいう。私はインクルーシブ教育は今より進んだ方が良いのではないかと漠然と感じている。共に学ぶ経験の欠落が、私達の社会における共に生きる感覚の欠落につながっているような気がするからだ。

さらに、「普通」学校や「普通」学級が、誰かを分離することによって、今の形や文化を維持し続けているようにも見える。もっと多様な子どもたちを受け止める「普通」学校が、あり得るのではないか?

1994年にユネスコとスペイン政府によって出され、インクルーシブ教育の潮流を作り出した「サラマンカ宣言」には以下のように書かれている。

”すべての子どもは、ユニークな特性、関心、能力および学習のニーズをもっており、教育システムはきわめて多様なこうした特性やニーズを考慮にいれて計画・立案され、教育計画が実施されなければならず”
-サラマンカ宣言、国立特別支援教育総合研究所 訳-

ここに書かれているインクルーシブ教育の対象は、全ての子どもである。なぜなら全ての子どもは多様であり、多様性を受け止める教育を目指していくことが、インクルーシブ教育への道のりだからである。

一方、私は支援者として、支援級や支援学校を勧めることがある。普通級や普通学校では辛い経験をし続けるような状況や保障できない学びが時にあるからだ。

私はまずはミクロな観点で目の前の子どもにとって最善の利益を考えたい。しかしその背景にあるマクロな構造を意識しないわけにはいかない。なぜこれほど多くの子どもが普通学校や普通級から離れざるを得ないのだろう?

もちろん100%完全なインクルーシブ教育は存在しないと思う。しかし今よりもっと多様性を受け止める教育は、必ず存在する。だから参加者の皆さんと基本的なことから考えてみたい。そもそもインクルーシブ教育ってなんだろう?必要だとしたら、それはなぜだろう?良くない形のインクルーシブ教育もあるのだろうか?

話し手は、先天性脊髄性筋萎縮症で車いす当事者である吉田知栄美さんと特別支援学校の先生である小林大純さん。それぞれが見てきたもの、感じていることを話してもらいます。

●吉田知栄美さん(話し手)
先天性脊髄性筋萎縮症により、呼吸器をつけ、24時間介助者が入りながら越前市で一人暮らしをしています。「車椅子だから」という理由で、地元の学校には行けず、小中高と市外の特別支援学校に通いました。20代から障害者運動にかかわり、障害の有無に関係なく誰もが平等に持っている地域で生きる権利とそのための社会のあり方を様々な活動の中で働きかけてきました。現在、越前市にて市の福祉計画の策定委員を務めたり、小学校や大学、関係機関などで講演をしたり、私自身の地域での生活を通して当事者の1人としての声を発信しています。

●小林大純さん(話し手)
教員をしています。勤めの17年間を特別支援学校の教員として過ごしてきました。また中学校で、普通学級や特別支援学級担任もしてきました。特別支援学校では教育相談を担当し、地域の学校で困り感を持っている子どもとその保護者と関わった経験もあります。重度の自閉症や肢体不自由のお子さんから、障がいかどうか区別のつかない発達障がいのお子さんまで、様々な子どもや保護者を見てきた経験からお話しできればと思います。

●小野寺玲(ファシリテーター)
フリースクール福井スコーレ代表。高校生たちと若者の現状と未来を考える「若者についての議論を、若者がしよう」企画。たまに新聞でコラムを執筆。福井県ひきこもり支援専門チーム。関心は教育史。

●イベント詳細
日時:9月23日(金)14:00~15:30 *祝日
場所:オンライン(Zoom)
対象:子どもの育ちに関心がある人、支援者、保護者、若者など、どなたでも
参加費:無料
主催:親と子のリレーションシップほくりく2022inえちぜん実行委員会
*この事業は、NHK歳末たすけあいの助成を受けています。

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