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エイム電子製LANケーブル比較試聴機【前半】

エイム電子について

 エイム電子は、通信機器や産業機器に対応した幅広い製品ラインアップを有する信頼性の高いケーブルメーカーとして、産業分野で高く評価されている。
耐屈曲性や高温環境においても高い信頼性を要求される産業用ケーブルに強みを持ち、製造工場のロボットアームなどにも利用されている。また、データセンターや医療機器の接続にも使用されいてることから、通信性能と安定性にも定評がある。
 高解像度映像の伝送技術にも注力しており、8K非圧縮映像伝送用ケーブルや光変換HDMIケーブルなど様々な新製品も積極的に開発しリリースしている。

 同社がネットワークオーディオ黎明期よりオーディオ用LANケーブルを製造していたことは多くの方がご存知のことと思う。この度、2年ほど前にモデルチェンジされたオーディオ用LANケーブル3モデルを比較試聴する機会を得たので、レポートする。

試聴環境

 オーディオ専門店 on and on(東京都中央区)の試聴システムのネットワークプレーヤーとスイッチングハブの間に用いて試聴した。音源はCDからリッピングしたデータを店舗内のNASに入れたものを再生している。

ネットワークプレーヤー ATOLL ST300sig
プリメインアンプ ATOLL IN200sig
スピーカー AUDIOVECTOR QR3se

on and on 店内試聴システム(営業中に撮影したため本試聴記とは一部異なる)

試聴システムの選定理由

 一般論としてではあるが、ハイエンドなシステムの方がケーブルの違いによる音質の変化は細かく受け取れる。しかしながら、ある程度手に取りやすい価格帯かつ一般的な生活環境に導入しやすいサイズ感のシステムにおいて、LANケーブルの入れ替えがどれほど音質に影響を及ぼすのかという点に強く関心を持ったため、本システムを選定した。試聴場所を提供してくださったon and on様には深く感謝している。

試聴音楽ソース

CHAGE and ASKA
On Your Mark(CDリッピングデータ)
20年以上聴き込んでいる楽曲であり、ライブでも聴いている。多くの楽器の音が入っている点、曲の強弱様々に展開する点、複雑なコーラスが随所に入っており、それらの描き分けがシステム毎に違いが出る点を考えて選定。私自身がバンド活動で何度も演奏しており、各楽器のフレーズの聞き取りに悪戦苦闘した経験から、定位感や解像度、実像感について注意深く聴いた回数が多いことも理由である。

SHUUBIwith 古川昌義
PLEASE(CDリッピングデータ)
アコースティックギター、ウッドベース、ピアノというシンプルな編成で展開される楽曲であり、それぞれの楽器の音色のリアリティが聴きどころである点と、歌っているSHUUBIさんの繊細な歌唱表現のニュアンスが、ケーブルの違いによる変化を感じ取りやすいことを理由に選定した。

試聴その1 NA2と一般的なLANケーブル

一般的なOA機器用のLANケーブル


NA2

 以前のモデルとの最も顕著な違いは、これは全モデルに対して言えることだが、ケーブルがとても柔軟になった点だ。以前のモデルは10年以上自宅で愛用しているが、ケーブルの取り回しに気を遣う。特に、スイッチングハブなど本体が軽量な機器に接続した場合、本体が動いてしまうことがあった。高性能な電源ケーブルなどでも起きることなのでそれほど気にしてはいなかったが、LANケーブルは長距離を引き回すこともあるため、しなやかになって取り回しがしやすくなったことは大変好印象を受ける。
 プラグは一般的な樹脂端子が使われている。素材は硬質ポリカーボネイトであり組み付けもしっかりしたものであるため信頼感がある。さすがは産業用ケーブルの専門企業の製品だと感じる。2mで14,000円と比較的リーズナブルな価格も魅力である。
 ノイズコントロールを重視して設計されたとのことなので、その辺りにも注意して試聴した。

 一般的なLANケーブルからNA2に繋ぎかえて、まず一聴して分かるほどのサウンドレンジの広さを感じる。各音のセパレーションも顕著に向上した。
 On Your Markのイントロが始まった瞬間からストリングスの描き分けの明瞭度が明らかに向上している。比較すると、一般的なLANケーブルの場合は付帯音というか、各楽器に無用な響きが乗っていたように思う。単体で聞いた場合は気にならなかったが、NA2を聴いてから戻すと、音の輪郭の滲みが気になってしまう。
 おそらく、これがメーカーの言う「ノイズコントロール」の成果なのだろう。単純に音の濁りが取れてサウンドの純度が上がるので、デメリットを感じない。高価なオーディオケーブルであっても、良し悪しではなく「好き嫌い」の観点から、サウンドのグレードが上がったとしても「好みから離れる」というネガティブな変化につながってしまうことは多々ある。しかし、この2本の比較視聴において、NA2にネガティブな効果を一切感じなかったことは強調しておきたい。

 デジタルケーブルであり、双方向に通信するLANケーブルなのだから、どれだけ高性能なものにしても、機器間で授受されるデータは変わらない。距離的にも減衰は考え難い。では、なぜ音がこれほど変わるのだろうか。と考えると、どれほどデジタルケーブルにおけるノイズ対策が重要なのかを強く感じる。
 外来ノイズはオーディオ機器に伝わり、音を濁らせる。また、多くの情報を頻繁にやりとりするLANケーブルは、それ自体がノイズの発生源になっているため、それを周囲の機器やケーブルに影響させないことも重要になる。この辺りは、過酷な環境で長い距離を引き回される産業用ケーブルを製造しているエイム電子社が大いにアドバンテージを発揮しているのだろう。

 PLEASEについても、同様の効果を得た。特に、アコースティックギターのボディの鳴りのリアリティは大きな改善を見せてくれた。弦を爪弾くニュアンスもグッと明瞭になる。SHUUBIさんの実に柔らかく囁くようなヴォーカルの質感が増した点が最も魅力的に感じた。やはり、ヴォーカルの繊細な表現が手に取るように伝わってくると、「オーディオっていいなあ」としみじみ思う。

では、次回はNA6とNA9の試聴結果をお伝えしていこうと思う。

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