「君たちはどう生きるか」 馬鹿のうちに見ろ

一週間ほど前、キャストどころかあらすじも何も一切知らせないまま、ポスターしか事前情報がない状態で「君たちはどう生きるか」が公開された。

見てない人は何も知らないまま、映画館に足を運んでほしい。
記憶は不可逆で、一度知ったことは知らない前には決して戻らない。

ぶっちゃけ、「君たちはどう生きるか」はストーリーのネタバレを知ったところで影響はないと思うけれど、それでも誰も等しく何も知らないまま宮﨑駿作品を見るなんて、そんなビッグイベントはきっともう無いと思う。
この映画史に残るだろうイベントに参加してみるのもいいんじゃないでしょーか。

以下、ストーリーには触れませんが、私の鑑賞記を記します。
何も知りたくない人は、ここら辺で引き返してください。





エンドロールが流れ終わり、劇場が明るくなった後、整列退場のためしばらく席に着いて待った。
ぼけーっと呆けていたら、隣に座っていたギャル二人組が感想を言い合うのが聞こえてきた。
面白かった描写やキャストについて、ひとしきり感想を言い終えると片方の女性が言った。

「何にも分からんかったわ!こういう時、馬鹿って損だよね」

それ〜〜〜!!!
見知らぬ人だけれど、心から同意した。

映画には、何か意味や元ネタがあって描かれているものが沢山散りばめられていた。
鳥、塔、積み石、火、母親、弓矢…
きっとそれら一つ一つを解き明かすことで、宮﨑駿がこの映画に込めたものが見えてくるのだと思う。

私も鑑賞しながら
「あ、メタファー(?)…これも何かのメタファー(?)…」
と、引っ掛かりつつもそれが何なのか分からなかった。
頭の中の引き出しを開けても、中身は空っぽで何も出てこない。

だから、見知らぬ人が言った「馬鹿は損だ」って感想がとてもしっくりきた。
気のせいかもしれないけれど、鑑賞中に劇場内に沢山の「?」が浮かんで見えた。
きっと皆、何も分からないな〜何なんだろうな〜と思ってた気がする。

「君たちはどう生きるか」は事前情報無しに解禁されたため、日本中の人がよーいドン!で映画を味わうことができた。
皆等しく、まっさらな状態で、面白いとかつまらないとか、分かるとか分からないとか、好きとか嫌いとか、その日感じたことをそのままに抱けた。

でも公開から一週間も経てば、ある種「正解」が出始めてきた。
色々な人が馬鹿には分からない描写の考察や、宮﨑駿その人の背景も含めてのメッセージを書き記してくれている。

昨日、金曜ロードショーで「もののけ姫」をやっていて、Twitterには沢山の豆知識や考察が流れていた。
私が「もののけ姫」を初めて見たのは、既にそういった考察を知った後だった。

ジブリ作品は国民的なコンテンツであるため、サツキとメイはもう死んでいるとか、そんな都市伝説も含めて語り尽くされている。

昨年くらいに、「もののけ姫」のサンは実は後醍醐天皇とエボシの隠し子だった、という考察がTwitterでバズった。
語り尽くされている中で出てきた新説に、多くの人が飛びついた訳だ。(私もその内の一人)

ジブリ作品は、こうした「正解」が飽和している。
だから、「君たちはどう生きるか」の正解が出る前に、馬鹿が馬鹿のまま意味分からんと思えるうちに、見てほしい。


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