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人間的なるものの断捨離

夏至の日の夜。私たちはベランダにいた。彼女が作ってきてくれたスパイスのケーキとともに。

「ロウソク、ある?」と君は聞いてきた。部屋にあるロウソクといったら、人間の女性の上半身裸のキャンドルだけ。それはケーキには刺せない。「ここの宿主に聞けばあるかも」と、私は探しに行った。でも、その主がくれたのは仏壇用のロウソク。少し早い誕生日ケーキに、仏壇用のロウソク。

生と死の融合。

私たちは、なにかを食おうが食わまいが、歩こうが歩かまいが、どんな選択を選ぼうが、この世に生まれた時点で速度は異なるが少しずつ「死」へと向かっている。なぜ、こんなにも「生きること」には必死になり、讃えられ、前向きになり、みな語ろうとするが、「死ぬこと」については誰も語ろうとしないのか。なぜそんなにも両者はかけ離れていることのように人々は理解したがるのだろうか。

私は、その夏至の夜に「生と死」を感じながらスパイスのケーキを味わっていた。隣にいる彼女に、「君は今、どこにいるの?」と聞くと、「あの星」と人差し指で示した。私は、やっと見つけた!という風に安堵し、嬉しかった。「いつか、そこで君に会えるかな」という質問に、「50年後、、、いや、30年後に!」と君は言った。


そして今、私は誕生日と年齢を忘れようと努力をしている。ただ、今、ここにある生命体として存在しているだけ。毎日、毎分、分解し生成し動的平衡を保ちながら。他者を喰い、喰われ、他者と出会い、汚染し合いながら。


人間的なるものの断捨離。その先には何が待ち受けているのだろうか。




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