午前3時
私は森の中で眠っていた。
それは突然の出来事だった。
「タタタタッタ」
何かが猛スピードで走りだした。
次の瞬間、それは「ドンッ」という低く鈍い音と共に何かにぶつかった。
そして、その音と共にぶつかられた者が「キーッ」と甲高い声で鳴いた。
「次は私か」
そう思った。
それに喰われると。 (いや、喰うか。)
やはり、その時恐怖が私を埋め尽くしていた。
なす術もなく、ただただ横たわったまま動けなかった。
どうか、どうか此方の存在には気付かないでおくれと祈るしかできなかった。
数分後、またそれが「キー」と鳴いた。
先程と違うのは、数分前よりも遠い場所で最後の力を振り絞ったような声だったということだ。
今、私が筆を進めているカフェの目の前ではコンクリートジャングルの上を四つの車輪がついた四角い箱が右から左からと際限無く動いている。
四角い構造物の間を片手に収まるほどの四角い何かを穴が空くほど見ながら人は歩いている。
かくいう私も四角い箱に向かって小さな四角の文字盤を一生懸命に叩いている。
こんな環境の中でいつ「喰われる」と感じることができるのだろう。
気まぐれに山の中へ森の中へと足を踏み入れた時、外臓の世界でそれは確かに起こっている。
私はあの時、その音しか聞かなかった。
だがしかし、それを想像することは容易だった。
そして、次は私かもしれないと恐怖さえ感じた。
こうやって街の中で生活をしている今もなお、森の、いやすぐそこでそれは繰り広げられている。
外臓の世界の内臓で。
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