パワーのある人

「ちょーど、私も連絡しようと思ってたところだったんだよね!あと何分ぐらいで来れる!?」

昼休憩もまともに取れずに、長くて短い1週間を終えた金曜日の夕方。

どうしても一杯呑みたくて、いつものように連絡したら、いつものように二つ返事でOKをくれた。

友達ファイルno.1   トモ
10歳と7歳のママ。保険レディとして気ままにながらも成績を残している、天性の営業マン。

友達の友達で、たまたま家が近かったから、お互いの家の中間地点のどうでもいい居酒屋で、なんとなく2人で飲むようになったのがきっかけ。

「ユキの結婚は3年後だって!今は理想が高くなってるけど、結婚相手は、、、例えばダンサーとか、芸術肌の人と結ばれるかもだって!」

彼女ととても相性のいい占い師に、私のことをみてもらったって。

ダンサーかぁ、、、。と、私ががっかりする暇もなく、

「最初の職場はぶっちゃけ手取り何万くらい?!」

とても自然にぶっ込んだ質問もしてくる。

「オリンピックの頃には、離婚して家を出てると思うから、、、」

自分のナイーブな話も包み隠さない。

「本当にメイク上手だよね!ユキは本当に上品!センスもいいし、誰に合わせても恥ずかしくないよ!」

いつも嫌味なくベタ褒めしてくれる。

1時間で20個くらいの話題を猛スピードで展開させる人。

「店員さーん、チェックで!!」

すごくいきなり、なんの相談もなしに切り上げる。だけど、私もそろそろ眠いなって思った頃に、すかさずなんだ。いつも。

展開の速さに正直ついていけない時もあるのに。

なんでだろう。

物凄い頭の回転の速さの中で、相手を観察してる。私が帰りたいな、と思うタイミングを逃さない。

心地良い、、とは違う。一緒にいると時間が穏やかにゆっくり流れる人でもない。

私の話をゆっくりじっくり聴いてくれる訳でもない。

でも、なんでだろう。

疲れてる時に、適当に一杯飲みたけなる。メイクもドロドロで、防寒対策だけのための、ちぐはぐな格好で。知り合いに会わないような、チープな居酒屋で。

パッと頭に浮かんだことを、思うままに吐き出す時間。どうでもいい話を、思いついた分だけ、思う存分に。

会話をする、というより、気持ちそのまま。起承転結もなにもない。頭で整理しないまま、声にする。

疲れて頭が回転しない週末に、会いたくなる。

「私、小さい頃は転勤族で。いつのまにか、その場所に馴染めるように、気づかないうちに、人の空気を読んだり、ただ明るく過ごすようにしてた。いじめられたこともあったから、人の表情とかに敏感になって、空元気になったりするんだよね。」

そんなこともいってたな。

ジェットコースターのようにパワフルな彼女は、人一倍繊細なのかも。

意図がないようで、私の求めていることに答えてくれている。

そうなのかもよ。

パワーのある人って、こちらが思ってるよりずっと。思いやりと愛に溢れているのかも。

私、トモの勢いに押されるフリして、包まれてるんだよね。