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「ストローのように軽いおどろき」

あなたは 目をまんまるにして 私をみつめる
あなたの帽子から サラリとのぞく髪も、シャツのすそも、手にもったススキも、風にハタハタと揺れる

ゆうだちひとみ
あなたの あけぼの手足
みんなみんな 知っている
あなたは かすかに かがやくように やせている

花吹雪のまん中のような出会い。私は 口を真一文字にする

あなたのさしだす手は すずしい
あなたに導かれる空の道は

途中であなたは 立ち止まり
私の手をはなして かたわらの石へ 腰かけさせて
もう一度 私の手をとる

あなたは遠くの青いところをながめ 私に何か
明日になったら忘れてしまうような
小さな けれど美しい 言葉を投げる
しばらく私たちは ふたりで 同じものを みつめる

それから 私たちは また 飛んでいく
あなたの手は すずしい

みんな みんな 知っていた

よろこびも つらさも はるか かなた それから 目の前
ユーラシアの白い道
ろばの影は いつも おひさまが きらい
パッと 急に あなたは広がる 
ぐんぐん広がっていく

あなたの右目の 下あたりに オリオン座
あなたの 指の間に 赤いポスト
あなたの髪に 流れ星
あなたのくるぶしに ナイル川
あなたの 心ぞうに わたしの目

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銀色夏生 詩集「無辺世界」より

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