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第168回芥川賞予想

本家が12/16(金)に発表なんで1ヶ月前にお気持ち長文をここに表明する。

TL;DR

W受賞を予想
石田夏穂 黄金比の縁
島口大樹 光の痕

んで、候補は6作
石田夏穂 黄金比の縁(すばる8月号)
小池水音 息(新潮10月号)
佐藤厚志 荒地の家族(新潮12月号)
島口大樹 光の痕(文學界12月号)
仙田学 赤色少女(文學界8月号)
日比野コレコ ビューティフルからビューティフルへ(文藝冬号)

あららら、男4:女2になっちゃった。前期あれだけ女性をゴリ推ししていたからこれじゃだめかも。今後は男3:女3にし続けるしか一貫性が取れなくなっちゃったね。

スピンも含めほとんど読んだ(ことばと、三田、Monkey、太宰を除く)ので予想。私自身は今の所どことも誰ともステークホルダーじゃない。全部自腹で書店かAmazonに金を払って、間接的に著者と編集者の口座に金を届ける関係性。Youtuberでもないので、読んでもない野間文芸新人賞の動画を上げたり、毎月わざとらしくどの文芸誌を買うか悩んだりしない。(必要があって全部買うから)
図書館で借りてみますというコメントを見るたびに、断絶というラベルの付いた南極のクレバスを上から覗きこんだような気分になり、胸はすき心があらわれます。

なんでこの選考にしたか

読めば分かる。……じゃあんまりなので、一応補足しておくと石原慎太郎、村上龍、宮本輝みたいなやべーやつが(えいみーを除いて)いなくなったので、イス取りゲームを兼ねたグリコが順番に進む。なお、乗代先生はアカンかった模様。このゆったりとした潮流はみえこが入閣するまで暫く続く。(金原、村田、中村、又吉も来いよ”高み”へ)

トリッパーについて

今期最強は小説トリッパーに掲載されていた朝比奈秋の「植物少女」一択。でも候補には上がらない。文藝春秋(自社)の赤色少女が勝てなくなるから。前前前回あたりのミシンと金魚と同じ運命を辿る。
カサンドラのティータイムもめっちゃ面白いけどじゃあなんでコークス上がらなかったんってなるし、そもそも朝日だし上がらない。もう五大文芸誌以外に席はないんや。雑誌の売上的に。
今村夏子というジャンル、あるいは化身そのものを生み出した功績を、果たして休館するまでに超えられるかしら。全編を通じて適当なことを言っていますが、これは君のクイズが上がらない理由が地図と拳で直木賞候補になるからといってるのと同レベルの浅い考察です。

2022年の日本における純文学シーンについて

まあ若い人は読んでないですね。そういう意味で推し、燃ゆは本に興味がない人にもリーチしたっていうのがすごい。お金&時間が載った天秤の反対側には、本を読むという行為が釣り合わないしそもそも載らない。
そんな眩しすぎる真実からは目が潰れる前に背けるとして、次の綿矢・金原を探し続けていたらあっという間に20年経っちゃった状態。その役割は遠野・宇佐見が担えばいいんじゃない?って思うけど、坂の上ビックマム海賊団を出れていないので現時点では違う。今んとこはみんなでコレコ氏の異能な才能に全ベットしていくのが確度が高い。乗代先生は直木賞ルートで見返してほしい。

来期について

すでに鴻池留衣、木村紅美の参戦が決まっている。千葉雅也の新作も文芸誌に載る?新潮?文學界?これらに加えて九段理江の競走馬小説が来たら既に4席埋まっている。ようは地獄。さっさと上がっておきたい。個人的には年森瑛と平沢逸の新作を期待しています。中西智佐乃さんもオナシャス。もちろんひろか様も。胡桃先生も。

群像について

彼岸花(群像出身の李琴峰)、貝に続く場所、ブラボ、ごはんと、群像くんはちょっと調子に乗っているので3回休み。遠野遙、宇佐見りんが連覇した後の文藝と同じ扱い。講談社は認めない(CV:森元総理)がここでも発動。

今期は蝶を追うと、天気予報士エミリが良かったけど蝶を追うは後半面白いのに序盤がかったるくて勿体ない。エミリはマッチングアプリの勘所が選考委員に伝わらないだろうよ。(これはオーシャンビューの街のやつにも言える)
かみゆ先生には鯖番小説を書いてほしい。エンタメ側になってもいい。
開墾地はアメリカ版の背高泡立草で、この世の喜びよは二人称が自分には嵌まらなかった。
カプチーノ・コーストは良かったけど長くて、その長さに対して面白さが増してないので上げませんでした。雲をなぞるは夢と灰。

文學界について

黒ひげ(丹羽さん)案件のN/Aで逃して後がない状態。ここに来て最悪の世代の島口大樹(トラファルガー・ロー)を投入してパンクハザード編に突入。
光の痕は色が分からないことがあんま活きてない、ヒロインがテンプレかつ都合良すぎる、など全体的に寄せてきてる気がするけど、取れるところでさっさと取って遠野遙みたく自由に書かせてあげてほしい。
グッバイ、メルティは既成のキャラクターを消すというアイデアがすごく良かっただけに、後半のメタフィクションが余計に感じた。ヴェジトピア対植物少女で試合決定ならず。
陽炎のほとりはイジメの描写がキツかった。マンションでお母さんと話すシーンはぞくぞくした。
消化器は主人公がただヤバいだけだった。
グレイスレスはヨブン文学賞のわたしが飛んだ話大賞で、今作で候補になっても回数だけ増えていいことない気がする。
赤色少女はモラハラと新しい形の家族を融合した究極完全体グレートモス。もうモラハラ作品は大方やられて紋切りになってきたし、新しい形の家族は現実世界に起きたりゅうちぇるとてこを超えられないので赤色少女で終わりにしてほしい。

文藝について

ジャクソンひとりは面白いけど、候補になったとして世界側がおっついてないから、けして中身を読むことのないキャプテンと同じ視点の人間に上辺だけで判断/消費されるという、作品内で抱えている問題が現実世界にまで波及してしまう。
ビューティフルからビューティフルへは今回取れないけどそれでいい。将来選考委員に入閣した金原ひとみがぢきぢきに戴冠するための布石。
成るや成らざるや奇天の蜂は良くも悪くも世界観がアルレッキーノで、ロロクリをやらずに草しかやらない飛鳥の皮肉をアルタッドに捧ぐ。
うみみたいはなぜかミュウツーに炎技を積んでないせいで、ハッサムに3タテ決められているのでパーティ構築が間違っている。ところで2人ともどうやってミュウツーを集めたりハッサムに進化させたんだろう。

新潮について

世界地図、傾くで未来の日本を描く試みはすごい良かったけど、ラストがあまりにも都合よくて選考委員のお気持ちお察し。
息が今期唯一といってもいいくらいの王道純文学でビビる。
荒地の家族は面白かったけど、こっちはいつ蛇沼に突き落とされるのかヒヤヒヤしていたから、不穏なエピソードがあっさり解決して物足りなかった。

作品と関係ないが、雑誌本体がヤバい。新人賞に2,600作も応募があるのはいいことだけど、雑誌の発行部数に比べて多すぎる。これはもう膝下海燕。応募券制にするべき。応募するけど買わない、発表されても買わないっていうのは、小説が持つ力、ひいては作家という生き方を自分自身が信じてないってことじゃないかな。応募数の割に水準が低いというのがそれを証明しているわけで。すばるも。ワクトメイスターさん、早く日本人に本当の純文学というものを見せつけてやってください。

すばるについて

うちの庭はチェンソーマンを見ていても同じことを思ったんですが、超常現象が起こっている割にみんな普通に生活しているのが違和感。ディレイ・エフェクトをご存知でない?
がらんどうは子供を産む産まないのはなしで犬のかたちをしているものを3Dプリンタで出力しているのが気に入らない。自分はそこにリスペクトを感じませんでした。
でも熱海に行ったシーンで最近の土産にイチゴ串をチョイスしたのはびっくりした。よくプリンにしなかった。偉い。けれど鶴見と柏に住んでる人が池袋で会うわけない。どう考えても互いに直通で行ける上野か品川でしょ。わざわざ日暮里で乗り換えない。

こちらも作品と関係ないが、見ても聞いても読解力が低いせいでよくわからなかった理由(締め切り時に条件を満たしていたのに、途中で資格を喪失する……ってコト?お前それ佐佐木陸の前でも言えるの?苛ぎだね一一一)で夜の帳を読ませてくれないのなら、数合わせじゃない方の山水図を読みたかったです。
そして、選考後の石田夏穂さんに女性ならではの視点について質問してくれるであろう、ニューヨークからやって来たテレビ朝日記者の登場を、一同心待ちにしております。

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