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豊穣の海

いつか必ず見てみたいと想い続けていた海がある。
その海の名前はオホーツク。
子供の頃、冬になると必ずテレビにこの海が真っ白な流氷と共に現れた。
それを見てから、大人になるまでも、なってからも「いつか見たい」という気持ちを持ち続けた。
そんなオホーツクを初めて見てからちょうど1年、去年の秋のオホーツクは静かに青だった。
その青は太平洋や日本海とは違う青で、それが目に飛び込んで来た瞬間、「なんて誠実な青なんだろう」と思った。
その誠実さは幾つものいのちを育む「豊穣の海」ならではの青なのだろうと思っている。
それから年が明けて2月には流氷のオホーツクに逢うことも叶った。白い水平線はただただ美しく人間にはなし得ない自然の大いなる力に強烈に感動したのをよく覚えている。
その時お世話になった宿のご主人から、流氷の時季になると来るお客さんで何故かその人が来ると流氷が遥か沖へ離れてしまい見られずに、しかし本人は諦めきれなくて7年も通い続けているという話を聞いた時、その人の気持ちが解るような気がした。
うんざりするような暑さの夏も終わり秋、冬と巡るがまた流氷は見られるだろうか。
最近は勢いのある流氷が来なくなっていると聞いている。
接岸し、軋んで「鳴く」流氷に逢えたらと思う。
あの美しい青と流氷の白が魅せるオホーツクの冬に今から想いを馳せつつ手帳とカレンダーを見ながら厳冬の時季に北海道へ飛ぶ予定を立てている秋の夜だ。


育みの海
豊かなりオホーツク
その大海は
青を貫く

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