私たちの全て(掌編/短編)
時計の針は止まらない、その事が、正しく生きる君らしくて、私は好き。時間なんて、幾らでも確認出来るのに。スマートフォン、炊飯器、机の上の腕時計。電源を点ければ、給湯器のリモコンでさえも、こんな秋の夜を教えてくれる。君はそれでも一目で分かりやすい壁掛けの時計を飾ったし、その動きが鈍くなると、電池も面倒がらないですぐに代えたよね。先週の中頃、だっけ。つい最近だ。
フロアーに三つある内の、私たちの恵まれた部屋。向かいは無人、こっち側には隣室がなくて、階下の空間も住居じゃない。他よ